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第二編第二章 狙われた姫の命
道中で吐露する思い
しおりを挟むシャーレはポアラと共に買い出しに出た。
其の道中は重苦しい雰囲気となる。
リヤカーに食材を買っては乗せて淡々と
買い出しを進めて行き、時刻は夕刻になり
夕焼けが街を赤く染め始めた。
一息入れようとベンチに腰掛けた二人
だったが、ポアラは其の空気に耐えられず
目を泳がせ始めると、シャーレが俯く。
「何も出来なかったよ…」
俯き様に話し始めたシャーレの言葉に
ポアラは泳がせていた目を一点に合わせ
シャーレの横顔を見つめていた。
「あれだけロードが本気になって立ち向かっている中、武器に手は伸ばしたんだ…でも其れを掴む事無く、終わってしまった」
「シャーレ…」
「其の後の治療もそうだ。何処か本気で助けたいと思えなかった…嫌になるな。自分の事が…」
「…シャーレは、ウィルフィンの言葉を聞いてどう思った?」
ポアラの唐突な質問にシャーレは
ウィルフィンの言動をなぞる様に
頭の中で思い返して行く。
「正直な所、出逢う場が違えばウィルフィンの言葉に私は賛同していたと思う…拭い去れない過去の記憶が其の背中を易々と推してくる…」
シャーレは悔しさを滲ませながら
俯き顔を上げれないまま、声を絞り出す。
“知らぬからだ”
ウィルフィンの言葉を思い返して
其れをロードが呑み込んだ。
ポアラ自身も其れを見てシャーレに
手を上げた事を悔やんでいた。
ポアラにとってもマーシャルの死が
近い時期にあった、会ったばかりの
ロードとシャーレだったが、其の師の為に
命を賭けて戦ってくれた。
だから、ポアラ自身も此の二人を
信じる事が出来たのだろう。
「ねぇ、シャーレ…もし辛くなければ聞かせてくれないかな?」
「…何をだ?」
「シャーレの家族の事、家族に何があったのかを…」
「此の先、ロードが目覚めるのが遅れれば、まだ同じ時間を過ごす可能性がある…シェリー姫やレザノフさんには内緒にしてくれるかな…?」
「約束する…」
ポアラの言葉にシャーレは沈黙する。
きっと何から話せば良いのかと迷いの中に
いるのだろう、ポアラはじっと待った。
そして、緩りとシャーレの口が開く。
「前提として私は“バルモア軍”と“豪族”という人間に恨みを持っていた。“豪族”との諍いの中でロードに救われ、次はロードの手助けがしたいと旅に同行した事を頭に置いておいて欲しい…」
シャーレの前置きの話を終え、時代は緩りと
遡り、少年時代へ舞い戻る。
シャーレの家族は父と母、そして歳の離れた
兄が一人、遡った時代は、シャーレがまだ
あどけない七歳の頃の話だった。
物語は一度、十六年前へー。
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