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第二編第二章 狙われた姫の命
救援到着
しおりを挟む屋敷を覆い隠す様に燃え上がる真紅の炎。
炎が壁となってウィルフィンからは
シェリー達の姿が消えて行った。
其の炎を見たウィルフィンはロードを
睨み付けるが、其れはほんの一瞬だった。
ウィルフィンが刀を握る手から力を緩める。
そして燃え上がった筈の炎の壁が
段々と消えて、シェリー達の姿が瞳に映る。
そして、ロードがゆらりと身体をよろけさせ
其の場にうつ伏せで倒れ込んでしまう。
「ぐっ…何だ。身体が動かねェ…」
「…まさか。今授かったのか…ギフトを。そして扱えきれず出し尽くした…!」
「何だよソレ…こんな終わり方あるかよ、チクショーッ…」
ウィルフィンは驚きを隠せない。
授かり発動させたギフトの力を扱えず
出し尽くし倒れ込んだ側から見れば
愚行とも言える其の行動に、では無い。
そもそも有り得ないのだ。
会得したギフトの初期出力があれ程の
熱量の炎であった事も。
其の人間が身体の中を巡った波動と共に
其れを全て放出させる事も。
ウィルフィンにとっては、目の前に
倒れ込む男が起こした一連の行動に
空いた口が塞がらない状態であった。
「…もし。今のギフトの力が“護る”という言葉に呼応した壁を生み出したのなら…“殺す”という言葉と共に俺に向けられていたら…あの炎が全て襲い掛かって来たのか?…おそらく只では済まなかったろうな…」
ウィルフィンは最悪の未来を空想し
目を閉じると息を吐いて平静を取り戻す。
「待て…やめろよ?お前…」
「姫の命一つ奪って俺は消える…」
ウィルフィンは刀をくるりと手の中で
持ち替えると、バルコニーに目を向ける。
必死に手を伸ばすロードにはそれ以上の
力が残されて居なかった。
レザノフもまた応急処置の段階で
必死に身体を起こしてシェリーの前に立ち
其れに併せてポアラが武器を構える。
シャーレは震える手で青龍刀の柄を
握ろうとして居た其の時だった。
「ようっ!ウィルフィン君。相変わらず顔が怖いねェ!」
ウィルフィンは真後ろから聞こえた声に
バルコニーへ跳ぼうとしていた足を止める。
「あれって!」
「何故此処に…?」
「へへっ…助けてくれんのか?なあ、オイ」
ロード達三人が各々其処に現れた
褐色のド派手なコーンロウに真夜中に
黒いサングラスを掛けた異様さ際立つ
男に目を向けて笑みを溢す。
「あっれー?ロード君、ボロボロじゃないの…負けたのか?え?」
「喋るの疲れるから無視するわ…」
「何故、貴様が此処に。帝国軍少将U・J・ブラッド…!」
遅れて振り返ったウィルフィンが
眉間に皺を寄せて救援に来たU・Jに
声を掛けて、睨み付ける。
「まあ助けてくれって頼まれたからよ。それよりウィルフィン君、勘で言ってたのにやっぱり怖い顔してるじゃねぇか」
ウィルフィンはU・Jの空気の読めない
ニヤケ面に呆れて溜息を吐いた。
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