上 下
1,526 / 2,387
第三世代

灯編 離乳食

しおりを挟む
新暦〇〇三五年七月三日



こうしてさらに数日が経ち、ケインは自分の周囲の状況を理解できてきたようだ。

「おーっ!」

ついにあかりからも肉を手にした。それも、<火を通した肉>をだ。軽く塩コショウをしただけの焼いた肉だが、ケインは美味そうに食ってくれた。

自分の手から受け取ってくれたことに、あかりが満面の笑顔になる。

さらに、ケインはトマトを食べてくれた。こうして野菜も食べてくれるなら、それこそ<料理>も食べられるようになるだろう。

もちろん、最初はあんまり味付けの濃いものは具合悪いだろうから、黎明れいあ用の離乳食に近いものって感じだろうな。

そう。未来みらいよりは成長が遅いように思えた黎明れいあも、地球人の赤ん坊に比べればやはり成長が早いのも確認できたから、離乳食を始めてるんだ。

それでいてケインの場合は、最初から生肉が食えるくらいだったし、黎明れいあとはまた違う。この辺りの手間についてはモニカやテレジアがフォローしてくれるし心配していない。

さらにあかりも、積極的に手伝ってくれる。ケイン用の食事を、モニカに手伝ってもらいながらも作ってくれたりもする。

この間、未来みらいの相手をしてくれているのはルコアだ。未来みらいはルコアのことが好きだからな。ルコアの周りをピョンピョン飛び跳ねたり、彼女の体を上ったり、絵本を読んでもらったりもしている。

とは言え、未来みらいは、他の子達に比べると絵本を何冊も読んでもらおうとはしないな。幼い頃のひかりなんかは、次から次に絵本を読むことを俺にねだったりしたんだが。

こういうところも、それぞれ違う。<別の人間>だってことをわきまえないといけないと実感するよ。

『上の子がこうだったから下の子も』

というのは、親の<甘え>だ。甘えるのは構わないが、自分が甘えたいなら子供が甘えようとするのも許さなきゃおかしい。『自分だけが甘えることを許される』と考えるのは筋違いなんだ。

それもあかりは理解してくれてる。

ビアンカが黎明れいあ未来みらいとケインの世話を同時にできないというのをちゃんと分かってくれているからこうやって力になろうとしてくれる。そうすると今度は、あかりにもし子供ができた時には周りが力になってくれるんだ。

『親は勝手に子供をこの世に送り出したんだから養育の義務がある』

のは事実でも、だからといって親だけで何もかもしろというのもあんまりにも世知辛い。だから力になろうとも思う。そう思って実際に手を貸すから、自分の番が来た時にも手を貸してもらえる。

そんな風に人間は『持ちつ持たれつ』でやってきたんだよ。

なんでもかんでも自分の力だけで解決してきたわけじゃない。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

精霊のお仕事

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:123

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,197pt お気に入り:4,654

悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,113pt お気に入り:6,020

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,115pt お気に入り:281

追放の破戒僧は女難から逃げられない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:618pt お気に入り:167

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,331pt お気に入り:9,008

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:2,452

処理中です...