1,321 / 2,387
第三世代
ビアンカ編 大命題
しおりを挟む
素戔嗚も、ビアンカの様子に何かを察したらしい。彼女が見守る前で、ドーベルマンMPMを相手に力比べをするようになった。
たぶん、
『ビアンカが見守ってくれている』
というのが大事なんだろう。愛されてるな、ビアンカ。
だがそれは、彼女が素戔嗚をしっかりと受け止めるという姿勢を示したからこそのものであることも、おそらく事実だ。
フィクションなどによくある、
『<優しい人>が愛情を注ぎ、<愛>や<優しさ>の大切さを滔々と説く』
というのではなく、素戔嗚自身がもてあましていた<衝動>を、<憤り>を、正面から受け止めてくれた上で、<圧倒的な力>も示したからこそ、彼にとっての<説得力>になったんじゃないかな。
『自分よりも圧倒的に強い相手が、自分のことを受け止めてくれている認めてくれている』
という手順が必要だったんだろう。未来を相手にしていたことで、それも実感できていた。
しかも、ただ痛め付けて力の差を思い知らせるというのでもない、絶妙な力加減。この辺りは、軍人だからこそ詳しかったのかもな。
つくづく、
『ビアンカでなくちゃ駄目だった』
気がする。久利生じゃ彼の力を真正面からでは受け止められなかっただろうし、ドーベルマンMPMでは異質すぎて馴染めなかったかもしれないし、それはハートマンやグレイでも駄目だったと思う。
灯やルコアでは、やや力不足だった上に、何より、彼に大きな怪我をさせずにあしらうということができなかった可能性が高い。
エレクシアやイレーネでももしかすると大丈夫だった可能性もありつつ、ビクキアテグ村ではビアンカが最適だったんだろうな。
そうだ。ビクキアテグ村はビクキアテグ村で対処できる必要がある。牙斬のような極めて特異な事例については<エレクシアの派遣>のようなことも必要だったにせよ、おそらく夷嶽までは対処もできてたと思う。
牙斬がこちらの想定を上回ってきただけだ。しかも牙斬自体、エレクシアの左前腕を破壊してみせるようなとんでもない存在だったし、こういうのに対してはさすがに一つの村だけで対処できるようにするというのも現実的じゃないだろうな。
そんなわけで、素戔嗚の件については、どうやら何とかなりそうだ。彼自身が他の場所で何か無茶をして命を落とすようなこともあるかもしれないが、さすがにそこまではビアンカの手も届かないだろうし、覚悟はしなきゃな。
で、ここから先は、ビアンカの妊娠・出産をいかに無事に完遂するかというのが大命題だな。
「ビクキアテグ村で二人目ってことじゃん。そりゃ全力でサポートするに決まってんじゃん。ね、ルコア?」
「うん。もちろん!」
灯とルコアが、笑顔でそう顔を見合わせたのだった。
たぶん、
『ビアンカが見守ってくれている』
というのが大事なんだろう。愛されてるな、ビアンカ。
だがそれは、彼女が素戔嗚をしっかりと受け止めるという姿勢を示したからこそのものであることも、おそらく事実だ。
フィクションなどによくある、
『<優しい人>が愛情を注ぎ、<愛>や<優しさ>の大切さを滔々と説く』
というのではなく、素戔嗚自身がもてあましていた<衝動>を、<憤り>を、正面から受け止めてくれた上で、<圧倒的な力>も示したからこそ、彼にとっての<説得力>になったんじゃないかな。
『自分よりも圧倒的に強い相手が、自分のことを受け止めてくれている認めてくれている』
という手順が必要だったんだろう。未来を相手にしていたことで、それも実感できていた。
しかも、ただ痛め付けて力の差を思い知らせるというのでもない、絶妙な力加減。この辺りは、軍人だからこそ詳しかったのかもな。
つくづく、
『ビアンカでなくちゃ駄目だった』
気がする。久利生じゃ彼の力を真正面からでは受け止められなかっただろうし、ドーベルマンMPMでは異質すぎて馴染めなかったかもしれないし、それはハートマンやグレイでも駄目だったと思う。
灯やルコアでは、やや力不足だった上に、何より、彼に大きな怪我をさせずにあしらうということができなかった可能性が高い。
エレクシアやイレーネでももしかすると大丈夫だった可能性もありつつ、ビクキアテグ村ではビアンカが最適だったんだろうな。
そうだ。ビクキアテグ村はビクキアテグ村で対処できる必要がある。牙斬のような極めて特異な事例については<エレクシアの派遣>のようなことも必要だったにせよ、おそらく夷嶽までは対処もできてたと思う。
牙斬がこちらの想定を上回ってきただけだ。しかも牙斬自体、エレクシアの左前腕を破壊してみせるようなとんでもない存在だったし、こういうのに対してはさすがに一つの村だけで対処できるようにするというのも現実的じゃないだろうな。
そんなわけで、素戔嗚の件については、どうやら何とかなりそうだ。彼自身が他の場所で何か無茶をして命を落とすようなこともあるかもしれないが、さすがにそこまではビアンカの手も届かないだろうし、覚悟はしなきゃな。
で、ここから先は、ビアンカの妊娠・出産をいかに無事に完遂するかというのが大命題だな。
「ビクキアテグ村で二人目ってことじゃん。そりゃ全力でサポートするに決まってんじゃん。ね、ルコア?」
「うん。もちろん!」
灯とルコアが、笑顔でそう顔を見合わせたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる