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第二編第二章 狙われた姫の命
一宿一飯一命の恩返し
しおりを挟むシェリーに暗殺の魔の手が伸びた。
凶刃が迫り絶体絶命と思われた次の瞬間。
レザノフが飛ばされて破られた扉の奥から
赤髪を揺らして一人の影が間に入る。
「取り敢えず間に合ったな」
「貴様は…?」
シェリーの前に立ち塞がりウィルフィンの
刀を防いで鍔迫り合いに持ち込む。
其の背中を見たシェリーが涙目で声を発す。
「ロード様っ!!」
「よう、シェリー!レザノフさんは無事だぜ?今、シャーレが見てくれてる」
「…うっ…うう。ありがとうございます…」
安堵の涙を流すシェリーを見てほんの少し
笑みを浮かべたロードは刀を押し込む様に
ウィルフィンを中庭へと引き摺り込むと
自身も中庭へ降り立つ。
「何者だ。貴様は…」
「俺か?俺は、ロード。シェリーには指一本触れさせ無ェぞ」
「貴様の様な人間が居るとは訊いていないがな」
「そりゃそうだろ。昨日の昼に出逢ったばっかりだからな」
意味が解らないとばかりに憮然とした
表情を浮かべるウィルフィン。
「そんな人間の為に命を張るか、ふん…道理が解らぬ」
「俺はよ、飯を食わせて貰った、泊まる宿も与えて貰った。それに、命を救われた…恩返しの理由はそれで充分だろ」
「正義感の強い男だな。貴様は、だが邪魔するなら死ね」
中庭でロードとウィルフィンの激突の
幕が派手に斬り落とされた。
その頃バルコニーにはレザノフの肩を
支えたシャーレと別部屋から駆け付けた
ポアラがバルコニーに集まる。
「シェリーちゃん、レザノフさん!大丈夫っ!?」
心配そうに現れたポアラはシャーレが
部屋から咄嗟に持ち出してきた救急箱を
開くとレザノフの応急処置を始める。
一方で中庭に視線を落としたシャーレ。
「あれは…反乱軍の副長…ウィルフィン・フィンドール…。シェリー姫の命を狙って来たのか…」
「…その通りです。姫様、客人殿、私が不甲斐ないばかりに申し訳ない…」
「大丈夫だからレザノフさん!今は安静にして…!」
バルコニーの中で言葉を交わす四人の
視界の先には激しく斬り合う二人の姿。
シェリーは、自分のせいで
と深く心を痛めていた。
「アンタはその格好、反乱軍だろ?」
「ああ。反乱軍副長ウィルフィンだ」
「副長…へへっ、そりゃバカ強ェんだろな…そんなんが一人の丸腰の女の子相手に武器持って斬りかかるのかよ…」
「当然だ、あの女は消さねばならない」
表情を変えずにさも当然と発言する
ウィルフィンの言葉にロードの内側が
沸々と怒りに染められて行く。
「そうかよ…じゃあやっぱり俺が護るしか無ェな…」
「護るだと?あの女をか」
「…何が言いてェんだテメェは。護るって決めたのは俺だ、意志は曲げねぇ…!」
ウィルフィンがふと、攻勢を止めて
ロードと距離を取ると口を開く。
「それが、夷狄でもか…?」
「イテキ…?」
ウィルフィンの言葉にロードが足を止める。
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