上 下
6 / 203
第一章ー最初の1年ー

聖女とおまけ

しおりを挟む
それからも色々話をしていたが、暫くすると、またメイド服を着た女の人が私達を迎えに来た。
今回の召還について説明する為、別室へと案内すると言う事だった。

部屋を出て、大きくて広い廊下をお城の奥へむかって進んで行く。時折すれ違う人が居るが、その人達が廊下の端に寄って軽く頭を下げて来るから、何だか申し訳ない気持ちになる。

ー私はただの巻き込まれなんだけどねー



一際大きい扉の前で、メイド服の人が立ち止まり、そこに居た2人の男性と言葉を交わす。ミヤさんが、そっと私の手を握ってくれる。

「どうやら、この部屋の中で話をするみたいよ。ここからは、あの2人の男性が案内してくれるみたい。あの金髪の人…多分攻略対象者の王子よ…。」

チラリと見ると、王子らしき人…いや、絶対王子だろう。絵に描いたような金髪碧眼に、肌は「陶器ですか?」と訊きたくなるような綺麗な白さ。コレで王子じゃなかったら、誰が王子なんだ!?と叫んでしまいそうだ。

「あー、多分、その後ろに控えてる銀髪の彼も攻略対象者だわ…あの王子の近衛だったかな?」

その彼を見る。
背が高いなと思った王子よりも更に背が高い。銀髪で長い髪を襟足で一つに束ねている。目は切れ長で、少し冷たい印象だ。
二人とも、所謂"イケメン"だ。攻略対象者だからだろうか?いや…ここに来てから、美男美女しか目にしてないような気がする…。辛いー。

フジさんとショウさんが王子と、少し何やら話した後、王子が銀髪の人に合図し、その大きな扉が音も無くゆっくりと押し開けられた。









部屋の中に入ると、予めミヤさん達から「多分、これからの流れは~」と聞かされていた通りの流れだった。
王族から神官、高位貴族が待ち構え、聖女召還に至った説明とステータスの確認。ステータスの確認については、この国の魔導師のトップの人が行った。勿論、聖女はミヤさんとフジさんとショウさんだ。私は、無事に?この召還に巻き込まれただけのモブと認定された。

「巻き込まれと言っても、ハルは私達にとって妹同然に可愛がってる子なので、私達と同じ様に対応して下さい。」

3人がそう言って、私を守ってくれる。

「勿論です。そもそも、こちら側の都合に巻き込んでしまっているだけで、聖女様方は勿論の事、ハル様にも何の非もありませんから。」

魔導師のトップの人が何か言った(ハル以外は、何言ってるか分からない)。言ったが…

ー何だろう…ハルと名前を呼ばれた時、少し胸がチクリとした。気のせいかな?ー

少し眉間に皺が寄る。

「セルレイン!!」

すると、王様らしき人が誰かの名前を大声で呼ぶ。

どうやら、魔導師のトップの人の名前らしい。呼ばれたその人は、ゆっくりと王様に振り返り

「▲☆○※○△★*」

と何か言って、元の場所に戻って行った。その様子を、ミヤさんは少し睨むように見詰めて居た。

とにかく、話しは全く分からなかったので、元の部屋に戻ってからミヤさん達から聞く事にしたが、どうやら、ゲーム通りの流れになるようだ。

聖女である3人は、これから聖女としての力を使えるように、魔導師達から指導を受ける。その訓練を半年から1年掛けて行い、聖女の力を安定して使えるようになれば、国中の穢れを浄化する旅に出る事になる。旅は穢れの状態にもよるが、だいたい1年から2年程らしい。これで約3年。この3年の間に誰とも恋愛にさえ発展しなければ、召還されたあの日、あの場所に還れると言う事だ。

「とにかく、3年。4人で頑張って乗り切って、4人で一緒に還ろうね!」

「そうだ、ハル。さっき、あの魔導師の人に名前を呼ばれたでしょう?何か…変な感じしなかった?」

「あ、変な感じと言うか…胸がちょっとチクリとしたと言うか…」

「やっぱり!」

そう言って、ミヤさんが腕を組んで眉間に皺を寄せる。

「この世界にはね、名前で相手を縛る魔術があるのよ。」

「名前で縛る?」

「そう。日本でも昔はあったんだけどね。真名で相手を縛るのよ。言いなりにさせるって言うのかな?あの魔導師、その魔術をハルに掛けようとしたのよ。真名で相手を縛るなんて…禁忌に近い筈なのに!」

「えっ!?」

「勿論、"ハル"は真名じゃないし、王様がすぐに止めたから、何ともなかったんだけどね。本当に胸くそ悪いわ。後できっちり抗議してやるわ!」

流石、警察官のミヤさん…。犯罪は駄目ですね。

でも、だから私に本名を言うなって言ってたんだ…。本当に怖い世界だなぁ…。

「自分の名前が言えないとか、呼んでもらえないって寂しいけど、暫くは我慢…ですね?」

「そうね…。でも、日本に還ったらいっぱい呼んであげるわ!」

そう言って、フジさんがギュウギュウと私に抱き付いてくる。

「「あー、フジだけ狡いー!」」

ショウさんとミヤさんが更に抱き付いて来て、4人でギュウギュウと抱き付きあった。

ー巻き込まれた事は辛いけど、一緒に召還された人がこの3人で良かったー

そう思いながら、3人に抱き付いた。



しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈 
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

処理中です...