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第一章
第39話:憂鬱
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「エドアルド殿下、お茶を御用意させていただきました」
従僕の一人が隠しきれない喜びを浮かべている。
公妃殿下が俺にマリアお嬢様と結婚しろと言ったのを聞いたのだろう。
わずかな期間で噂を広める腕は、流石内政に長けた皇妃殿下といえる。
手段を問わなければ否定の噂を流す事もできるが、公妃殿下や公国の評価を下げるような手法を使いわけにはいかない。
だが、問題はそんな事じゃない。
俺に仕える側近の質が落ちえしまっている事が一番の問題だ。
マリアお嬢様の結婚相手を選ぶために、側近の多くを偵察員として外国に派遣した弊害が、こんな所に出てしまっている。
俺の方針をもっと厳しく伝えておいた方がいい。
「エドアルド殿下、従僕の教育が足りなかった事、心からお詫びいたします。
従僕の指導などと言う些細な事は従僕長にさせますので、屋敷に戻られた時くらいは、しっかりとお休みください」
侍従長が全く表情を変える事なく話しかけてきた。
以前は執事長と呼ばれていたのだが、公王陛下が公子の使用人の中にも侍従を名乗る者を作っておかないと、他国に侮られると厳しく言われたので、他国の者と直接接する役職者で、侍従を名乗れるだけの能力を持つ者に侍従を名乗らせた。
本来なら彼らも偵察要因に送りたかったのだが、著しく増えた領地に派遣しなければいけなかったのと、接待に必要な最低限の人間を確保しなければいけなかった。
しかたなく侍従より少し能力の劣る、侍従候補の従僕達を偵察に送る事になった。
その分、従僕の質が著しく低下してしまっている。
つまり、俺の身の回りの世話をしてくれる者なのに、俺の好みを完璧に把握してくれていない事になる。
従僕長が教育してくれるまでは気に障る時があるだろう。
「分かった、教育は任せよう、だが、休むわけにはいかない。
各地に派遣した者達からの報告書を持ってきてくれ」
「承りました。
ベニート、直ぐに財務長を呼んできてください。
殿下に何時呼ばれても大丈夫なように、既に準備しているはずです」
「はい、承りました、ベニート侍従長」
俺の機嫌を損ね、侍従長から厳しい教育をすると言われたベニートが、震える声で返事をして出て行った。
知識やマナーだけでなく、胆力もないようだ。
昔から公王陛下に友好的だった貴族家の遠縁だから仕方なく雇ったが、幼い頃から厳しく教育されている孤児に比べると、ぜんぜんなっていない。
いつ裏切るか分からない奴を公王陛下に仕えさせるわけにもいかないし、だからといって昔からの友好貴族の面目を潰す事もできないから、そう簡単に解雇するわけにもいかない。
だからこそ侍従長は教育し直すと言ってくれているのだが、一度軍に派遣して性根から鍛え直した方がいいのかもしれない。
貴族家の遠縁を一兵卒にするわけにはいかないから、軍と行動を共にする俺の従僕として、非常時のために鍛えると言う事にしよう。
「侍従長、縁故で召し抱えた連中は全員次の遠征に連れて行く。
数が減った使用人は孤児院から補充してくれ」
従僕の一人が隠しきれない喜びを浮かべている。
公妃殿下が俺にマリアお嬢様と結婚しろと言ったのを聞いたのだろう。
わずかな期間で噂を広める腕は、流石内政に長けた皇妃殿下といえる。
手段を問わなければ否定の噂を流す事もできるが、公妃殿下や公国の評価を下げるような手法を使いわけにはいかない。
だが、問題はそんな事じゃない。
俺に仕える側近の質が落ちえしまっている事が一番の問題だ。
マリアお嬢様の結婚相手を選ぶために、側近の多くを偵察員として外国に派遣した弊害が、こんな所に出てしまっている。
俺の方針をもっと厳しく伝えておいた方がいい。
「エドアルド殿下、従僕の教育が足りなかった事、心からお詫びいたします。
従僕の指導などと言う些細な事は従僕長にさせますので、屋敷に戻られた時くらいは、しっかりとお休みください」
侍従長が全く表情を変える事なく話しかけてきた。
以前は執事長と呼ばれていたのだが、公王陛下が公子の使用人の中にも侍従を名乗る者を作っておかないと、他国に侮られると厳しく言われたので、他国の者と直接接する役職者で、侍従を名乗れるだけの能力を持つ者に侍従を名乗らせた。
本来なら彼らも偵察要因に送りたかったのだが、著しく増えた領地に派遣しなければいけなかったのと、接待に必要な最低限の人間を確保しなければいけなかった。
しかたなく侍従より少し能力の劣る、侍従候補の従僕達を偵察に送る事になった。
その分、従僕の質が著しく低下してしまっている。
つまり、俺の身の回りの世話をしてくれる者なのに、俺の好みを完璧に把握してくれていない事になる。
従僕長が教育してくれるまでは気に障る時があるだろう。
「分かった、教育は任せよう、だが、休むわけにはいかない。
各地に派遣した者達からの報告書を持ってきてくれ」
「承りました。
ベニート、直ぐに財務長を呼んできてください。
殿下に何時呼ばれても大丈夫なように、既に準備しているはずです」
「はい、承りました、ベニート侍従長」
俺の機嫌を損ね、侍従長から厳しい教育をすると言われたベニートが、震える声で返事をして出て行った。
知識やマナーだけでなく、胆力もないようだ。
昔から公王陛下に友好的だった貴族家の遠縁だから仕方なく雇ったが、幼い頃から厳しく教育されている孤児に比べると、ぜんぜんなっていない。
いつ裏切るか分からない奴を公王陛下に仕えさせるわけにもいかないし、だからといって昔からの友好貴族の面目を潰す事もできないから、そう簡単に解雇するわけにもいかない。
だからこそ侍従長は教育し直すと言ってくれているのだが、一度軍に派遣して性根から鍛え直した方がいいのかもしれない。
貴族家の遠縁を一兵卒にするわけにはいかないから、軍と行動を共にする俺の従僕として、非常時のために鍛えると言う事にしよう。
「侍従長、縁故で召し抱えた連中は全員次の遠征に連れて行く。
数が減った使用人は孤児院から補充してくれ」
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