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第三世代

灯編 生きるための基本

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『厳しい環境こそが、厳しく接することこそが、人間を強くする』

そんなことを信じてるのがいまだに地球人の社会にいたが、いやいや、地球人が多少強くなったところで所詮は<誤差の範囲内>でしかないぞ? しかも環境で強くなれる分だけじゃ、それこそ素手で犬に勝てるようにもならないだろう。徹底的に体を鍛えて戦闘技術を磨いても、結局、拳銃の弾丸一発で死ぬ。

地球人ってのは、それだけひ弱で貧弱なんだよ。ここにいるとそれを心底思い知らされる。発達させた頭脳で危険をあらかじめ察知し回避することでしか地球人は生きられない、生き延びられない脆弱な生き物なんだ。

はっきり言って俺はもう、まどかひなたにすら素手じゃ勝てない。あかりまどかひなたよりは圧倒的に強いはずだが、それでも、武器を使い策を弄さなければ、レオンの群れやオオカミ竜オオカミの群れには敵わない。

だから俺は、ロボットを作ることでそれを補うことにした。

危険を察して回避し、安全を確保することは、そもそも<生きるための基本>なんだよ。

『痛い思いをしてこそ次から気を付けるようになる』

というのは、

『危険を予測して自分の身を守るのが生き延びるための戦略の基本である』

ってのを補足してるだけでしかないけどな。

また、

<厳しい環境を生き延びた個体>

が必ずしも優秀だったり賢かったりするわけじゃないってのは、地球人を見てるだけでも分かるじゃないか。

内戦が続いた地域で生き延びた者達が必ず優秀で賢かったのなら、どうして内戦が続く? 

<そういう状況を打破できる優秀で賢い個体>

がどんどん出てこないとおかしいだろう?

なのに現実はそうじゃない。『厳しい環境こそが、厳しく接することこそが、人間を強くする』なんてのは、

<加害者側の自己弁護のための詭弁>

でしかないことはすでに判明してるんだ。

だから俺はそんなものを信じない。回避できる危険は極力回避する。そしてあかりも、それを理解してくれてる。

好き勝手をして危険を招くようなことは避けようと心掛けてくれる。ケインとの距離を慎重に図ってくれてるのも結局はそれだ。

ヒト蜘蛛アラクネとほぼ同等の能力を持ち、おそらく今の段階でも、鍛えられているわけでも戦闘訓練を積んでるわけでもない素手の地球人ぐらいなら殺すことだってできるだけの力を秘めているであろうケインを追い詰めて、

『窮鼠猫を噛む』

状態にしないというのを心掛けてくれてるんだよ、わざわざ自分から危険な状態を作るというのはただの<愚行>であって<賢い者>がすることじゃない。

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