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第一章ー最初の1年ー
嫌がらせ
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召還されてから1ヶ月は、聖女としての訓練ではなく、こちらの世界についての勉強にあてられた。世界が変われば常識も変わる。この世界は貴族社会。爵位が上になるほど色んな権限が与えられ義務も生まれる。幸い、この世界には奴隷制度は無い。
日本…地球と違う事と言えば、科学ではなく魔法や魔術で発展しているところと、魔獣なる物が居る事…位だろうか?
縦社会が凄いとか、政略結婚だとかは、3年で還る私達にとっては、あまり関係の無い話だろう。勿論、私には日本にも彼氏なんて居ないけど、3人のお姉さん達には結婚を前提に付き合っている彼氏さんが居る。
ー私は…恋愛はまだ要らないー
身の回りで変わった事もある。
王宮内に、続き部屋で私達4人に一部屋ずつ自室を宛がわれ、各部屋にも侍女が付いた。私は聖女でもないから断ったのだが、王様や宰相様に
『巻き込まれだったとしても、こちらに非がある』
とか言われて、押し切られる形で付けられた。付けられたのだが…気に食わなかったのが、その侍女達の方だった。聖女付きになれると思ったのに、付いたのが聖女ではなく召還に巻き込まれただけの私だったのだ。最初こそは、それなりに丁寧に対応されていたが、少しずつ嫌がらせをされるようになった。
それは、小さいものだった。朝、用意された服が破れてたり汚れていたり。
ー別に気にならないからそのまま着たー
昼過ぎに出されるお菓子が生焼けとか、無しとか。
ー別に食べなくても平気なので、特に問題無しー
3食の食事のどこかに、味が濃すぎる物、具が無い物、パンが硬いなど。
ー全部がそうじゃないから、まともな物だけ食べたー
これ位の嫌がらせなんて、可愛いものだよね…なんて、呑気に思ってました。
「あれ?最近お姉さん達に会ってないな…」
1ヶ月の間は一緒に勉強をしていたので、毎日4人で会って話もしていた。でも、その1ヶ月が終わると、お姉さん達は聖女の力の訓練が始まる為、毎日は無理かも知れないけど、必ず会いに行くからねと約束してくれた。
筈なんだけど…。
気が付けば、お姉さん達と一月程会っていなかった。勿論、その間にも嫌がらせは続いていた。最近では食事が1日、1食か2食で、お昼過ぎのお菓子は出なくなっていた。
ー毎日部屋に引きこもってるだけだから、お腹は空くけど…何となく堪えられるー
直接的な嫌がらせは無い。多分、私がこちらの言葉を理解していないと思っているのだろう。お姉さん達にもまだ言えてないけど、実は、魔法のお陰でこちらの言葉が理解できるようになったのだ。スマホの翻訳をイメージしてみたら…出来たのだ。全て日本語として聞こえるから、口の動きと言葉が合っていなかったりはするけど、そのお陰で周りが何を言っているのか解るようになった。ただ、私が急に理解したり、話し出したりすると驚かれたり不信がられたりすると思い、理解していない、喋れないフリをしている。
だから、余計に嫌がらせも酷くなっているのかもしれない。
そう言えば、最近外にも出てないなぁ…。
私の居室には、大きなテラスがあり、そこから庭に出る事ができる。
その庭でお姉さん達と、最後にお茶をしたのはいつだったかなぁ?
私に付いている筈の侍女3人は、殆どこの部屋には来ない。今も私は独りだ。
久し振りにテラスへ続く硝子扉を開け、外に出る。裸足のままだけど、気にせず庭まで足を伸ばした。
そこには、色々な花が植えてある。日本にあるのと同じ様で少しずつ違う花。たくさん植えてあるのは、薔薇に似た花だった。
ふと、花壇の端に目を向けると…
「かすみ草?」
大輪の薔薇の様な花の陰に隠れるように、かすみ草がひっそりと咲いていた。私の好きな花だ。大輪の花に隠れて目立たない小さな花。
「ふふっ。私みたい。」
自嘲めいた笑いが溢れる。
お姉さん達、ひょっとして…ゲームの流れに乗り出したとか…無いよね?こっちで誰かを好きになってるとか…無いよね?
不安が過る。この1ヶ月、何も考えないようにした。何故お姉さん達に会えないのか。考えるのが怖くて、魔法を使えるようにと色々と自分なりに頑張った。お陰で色んな魔法が使えるようになった。
お姉さん達にも…見てもらいたいのに…
かすみ草の一枝をそっと摘み取り、目の前で眺める。
「裸足で何をしている?」
ビクッと自分の肩が震える。
ー何故…私の部屋の庭に男の人が!?ー
急に後ろから声を掛けられて驚くが、更に、その声が男性のもので…更に驚く。怖くて振り向く事もできない。
「…侍女も付けずに…あの噂は本当なのか?」
その男の人は、ぼそぼそとなにかを呟いている。
ー噂?それは分からないけど、侍女も付けずにと言われても、ここ最近まともに会ってないしー
「聖女様達に言われて来てみたが…」
お姉さん達に?その言葉につられて、後ろを振り返る。
「っ!?」
そこに居たのは、以前、ミヤさんに教えてもらった攻略対象者の1人、王太子殿下の専属近衛騎士のエディオル=カルザイン様だった。
日本…地球と違う事と言えば、科学ではなく魔法や魔術で発展しているところと、魔獣なる物が居る事…位だろうか?
縦社会が凄いとか、政略結婚だとかは、3年で還る私達にとっては、あまり関係の無い話だろう。勿論、私には日本にも彼氏なんて居ないけど、3人のお姉さん達には結婚を前提に付き合っている彼氏さんが居る。
ー私は…恋愛はまだ要らないー
身の回りで変わった事もある。
王宮内に、続き部屋で私達4人に一部屋ずつ自室を宛がわれ、各部屋にも侍女が付いた。私は聖女でもないから断ったのだが、王様や宰相様に
『巻き込まれだったとしても、こちらに非がある』
とか言われて、押し切られる形で付けられた。付けられたのだが…気に食わなかったのが、その侍女達の方だった。聖女付きになれると思ったのに、付いたのが聖女ではなく召還に巻き込まれただけの私だったのだ。最初こそは、それなりに丁寧に対応されていたが、少しずつ嫌がらせをされるようになった。
それは、小さいものだった。朝、用意された服が破れてたり汚れていたり。
ー別に気にならないからそのまま着たー
昼過ぎに出されるお菓子が生焼けとか、無しとか。
ー別に食べなくても平気なので、特に問題無しー
3食の食事のどこかに、味が濃すぎる物、具が無い物、パンが硬いなど。
ー全部がそうじゃないから、まともな物だけ食べたー
これ位の嫌がらせなんて、可愛いものだよね…なんて、呑気に思ってました。
「あれ?最近お姉さん達に会ってないな…」
1ヶ月の間は一緒に勉強をしていたので、毎日4人で会って話もしていた。でも、その1ヶ月が終わると、お姉さん達は聖女の力の訓練が始まる為、毎日は無理かも知れないけど、必ず会いに行くからねと約束してくれた。
筈なんだけど…。
気が付けば、お姉さん達と一月程会っていなかった。勿論、その間にも嫌がらせは続いていた。最近では食事が1日、1食か2食で、お昼過ぎのお菓子は出なくなっていた。
ー毎日部屋に引きこもってるだけだから、お腹は空くけど…何となく堪えられるー
直接的な嫌がらせは無い。多分、私がこちらの言葉を理解していないと思っているのだろう。お姉さん達にもまだ言えてないけど、実は、魔法のお陰でこちらの言葉が理解できるようになったのだ。スマホの翻訳をイメージしてみたら…出来たのだ。全て日本語として聞こえるから、口の動きと言葉が合っていなかったりはするけど、そのお陰で周りが何を言っているのか解るようになった。ただ、私が急に理解したり、話し出したりすると驚かれたり不信がられたりすると思い、理解していない、喋れないフリをしている。
だから、余計に嫌がらせも酷くなっているのかもしれない。
そう言えば、最近外にも出てないなぁ…。
私の居室には、大きなテラスがあり、そこから庭に出る事ができる。
その庭でお姉さん達と、最後にお茶をしたのはいつだったかなぁ?
私に付いている筈の侍女3人は、殆どこの部屋には来ない。今も私は独りだ。
久し振りにテラスへ続く硝子扉を開け、外に出る。裸足のままだけど、気にせず庭まで足を伸ばした。
そこには、色々な花が植えてある。日本にあるのと同じ様で少しずつ違う花。たくさん植えてあるのは、薔薇に似た花だった。
ふと、花壇の端に目を向けると…
「かすみ草?」
大輪の薔薇の様な花の陰に隠れるように、かすみ草がひっそりと咲いていた。私の好きな花だ。大輪の花に隠れて目立たない小さな花。
「ふふっ。私みたい。」
自嘲めいた笑いが溢れる。
お姉さん達、ひょっとして…ゲームの流れに乗り出したとか…無いよね?こっちで誰かを好きになってるとか…無いよね?
不安が過る。この1ヶ月、何も考えないようにした。何故お姉さん達に会えないのか。考えるのが怖くて、魔法を使えるようにと色々と自分なりに頑張った。お陰で色んな魔法が使えるようになった。
お姉さん達にも…見てもらいたいのに…
かすみ草の一枝をそっと摘み取り、目の前で眺める。
「裸足で何をしている?」
ビクッと自分の肩が震える。
ー何故…私の部屋の庭に男の人が!?ー
急に後ろから声を掛けられて驚くが、更に、その声が男性のもので…更に驚く。怖くて振り向く事もできない。
「…侍女も付けずに…あの噂は本当なのか?」
その男の人は、ぼそぼそとなにかを呟いている。
ー噂?それは分からないけど、侍女も付けずにと言われても、ここ最近まともに会ってないしー
「聖女様達に言われて来てみたが…」
お姉さん達に?その言葉につられて、後ろを振り返る。
「っ!?」
そこに居たのは、以前、ミヤさんに教えてもらった攻略対象者の1人、王太子殿下の専属近衛騎士のエディオル=カルザイン様だった。
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