1,525 / 2,554
第三世代
灯編 ケインと素戔嗚
しおりを挟む
とは言え、ケインもただ臆病なだけでもない。周囲の状況をしっかりと確認して、自分にとって危険かどうかを探ってはいるんだ。何しろ自らの命に係わることだからな。当然と言えば当然か。
地球人の赤ん坊と違ってもうすでに自分の身は自分で守れるだけの能力もあるんだ。
重要なのはそのケインに、<敵>だと思われないこと。
でも、その点については灯だけじゃなく久利生もルコアも、心得てくれてるからな。あとはその効果が表れてくれるのを待つだけだ。
となればやっぱり問題は、未来と、さらに素戔嗚だな。
だが、いつものように日が傾き始めた頃に、黎明は授乳の後に寝てしまったので久利生に預けられたものの、ケインは離れようとしなかったことで背負ったままでビアンカが素戔嗚に会いに行くと、
「……?」
ビアンカの後ろに見え隠れする小さな影に気付きながらも、素戔嗚は特に気にするでもなく、ドーベルマンMPMを相手にいつも通りに挑みかかるだけだった。彼にしてみるとビアンカに見守られながら自分の力を試しつつ発散できるのが重要らしく、ケインのことはどうでもいいらしい。
ただし、ケインだけで素戔嗚の前に出たりすればおそらく<獲物>として狙われたりもするだろうから、それは避けないといけないけどな。
もう家族同然ではあっても、素戔嗚は未来以上に野性が強い。しっかりと<野性の猛獣>であることをわきまえて対処しないといけない。何しろ、ビアンカ以外には気を許してないから、灯さえ迂闊には近寄れないんだ。
そういう意味ではむしろイザベラやキャサリンの方がまだ<人間>だと思う。
それでいて、未来よりも年上だからか、今では無暗に攻撃的に振る舞うわけでもない。毎日こうやってしっかり発散できてるのも功を奏してるんだとは思うものの、素戔嗚自身も成長してるんだろうな。
だから距離感さえ間違わなければ大丈夫そうだ。その『距離感さえ間違わなければ』というのが実は難しいしても、そこはドーベルマンMPMらロボットに頼るとしよう。ヒューマンエラーをフォローするのもロボットの役目だ。
ケインがうっかり素戔嗚のテリトリーに入ってしまったりということがないようにな。
そんなこんなで素戔嗚の<修行>にも付き合ったビアンカが戻ってくると、
「おかえり♡」
灯が迎えてくれる。
「ただいま」
ケインと素戔嗚とで衝突がなかったことでホッとした様子のビアンカが笑顔を浮かべる。
ビアンカのその笑顔を、灯は求めてるんだよな。
地球人の赤ん坊と違ってもうすでに自分の身は自分で守れるだけの能力もあるんだ。
重要なのはそのケインに、<敵>だと思われないこと。
でも、その点については灯だけじゃなく久利生もルコアも、心得てくれてるからな。あとはその効果が表れてくれるのを待つだけだ。
となればやっぱり問題は、未来と、さらに素戔嗚だな。
だが、いつものように日が傾き始めた頃に、黎明は授乳の後に寝てしまったので久利生に預けられたものの、ケインは離れようとしなかったことで背負ったままでビアンカが素戔嗚に会いに行くと、
「……?」
ビアンカの後ろに見え隠れする小さな影に気付きながらも、素戔嗚は特に気にするでもなく、ドーベルマンMPMを相手にいつも通りに挑みかかるだけだった。彼にしてみるとビアンカに見守られながら自分の力を試しつつ発散できるのが重要らしく、ケインのことはどうでもいいらしい。
ただし、ケインだけで素戔嗚の前に出たりすればおそらく<獲物>として狙われたりもするだろうから、それは避けないといけないけどな。
もう家族同然ではあっても、素戔嗚は未来以上に野性が強い。しっかりと<野性の猛獣>であることをわきまえて対処しないといけない。何しろ、ビアンカ以外には気を許してないから、灯さえ迂闊には近寄れないんだ。
そういう意味ではむしろイザベラやキャサリンの方がまだ<人間>だと思う。
それでいて、未来よりも年上だからか、今では無暗に攻撃的に振る舞うわけでもない。毎日こうやってしっかり発散できてるのも功を奏してるんだとは思うものの、素戔嗚自身も成長してるんだろうな。
だから距離感さえ間違わなければ大丈夫そうだ。その『距離感さえ間違わなければ』というのが実は難しいしても、そこはドーベルマンMPMらロボットに頼るとしよう。ヒューマンエラーをフォローするのもロボットの役目だ。
ケインがうっかり素戔嗚のテリトリーに入ってしまったりということがないようにな。
そんなこんなで素戔嗚の<修行>にも付き合ったビアンカが戻ってくると、
「おかえり♡」
灯が迎えてくれる。
「ただいま」
ケインと素戔嗚とで衝突がなかったことでホッとした様子のビアンカが笑顔を浮かべる。
ビアンカのその笑顔を、灯は求めてるんだよな。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる