RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第四章 進展と進化

飛竜 シャーレ・スティーバ

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シャーレの全身に渦巻いた次縹色の流水と
波動が互いに呼応し合う様に雪の大地の上で
シャーレは覚醒の刻を迎えた。

身体に纏われた次縹色の装備と腕から伸びる
様にひらりと風に舞う翼の様なマント。

そして、こめかみから後方へと伸びた彼が
得たワイバーンの優雅さ立ち込める角。

シャーレは自身の身体の変化にふと驚くと
自身の腕から伸びたマントをはためかせる
事に依って空へ舞い上がれる事を悟る。

そして、改めて口を開いた。



「流水覚醒…“雅清飛竜グレースワイバーン”……!」



シャーレは腕のマントを優雅にはためかせる
と緩りと空を舞って右腕を横に伸ばした瞬間
から一気にアレス目掛けて滑空する。

そして、左腕で伸ばした青龍刀の鋒でアレス
を突き刺すかの如く攻勢に転じて行った。

だが、アレスも黙って受ける訳は無い。

二頭の鹿が二人の間に割って入るとまたも
其の角で空から迫り来るシャーレを迎え撃つ
体勢を見せたが一頭の鹿は左腕のマントで
ひらりと躱しもう一頭の鹿の攻撃は右腕の
マントで完全に防いで見せた。



「……其のマントって盾なんですか…?」


「どうやらそうらしい。済まないが一気に決めさせて貰うよ…!」



そう言ったシャーレは左足で雪の大地を踏み
今度は地上から一気に前へと駆けて行く。

そして、真横に青龍刀を薙ぎ払うとアレスは
両手のカリスティックで弾こうと動く。

だが、其の攻撃は空振りに終わる。

シャーレは冷静に水の分身を仕込んでいた。

特性“泡沫”に因って生み出された分身の背後
から本体が宙にひらりと舞うと流水の斬撃を
アレスの身体目掛けて放った。

其の一撃にアレスは吹き飛ばされてしまう。



「さあ…興じる事は此れで終いだ。ロードの事は見逃して此処から立ち去ってくれ」



シャーレの言葉にアレスはゆらりと立つも
痛めた肩を手で支えながら現状を見る。

覚醒したシャーレと其の背後に控える仲間の
存在、更に一人はバルモア護衛隊の隊長でも
あり其の名が知れ渡った強者レザノフ。

限界を悟るには容易い状況だった。



「……わかりました…。ガスタさんの足取りは僕だけで探すとしましょう…」



そう言い残してアレスが眼前から去る。

雪の郷ウルジムスルクの目と鼻の先の雪の
大地で巻き起こったアレスとシャーレの対決
は何とシャーレに軍配が上がった。



「シャーレっ!すごいじゃんっ!」


「ええ。若者の成長速度は早いとはいえまさかこんな短期間で覚醒を手にするとは…正に飛竜ひりゅうの如しです」


「たまたまですよ…あのままやり合ってたら勝てたかどうか…」



シャーレは緩りと覚醒を解くと傷だらけの
身体を労わる様に声を掛けて来たレザノフと
ポアラの目の前で笑顔を見せる。

覚醒に至った事で彼の二つ名が決まった。

此れからは彼をこう呼ぶ事になるだろう。





飛竜ひりゅうシャーレ・スティーバと。





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