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第二編第二章 狙われた姫の命
道半ばの諦念
しおりを挟む「まさか此処迄追い詰めていながら…百里行く者は九十を持って半ばとす…とは良く言ったものだ…」
ウィルフィンは悔恨の念を抱く。
ロードという名の赤髪の侍を相手に
時間をイタズラに消費し過ぎた。
もし、全てを殺す覚悟を持って臨んだのなら
今のロードの命を断つ事は難しく無い。
レザノフに手傷を負わせた時点で
本来なら詰みの状況だったのだ。
己の甘さを呪うウィルフィンは緩りと
鞘に愛刀・宵闇を仕舞い込む。
「なんだ?やらねぇのか。めんどくせぇが相手してやるつもりで来たんだぜ?」
「どう見ても俺が不利だ。貴様と本気でやり合う余裕は無い…」
「ならさっさと帰れ。あんまり夜中にドンパチドンパチご近所迷惑だ」
「ふっ…捕らえようとはせぬのだな。貴様は…」
「其れをしなきゃならねぇって事を俺が忘れてる内に早よ行けっての」
「掴めない男だ…」
ウィルフィンは今一度振り返るとロードと
シェリーを一瞥しつつ思いを巡らせた後に
静かに闇夜の藪の中に消えて行った。
其処迄を見届けロードは気を失う。
其の後は、ポアラが率先してウィルフィンに
倒されたシェリーの付き人達の処置に移る。
ポアラに指示されながらU・Jも
其の場で悪戦苦闘しながら手助けをする。
シャーレは浮かばれない表情のまま
必死に汗を流して駆け回るポアラに
押されて手伝いに奔走していた。
そして、夜が明ける。
疲れ切ったポアラはソファでぐったりと
眠り込んでしまっていた。
不幸中の幸いと言えば、シェリーに仕える
医師と料理人の数名が無事であった事。
傷の深いレザノフとロードは未だ
目を覚まさないが、命に別状は無い。
そして其の他でも死傷者は出なかった。
ソファに寝転ぶポアラに毛布を掛けようと
近付いたシャーレはポアラに掛けようと
すると、物凄いタイミングで目を覚ます。
「おおっ!!」
「はっ、寝ちゃったっ…シャーレみんなは!?」
「あ、ああ。皆生きてるさ、ロードとレザノフさんはまだ目を覚まして無いがほら…」
シャーレの指差した先では並べられた
ベッドに伏せる二人の姿とそのベッドに
肘と顔を付けて眠るシェリーの姿があった。
「よ、良かったあ…」
安堵を浮かべてまたソファに倒れ込む
ポアラを見て笑みを浮かべたシャーレは
背中を向けて口を開いた。
「私はコックに買い出しを頼まれてるから行ってくる…ゆっくり寝てくれポアラも」
シャーレの言葉にポアラが慌ただしく
ガバッと身体を起こして立ち上がる。
「アタシも行く。この人数分だと一人じゃ大変でしょ?」
断ろうとしていたシャーレだったが
背中を叩かれながらポアラの押しに
負けて共に買い出しへと出て行った。
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