RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第四章 進展と進化

目覚めの刻

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「まるで僕達が悪者みたいですね…そんなに真っ直ぐシャーレ君の想いをぶつけられると…」


「そんな大した物じゃない。当たり前の感情なのさ…私にとってはな…」


「そうですか…ならごめんなさい。僕にも掲げて譲れない正義があります…だから此処からが本番です…!」



アレスの身体に深緑色の樹木のギフトと体内
の波動が一気に溢れ出し交差していく。

シャーレ達にも何だか見慣れた様な光景にも
映る其れは間違い無く覚醒を呼び起こす前兆
であり「本番」という言葉は相応しい。



「樹木覚醒…“豊穣蔦鹿ファーティルディアー”…!」



覚醒を呼び起こしたアレスの顔に深緑色の
ペイントが施され、鹿の毛をあしらった美麗
なマントが纏われる。

更には肘や膝に当てられた防具にもマントと
同じ様な特徴の施しがされていた。

更に特徴的なのは額から前へと伸びた大自然
を優雅に駆け回る鹿の荘厳な角だろう。

蔦鹿ちょうろくアレス・ニールズ。

其の名の通りの姿に変わったアレスの周りに
は先程迄一頭のみだったギフトの鹿が二頭へ
増えており円を描く様に闊歩している。



「……さあ、行きますよ…!」



アレスの掛け声に合わせて二頭の鹿が大地を
駆けずりシャーレへ角を突き出し進む。

そして、其れを躱そうとしたシャーレだった
がアレスが突き出したカリスティックの一本
から蔦が飛び出しシャーレの左腕を絡め取り
動きを制限されてしまった。

しかも左腕は青龍刀を握っていた方の手で
在る事から鹿の突進が更に脅威となる。

腕が絡め取られている以上、此処から分身と
入れ替わるのは至難の技となってしまい腕を
何とか畳んで防ごうとするが鹿の突進を諸に
食らって背後へと飛ばされてしまう。

だが、終わらない。

吹き飛ばされたシャーレは背後で待ち構える
もう一頭の鹿の角での攻撃を翻した身体の
肩付近に此方も諸に喰らってしまった。



「(…クソッ…力も速さも段違いだ…)」



雪の大地に倒れ込んだシャーレはうつ伏せの
状態のまま倒れ込み微かに飛び込んで来る
ポアラとレザノフの声が耳に飛び込む。

だが、聞き取れない。

其処で自身の意識が遠のいている事を知る。



「(負けたという事か…どれだけ大口叩いても此の様では…ロードの助けになってやれない…弱いのは嫌だな…クソッ…強くなりたい…ッ…!)」



シャーレの言葉を借りよう。

彼は強運なのだ。

仲間、友人との出逢い、そして旅先の中で
出逢う強者達との戦いを幾度となく経た。

彼は其の中で磨かれて来た。

だからこそ限界の筈だった彼が、意識は遠く
彼方へと消え行く筈だった彼が、全員が驚愕
する程の姿を見せ付けているのだ。



「……そんな…まさかまだ…?」



シャーレはアレスの目の前で立ち上がった。

ゆらりゆらりと身体を揺らしながら。







「……流水覚醒……」



そして、シャーレが言い放つ。
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