RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第二編第二章 狙われた姫の命

燃え上がる真紅の炎

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静寂の中、ロードが覚悟の一歩を踏み出す。

だが、その瞬間だった。

たった一歩、踏み出すだけの其の短い
時間で振り抜かれたウィルフィンの刀から
纏われていた黒い旋風が空気と共に
ロードの身体を何箇所も切り裂く。



「…なっ、なんだと…!?」



ロードには見えなかった。

其れ程迄の力量の差を見せつけられた
ロードは、身体から流れ出た血と共に
其の場に膝を付いて、痛みを堪える。



「ロード様っ!」


「ロードっ!」



バルコニーにいたポアラとシェリーに
名を呼ばれ、荒々しくなった息を吐きつつ
意識を何とか保って顔を上げる。



「もう退がれ…貴様では俺に勝てる道理は無い…」


「っるっせぇよ…勝てる勝てないの話で終わるモンは、譲れねぇモンとは言えねぇだろ…?」


「そんな姿で吠えても無駄だ…」



ウィルフィンはロードから目を離すと
バルコニーで不安そうな表情を浮かべる
シェリーに目を向ける。

其れに気付いたポアラが身構えるが
シャーレは未だ拳を強く握ったまま。

ウィルフィンが一歩前に踏み出す。



「…待てよ…!」



ウィルフィンの動きを見たロードが
やっとの思いで身体を起こして立ち上がる。



「やめておけ。其の出血だ、本当に死ぬぞ?貴様」


「はっ…そんなもんにビビってたら口だけの弱い男になっちまうだろ…」



顔を歪めながら啖呵を切ったロードだが
痛みで視界が揺れたままであった。

必死に刀の柄を握り締めるロードの
意識は今にも途切れてしまいそうである。

そんな時、ロードはとある過去を思い出す。

まだ五歳当時の少年時代の記憶。



「そういや…昔に一度俺はギフトの力ってのを目の前で見たな…」



アレンの流水の力を見て、ギフトの力
というものを認識したロードにとって
其れが目の前で見た初めてのギフトだと
錯覚していたが、十五年も昔にロードは
確かに其の力を其の目で見ていた。

過去に遡った意識の奔流の中で
ロードの記憶に存在する其の男は
確かに金色の炎を纏う。



痛みが麻痺して来る、限界も近い其の中で
ロードは刀を横に短く振って見せる。

自分の身体の中で初めて“波動”が波打ち
奥底から不思議な力が湧き出て来る。

其の波動の変化をウィルフィンも見逃さず
一歩足を下げて刀を下段に構える。



“いつかお前も何かを護りたいと本気で願った時、必ず天は力を与えてくれる。”



ロードの記憶の奔流に居た男がロードに
掛けた過去の言葉が脳内に流れ込む。

ロードは眼を大きく見開いた。



「だったらそれは間違いねぇ“今”だッ!!俺はシェリーを殺させない…護るんだよッ!!!!!」



大きく物凄い音を立てて、まるで
火山の爆発の様な真紅の炎がロードの
背後から屋敷を覆い隠す様な壁となる。



「…此の熱量の炎を貴様が生み出したのか…?」



初めてウィルフィンが目を丸くして
冷や汗を一粒だけ滴らせる。
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