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第一章
第40話:不本意
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煌びやかに光り輝く大きな部屋の中では、若い男女が飢えた目を光らせている。
高位の王侯貴族令嬢が、俺との婚約が調って余裕の笑みを浮かべているのに対して、全ての若い公子と身分の低い令嬢が焦っている。
その原因は、公妃殿下の流された噂にある。
いや、その後に行われた公王陛下の言動が決定的だった。
俺を追い詰める為なのだろうが、マリアお嬢様の希望で舞踏会から晩餐会になっていた社交が、元の舞踏会に戻ってしまったのだ。
しかも、最初と真ん中と最後の三回、俺にマリアお嬢様と踊れと厳命されたのだ。
噂だけでなく、本当にマリアお嬢様と俺の婚約が整ったと公表したに等しい。
希望や相談されただけならば、断る事も代替案を出す事もできた。
だが、衆目の中で公王陛下から出された命令を断る事などできない。
大陸一の智謀と勇猛を称えられた俺が、今ではアウレリウス・ジェノバ公王家よりも広大な直轄領を持つ俺が、公王陛下に逆らったら内紛を疑われてしまう。
一枚岩だったアウレリウス・ジェノバ公王家の家族関係にひびが入ったと誤解される事は、大陸中に不要な争いを生む事になる。
しかたなく満面の笑顔でマリアお嬢様を踊る事になった。
だがマリアお嬢様と踊るとなると、婚約した他のご令嬢方とも踊らなければ、実家の王家や有力貴族家との関係が悪化してしまう。
幾ら主家とはいえ、マリアお嬢様だけを優遇し過ぎる訳にはいかない。
流石に数が多過ぎて、全員と三度も踊る事はできないが、最低一回は踊らなければ実家の面目を潰すだけではなく、令嬢方に恥をかかせてしまう事になる。
結局、わずかな休息時間以外は舞踏会中踊る羽目に陥ってしまったのだ。
それに、俺が配慮しなければいけないのは婚約者とその実家だけではない。
マリアお嬢様との婚約を目指していた公子達とその実家にも配慮が必要だ。
俺が選ばなかった令嬢方への配慮も当然必要になってくる。
一番いいのは、あぶれた者同士をくっつける事だ。
公王家に集まっている公子や令嬢は、実家の意向で政略結婚を結ぼうとしている。
だったらマリアお嬢様や俺の代わりになるだけのメリットのある相手なら、マリアお嬢様や俺でなくてもいいのだ。
彼らのお世話をする公国の侍従や侍女、小姓に指示をしてカップルを成立させればいいのだが、困った事にそれだけの大役をこなせる側近がとても少ない。
俺は有能な人間の多くを偵察要因として各国に派遣してしまった後だ。
どれほど大切な役目であろうと、マリアお嬢様の護衛を少なくする事などできないし、公王陛下の護衛の数も少なくするわけにはいかない。
最終的に、公妃殿下の侍女のごく一部にやらせるしかなかった。
不本意である、こんな状況になってしまった事は本当に不本意過ぎる。
高位の王侯貴族令嬢が、俺との婚約が調って余裕の笑みを浮かべているのに対して、全ての若い公子と身分の低い令嬢が焦っている。
その原因は、公妃殿下の流された噂にある。
いや、その後に行われた公王陛下の言動が決定的だった。
俺を追い詰める為なのだろうが、マリアお嬢様の希望で舞踏会から晩餐会になっていた社交が、元の舞踏会に戻ってしまったのだ。
しかも、最初と真ん中と最後の三回、俺にマリアお嬢様と踊れと厳命されたのだ。
噂だけでなく、本当にマリアお嬢様と俺の婚約が整ったと公表したに等しい。
希望や相談されただけならば、断る事も代替案を出す事もできた。
だが、衆目の中で公王陛下から出された命令を断る事などできない。
大陸一の智謀と勇猛を称えられた俺が、今ではアウレリウス・ジェノバ公王家よりも広大な直轄領を持つ俺が、公王陛下に逆らったら内紛を疑われてしまう。
一枚岩だったアウレリウス・ジェノバ公王家の家族関係にひびが入ったと誤解される事は、大陸中に不要な争いを生む事になる。
しかたなく満面の笑顔でマリアお嬢様を踊る事になった。
だがマリアお嬢様と踊るとなると、婚約した他のご令嬢方とも踊らなければ、実家の王家や有力貴族家との関係が悪化してしまう。
幾ら主家とはいえ、マリアお嬢様だけを優遇し過ぎる訳にはいかない。
流石に数が多過ぎて、全員と三度も踊る事はできないが、最低一回は踊らなければ実家の面目を潰すだけではなく、令嬢方に恥をかかせてしまう事になる。
結局、わずかな休息時間以外は舞踏会中踊る羽目に陥ってしまったのだ。
それに、俺が配慮しなければいけないのは婚約者とその実家だけではない。
マリアお嬢様との婚約を目指していた公子達とその実家にも配慮が必要だ。
俺が選ばなかった令嬢方への配慮も当然必要になってくる。
一番いいのは、あぶれた者同士をくっつける事だ。
公王家に集まっている公子や令嬢は、実家の意向で政略結婚を結ぼうとしている。
だったらマリアお嬢様や俺の代わりになるだけのメリットのある相手なら、マリアお嬢様や俺でなくてもいいのだ。
彼らのお世話をする公国の侍従や侍女、小姓に指示をしてカップルを成立させればいいのだが、困った事にそれだけの大役をこなせる側近がとても少ない。
俺は有能な人間の多くを偵察要因として各国に派遣してしまった後だ。
どれほど大切な役目であろうと、マリアお嬢様の護衛を少なくする事などできないし、公王陛下の護衛の数も少なくするわけにはいかない。
最終的に、公妃殿下の侍女のごく一部にやらせるしかなかった。
不本意である、こんな状況になってしまった事は本当に不本意過ぎる。
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