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第四世代
閑話休題 ドーベルマンDK-a拾弐号機 その2
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巣立ったばかりと思しき若いマンティアンは、身の程知らずにも、ドーベルマンDK-a拾弐号機に挑みかかってきた。
しかしそれはあまりにも無謀過ぎた。何しろロボットである拾弐号機には、これまで蓄えてきたデータが劣化することなく残されているのだから。
拾弐号機自身も何度もマンティアンと相対し、さらには他のロボットのデータも同期して、自身の経験そのものとして使えるのである。経験を他の個体と共有し同期することができない生き物では決して真似のできない強みだった。
だから、若く未熟なマンティアンに対処するなど、それこそ赤ん坊をあしらうようなものでしかない。
カマキリを思わせる<鎌>を両手に備えたマンティアンが、その鎌を突き出して迫る。無数の棘が生えたそれで相手を捕らえ押さえ付け、ヘルメットをかぶっているかのような頭を鈍器のごとく叩き付け相手の頭蓋を砕いたり、そのまま首筋に食らい付いて、動脈を食いちぎったり脛骨を噛み砕いてとどめを刺すのが、マンティアンの標準的な戦い方だった。
だがそれはあくまで同じ<生き物>を相手にすることを前提にしたものである。ロボットである拾弐号機にその攻撃の仕方は意味をなさない。
それどころか逆に、自ら相手の間合いに飛び込んでいくようなものだ。この若いマンティアンが取るべき選択は唯一、『ただ逃げる』ことであった。それ以外はすべて<外れ>なのだ。
事実、マンティアンとしてはそれこそお手本のようなその攻撃は、完全にデータ通りであり、確実に対処されてしまっていた。
それでなくても、反応速度も運動性能も完全に上回っており、まったくの初見の攻撃であっても、十分に対応できてしまう。
実際に、拾弐号機が動き出したのは、明らかに後だった。にも拘わらず、華奢なマニピュレータを正確に無駄のない動きで繰り出してマンティアンの鎌を逸らしつつ前腕を掴んで引き寄せ、自らも体を反転させ、同時に四本ある脚の一本を突き出して、前のめりになったのを踏ん張ろうとしたマンティアンの足を軽く蹴る。
すると、足を前に出せなかったマンティアンが大きくつんのめる。
しかしマンティアンの方も、掴まれていなかった側の手を地面についてかろうじて転倒は回避し、しかも片手一本で全体重を支えて姿勢を整え、地面すれすれでくるりと体を回転させ、着地してみせる。
それだけでも途轍もない身体能力を有していることが分かるというものだろう。
伊達にこの密林における最強生物の一角を担っているわけではないということだ。
しかしそれはあまりにも無謀過ぎた。何しろロボットである拾弐号機には、これまで蓄えてきたデータが劣化することなく残されているのだから。
拾弐号機自身も何度もマンティアンと相対し、さらには他のロボットのデータも同期して、自身の経験そのものとして使えるのである。経験を他の個体と共有し同期することができない生き物では決して真似のできない強みだった。
だから、若く未熟なマンティアンに対処するなど、それこそ赤ん坊をあしらうようなものでしかない。
カマキリを思わせる<鎌>を両手に備えたマンティアンが、その鎌を突き出して迫る。無数の棘が生えたそれで相手を捕らえ押さえ付け、ヘルメットをかぶっているかのような頭を鈍器のごとく叩き付け相手の頭蓋を砕いたり、そのまま首筋に食らい付いて、動脈を食いちぎったり脛骨を噛み砕いてとどめを刺すのが、マンティアンの標準的な戦い方だった。
だがそれはあくまで同じ<生き物>を相手にすることを前提にしたものである。ロボットである拾弐号機にその攻撃の仕方は意味をなさない。
それどころか逆に、自ら相手の間合いに飛び込んでいくようなものだ。この若いマンティアンが取るべき選択は唯一、『ただ逃げる』ことであった。それ以外はすべて<外れ>なのだ。
事実、マンティアンとしてはそれこそお手本のようなその攻撃は、完全にデータ通りであり、確実に対処されてしまっていた。
それでなくても、反応速度も運動性能も完全に上回っており、まったくの初見の攻撃であっても、十分に対応できてしまう。
実際に、拾弐号機が動き出したのは、明らかに後だった。にも拘わらず、華奢なマニピュレータを正確に無駄のない動きで繰り出してマンティアンの鎌を逸らしつつ前腕を掴んで引き寄せ、自らも体を反転させ、同時に四本ある脚の一本を突き出して、前のめりになったのを踏ん張ろうとしたマンティアンの足を軽く蹴る。
すると、足を前に出せなかったマンティアンが大きくつんのめる。
しかしマンティアンの方も、掴まれていなかった側の手を地面についてかろうじて転倒は回避し、しかも片手一本で全体重を支えて姿勢を整え、地面すれすれでくるりと体を回転させ、着地してみせる。
それだけでも途轍もない身体能力を有していることが分かるというものだろう。
伊達にこの密林における最強生物の一角を担っているわけではないということだ。
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