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偉大なる探検家に花束を
LV17 二本縞の猫
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ベンの葬儀から一週間が過ぎた。
ドレンはベンの家でバルコニーの椅子に座り毎日を送っていた。
ふと空を仰ぐと今度は
ベンの残した謎の木切れを見つめながら 物思いに更けている。
そんなドレンの様子を案じてか、仕事終わりにフミヤはベンの家へ顔を出す。
ドレンは椅子に座りベンの猫を撫でている。
「ドレン、そろそろ元気をだせ。」
「ああ。」
「ドレン、探検は再開しないのか?」
「ああ。」
「なあ、ドレン。」
「ああ。」
フミヤはついに 不甲斐ないドレンに苛立ち、ドレンを叱咤する。
「おい、おまえがそんなんだったら ベンが悲しむだろ。」
「ベンは言ってたぞ、後は任せるって。
いつまでそうして落ち込んでんだ!」
ドレンは悩ましい目でフミヤを見つめ呟く。
「師匠の猫・・・。」
「ん。」
「この猫、今何歳なんだろ?
しかも この子は師匠がいなくなって
自分で食い扶ちくいぶち探してんのか?」
フミヤは はっと気付くとベンの家の中へ入って行き
壁に掛けてあった肖像画をドレンの元に持ってくる。
「背中に二本縞、この肖像画と一緒だ。」
「そうなんだよ。」
ドレンは話し出した。
「この時のベンってどう見ても30後半から40歳くらいだろ?
この猫がもし 同じ猫ならもうとっくに寿命だ。
しかも こいついくらご飯あげても食べないんだ。」
フミヤは黙り考えこんだあと、ドレンに問いかける。
「ベンは探検に行く時、バディー相棒は いたのか?」
「いや、俺が聞いてる話では いつも単独行動だと聞いていたが。」
フミヤもその絵の違和感を感じとった。
「じゃあ このベンと後ろの光景は誰が書いたんだ。」
謎は深まるばかりだ。
二人が考察に夢中になる間に 猫はスルっとドレンの膝から逃れ
家の裏手に走って行く。
何かを悟ったフミヤとドレンはその猫の後を追うと
猫は家の裏手にある小さな岩のスキマに入り込んで行った。
何分か待ってみたが、猫が出てくる気配はない。
その隙間は腹ばいで進めるほどの穴であり
意を決した二人は順番に入る事にした。
腹ばい状態で進むこと数分、大きな空洞に出た。
岩に囲まれたその場所は ジメジメと少しカビ臭い匂いを
放っている。
岩のあちこちに生える光ゴケのおかげで
辺りはそれなりに明るかった。
少し進んだ先には大きく底の見えない穴が口を開き
2本のロープがぶら下がっている。
よく見ると壁に文字が書かれている。
「師匠の文字だ。」
ドレンは壁に書かれた文字を読む。
ーーーー
後世の者へ前世の者が黄泉から伝える。
二人の意思は固く絆で結ばれし。
互いが勇気を持ち 手を取り合え。
地は天に。
臆することなかれ
天は地。
浪漫はそこに さあ身を委ねよ。
ーーーー
上から伸びた短いロープと長いロープの間には
扉のような物がある。
ドレンはフミヤの方を向き一言。「だそうだ。」
フミヤは珍しくも気持ちが高ぶって止まないでいた。
「二人で同時にあのロープに飛び付けって事か。」
「ベンがやりそうな事だな。」
「一斉ので行くぞ、フミヤ。」
「了解。一斉の・・・。」
二人は呼吸を合わせて跳び、
フミヤは長く伸びたロープに
ドレンは短く伸びたロープを掴んだ。
「ドレン、何も起きないぞ!」
フミヤはドレンに呼びかけた直後、突如閃く。
「あっ もしかして。」
ガコン。何かの音がした。
「違うドレン、こっちに来い!」
フミヤの気付きよりも 早くトラップが発動する。
「グァ。」
ドレンの掴まったロープが抜けると同時に
周囲の岩が崩れドレンの頭部に直撃する。
「掴まれ、ドレン。」咄嗟に手を伸ばすフミヤ。
ドレンは意識を朦朧としながらも
必死にフミヤに手を伸ばす。
間一髪、フミヤはドレンの腕を掴んだ。
「ありがとう、フミヤ!」
長いロープに加わる二人分の重さにより
上部にある扉が開くような音がする。
二人は 汗を拭いながらロープを上り
次の部屋へと進んで行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
光ゴケ 光り輝くコケ(空気中の酸素に反応して明るく輝く)
前世 昔 後世 後の世(これから先)の事
ドレンはベンの家でバルコニーの椅子に座り毎日を送っていた。
ふと空を仰ぐと今度は
ベンの残した謎の木切れを見つめながら 物思いに更けている。
そんなドレンの様子を案じてか、仕事終わりにフミヤはベンの家へ顔を出す。
ドレンは椅子に座りベンの猫を撫でている。
「ドレン、そろそろ元気をだせ。」
「ああ。」
「ドレン、探検は再開しないのか?」
「ああ。」
「なあ、ドレン。」
「ああ。」
フミヤはついに 不甲斐ないドレンに苛立ち、ドレンを叱咤する。
「おい、おまえがそんなんだったら ベンが悲しむだろ。」
「ベンは言ってたぞ、後は任せるって。
いつまでそうして落ち込んでんだ!」
ドレンは悩ましい目でフミヤを見つめ呟く。
「師匠の猫・・・。」
「ん。」
「この猫、今何歳なんだろ?
しかも この子は師匠がいなくなって
自分で食い扶ちくいぶち探してんのか?」
フミヤは はっと気付くとベンの家の中へ入って行き
壁に掛けてあった肖像画をドレンの元に持ってくる。
「背中に二本縞、この肖像画と一緒だ。」
「そうなんだよ。」
ドレンは話し出した。
「この時のベンってどう見ても30後半から40歳くらいだろ?
この猫がもし 同じ猫ならもうとっくに寿命だ。
しかも こいついくらご飯あげても食べないんだ。」
フミヤは黙り考えこんだあと、ドレンに問いかける。
「ベンは探検に行く時、バディー相棒は いたのか?」
「いや、俺が聞いてる話では いつも単独行動だと聞いていたが。」
フミヤもその絵の違和感を感じとった。
「じゃあ このベンと後ろの光景は誰が書いたんだ。」
謎は深まるばかりだ。
二人が考察に夢中になる間に 猫はスルっとドレンの膝から逃れ
家の裏手に走って行く。
何かを悟ったフミヤとドレンはその猫の後を追うと
猫は家の裏手にある小さな岩のスキマに入り込んで行った。
何分か待ってみたが、猫が出てくる気配はない。
その隙間は腹ばいで進めるほどの穴であり
意を決した二人は順番に入る事にした。
腹ばい状態で進むこと数分、大きな空洞に出た。
岩に囲まれたその場所は ジメジメと少しカビ臭い匂いを
放っている。
岩のあちこちに生える光ゴケのおかげで
辺りはそれなりに明るかった。
少し進んだ先には大きく底の見えない穴が口を開き
2本のロープがぶら下がっている。
よく見ると壁に文字が書かれている。
「師匠の文字だ。」
ドレンは壁に書かれた文字を読む。
ーーーー
後世の者へ前世の者が黄泉から伝える。
二人の意思は固く絆で結ばれし。
互いが勇気を持ち 手を取り合え。
地は天に。
臆することなかれ
天は地。
浪漫はそこに さあ身を委ねよ。
ーーーー
上から伸びた短いロープと長いロープの間には
扉のような物がある。
ドレンはフミヤの方を向き一言。「だそうだ。」
フミヤは珍しくも気持ちが高ぶって止まないでいた。
「二人で同時にあのロープに飛び付けって事か。」
「ベンがやりそうな事だな。」
「一斉ので行くぞ、フミヤ。」
「了解。一斉の・・・。」
二人は呼吸を合わせて跳び、
フミヤは長く伸びたロープに
ドレンは短く伸びたロープを掴んだ。
「ドレン、何も起きないぞ!」
フミヤはドレンに呼びかけた直後、突如閃く。
「あっ もしかして。」
ガコン。何かの音がした。
「違うドレン、こっちに来い!」
フミヤの気付きよりも 早くトラップが発動する。
「グァ。」
ドレンの掴まったロープが抜けると同時に
周囲の岩が崩れドレンの頭部に直撃する。
「掴まれ、ドレン。」咄嗟に手を伸ばすフミヤ。
ドレンは意識を朦朧としながらも
必死にフミヤに手を伸ばす。
間一髪、フミヤはドレンの腕を掴んだ。
「ありがとう、フミヤ!」
長いロープに加わる二人分の重さにより
上部にある扉が開くような音がする。
二人は 汗を拭いながらロープを上り
次の部屋へと進んで行った。
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光ゴケ 光り輝くコケ(空気中の酸素に反応して明るく輝く)
前世 昔 後世 後の世(これから先)の事
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