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序章
結婚式の乱入者
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神々しい光を放つステンドグラス、美しい女神像、壁に掲げられた十字架……教会と呼ばれるこの場所で今────二人の男女が結婚式を挙げていた。
白のタキシードに身を包む新郎の名は、カーティス・キャンベル。
艶やかな金髪と海色の瞳を持つ美青年で、カラミタ王国の第二王子でもある。
浮いた話が一切ない方で、紳士の鑑と言われていた。
そして、ウェディングドレスを優雅に着こなす私────新婦の名はニーナ・ホールデン。
真っ直ぐな黒髪に、漆黒の瞳を持つ私はエスポワール王国の第一王女である。
魔法大国として知られるエスポワール国で、私は宮廷魔導師と同程度の実力を持つ魔導師だった。
“漆黒の魔女”の二つ名を持つ私の晴れ舞台を一目見ようと、式場には多くの人々で溢れ返っている。
結婚式も終盤に差し掛かったことで、人々の興奮はピークに達していた。
「それでは、誓いのキスを」
その言葉を合図に、私はカーティス様と向かい合う。
ベール越しにカーティス様と視線が交わる中、彼はそっとベールに触れた。
視界を遮っていたベールが未来の旦那様の手によって、ゆっくりと上にあげられていく。
────嗚呼、私は本当にこの人と結婚するのね。
『結婚する』という実感が今になって湧いてきた。
「ニーナ、目を閉じて」
「はい、カーティス様……」
言われた通り目を閉じると、カーティス様に優しく顎を掴まれた。
会場中の注目が私達に集まる中、彼はゆっくりと顔を近づけてくる……。
そして、彼の柔らかな唇が私の唇に優しく触れる─────ことはなかった。何故なら……。
「────その結婚、ちょっと待って!」
招かれざる客が結婚式に乱入してきたから。
式場の扉を乱暴に開けて、『待った』を掛けてきたのは酷く愛らしい女の子だった。
ふんわりとしたハニーブラウンの長髪に、宝石のパパラチアサファイアを連想させるピンクの瞳。中でも目を引くのはこの可愛らしいお顔。幼さが残る甘い顔立ちは庇護欲を駆り立てられた。
『可愛い』を沢山詰め込んだ容姿をしている彼女はズンズンと大股でこちらに近づいてくる。
そんな彼女の後ろでは衛兵が困り果てた様子で、『待ってください!』と連呼していた。
衛兵が無理やり捕まえられないってことはかなり高貴な身分にある方のようね。そうじゃなきゃ、この大事な結婚式に小娘が乱入出来る訳ないもの。
でも、困ったことに……この子には一切見覚えがないのよね。少なくとも、我が国の人間ではないと思うけど……一体この子は誰なのかしら?
「そこの芋女!さっさとお兄様から、離れなさい!ブスのくせにお兄様と結婚しようだなんて、図々しいにも程があるわ!」
「へっ……?」
私を指さして、よく分からないイチャモンを付けてきた少女に、私は思わず素っ頓狂な声を上げる。
そして、カーティス様とその少女を交互に見つめた。
お、おっ……お兄様!?えっ!?どういうこと!?この子はカーティス様の妹って訳!?
白のタキシードに身を包む新郎の名は、カーティス・キャンベル。
艶やかな金髪と海色の瞳を持つ美青年で、カラミタ王国の第二王子でもある。
浮いた話が一切ない方で、紳士の鑑と言われていた。
そして、ウェディングドレスを優雅に着こなす私────新婦の名はニーナ・ホールデン。
真っ直ぐな黒髪に、漆黒の瞳を持つ私はエスポワール王国の第一王女である。
魔法大国として知られるエスポワール国で、私は宮廷魔導師と同程度の実力を持つ魔導師だった。
“漆黒の魔女”の二つ名を持つ私の晴れ舞台を一目見ようと、式場には多くの人々で溢れ返っている。
結婚式も終盤に差し掛かったことで、人々の興奮はピークに達していた。
「それでは、誓いのキスを」
その言葉を合図に、私はカーティス様と向かい合う。
ベール越しにカーティス様と視線が交わる中、彼はそっとベールに触れた。
視界を遮っていたベールが未来の旦那様の手によって、ゆっくりと上にあげられていく。
────嗚呼、私は本当にこの人と結婚するのね。
『結婚する』という実感が今になって湧いてきた。
「ニーナ、目を閉じて」
「はい、カーティス様……」
言われた通り目を閉じると、カーティス様に優しく顎を掴まれた。
会場中の注目が私達に集まる中、彼はゆっくりと顔を近づけてくる……。
そして、彼の柔らかな唇が私の唇に優しく触れる─────ことはなかった。何故なら……。
「────その結婚、ちょっと待って!」
招かれざる客が結婚式に乱入してきたから。
式場の扉を乱暴に開けて、『待った』を掛けてきたのは酷く愛らしい女の子だった。
ふんわりとしたハニーブラウンの長髪に、宝石のパパラチアサファイアを連想させるピンクの瞳。中でも目を引くのはこの可愛らしいお顔。幼さが残る甘い顔立ちは庇護欲を駆り立てられた。
『可愛い』を沢山詰め込んだ容姿をしている彼女はズンズンと大股でこちらに近づいてくる。
そんな彼女の後ろでは衛兵が困り果てた様子で、『待ってください!』と連呼していた。
衛兵が無理やり捕まえられないってことはかなり高貴な身分にある方のようね。そうじゃなきゃ、この大事な結婚式に小娘が乱入出来る訳ないもの。
でも、困ったことに……この子には一切見覚えがないのよね。少なくとも、我が国の人間ではないと思うけど……一体この子は誰なのかしら?
「そこの芋女!さっさとお兄様から、離れなさい!ブスのくせにお兄様と結婚しようだなんて、図々しいにも程があるわ!」
「へっ……?」
私を指さして、よく分からないイチャモンを付けてきた少女に、私は思わず素っ頓狂な声を上げる。
そして、カーティス様とその少女を交互に見つめた。
お、おっ……お兄様!?えっ!?どういうこと!?この子はカーティス様の妹って訳!?
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