RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第二編第二章 狙われた姫の命

反乱軍副長 ウィルフィン・フィンドール

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「言葉が解らぬか。阿呆め」



ウィルフィンの放った夷狄とは。

所謂、外国人を指す言葉で、蔑称である。

他には未開の民、野蛮人と言う意味を持ち
ウィルフィンから其れを告げられたロードの
怒りが完全に頂点に達していた。



「夷狄…テメェふざけんなよ。同じ人間だろうがッ!何をテメェの物差しで勝手に見下してやがる…!」


「我々、反乱軍はバルモアとの戦争に因って運命を捻じ曲げられた者が多く属する。我々にとっては処罰し、天誅を下す相手だ、バルモアの人間は…」


「偉そうに言いやがって。結局、ただの復讐じゃねぇか!?」


「その通りだ。だから邪魔をするな」



ウィルフィンの曲げない想いにロードの
言葉と感情がヒートアップして行く。



「させねぇよ…テメェ等がどんな辛い想いをしてきたか知らねぇがな。テメェのやってる事は……」


「知らぬからだ…」


「なに…?」



変わらない表情、崩れぬポーカーフェイス。

そんな雰囲気を醸し出していたウィルフィン
が、初めてロードの言葉を遮る。



「貴様の言い分は百も承知だ。復讐は復讐の連鎖を呼ぶ。だから我々が生まれた…」


「そこまで解ってて何でだ…」


「理解している。だがな先程貴様は言った。何も知らない、と」


「ああ…」


「俺達の痛みも過去も何も知らず、あまつさえ反乱軍の護国の志を只の復讐と言ってのける。其れは貴様のエゴだ…思い付く限りの正論をぶつけるだけの弱者、反吐が出る…」



ウィルフィンの目付きがより一層
鋭く変わり、唇を噛む。



「復讐…其の通りだと理解はすると言った。だが、其れは貴様の様な俺達を何も知らない者が平然と踏み込んでいい領域じゃない…」



ウィルフィンの言葉にバルコニーのポアラが
シャーレの顔を覗き込む。

シャーレは神妙な面持ちで其の場を眺める。

世の中には噂や憶測、又聞きだけで
人を愚弄する人間達が存在する。

知らない事は罪、ウィルフィンの
言葉は其れを強く印象付ける。



「貴様にも譲れない物はあるだろう?」


「ああ、知らないってのは正にそうだ。アンタに俺が説教したのは間違いだったと認める。響く訳は無かった…でも譲れないモノはある」



ロードは鋒をウィルフィンに向けて
意思を言葉以外の方法で示す。



「やっぱり俺はシェリーを護りたい」


「…ならば斬り伏せるまで」



ウィルフィンが刀に再度黒い風を纏う。

其れを見たロードがより一層集中を高めた。

ロードは感じた。

ウィルフィンの刃に拭い切れぬ怨念が
宿っている事と此の人間が実は優しい事。

波動の流れが読める様になってきたロードに
とってウィルフィンは何枚も上手。

そんな実力の離れた人間が此処まで
言葉を交わしてくれた。

きっと退いて欲しいと願ったから。

もしかしたら、シェリーの事も本当は
殺したくないのかもしれない。

そんな想いが、頭の中に流れ込む。

だが、ロードは退かなかった。

後戻りは出来ない。

吹き抜ける風の中、ロードは覚悟を決めた。


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