【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

文字の大きさ
121 / 415

54.三年前の約束②(怖さレベル:★★★)

しおりを挟む
どういうことなのかと、再び例の白い塊に目線を戻せば、

(……え、っ?)

ヒュン

ほんのわずか。

またたく間に視界から消えうせたそれは――
肌から髪の毛まで真っ白な、人の頭部のように見えました。

「あ、あんた……あれ……」

見間違いでは決して無い。

窓の枠のところ、じっと覗くようにして存在していたそれは、
どう考えても、普通の人間ではありません。

私は動揺でしどろもどろになりつつ、妹を振り返りました。

ミナコはがくがくと首を上下に揺すりつつ、言葉に迷うようにして、
神妙に呟きました。

「あれ……たぶん、サナちゃん、だと思う」
「……は……?」

サナちゃん。
事故で亡くなった、妹の親友。

それが、すでに葬儀も済ませた後だっていうのに、ここに現れた?

「い、いやいや……ゆ、幽霊だっていうの?」

私の、精一杯の強がりの笑みを、妹は真顔で一蹴しました。

「……お姉ちゃんもわかってるでしょ。ここ、三階だし……あんなところに人は立てないって」

妙に冷静な妹が、たんたんと事実を述べました。

「う……で、でも、どうして? あんた、別に呪われたり、
 恨まれたりするいわれはないじゃない」

今回の事故で、加害者である運転手にとり憑くのであればまだしも、
妹はいっしょに事故に巻き込まれた被害者同士です。

確かに妹は生きて、彼女は亡くなってという理不尽さはありますが、
それは神のみぞ知ることで、ミナコに責任があることではありません。

そんな疑問に、妹は伏せた目をわずかに上げて、グッと下唇を噛みました。

「約束……してて」
「……約束?」
「うん。……二人が離れ離れになっても、ぜったいにまた会おうね、っていう、約束」

離れ離れになっても、会いに来る。

それは、来年卒業を控えた彼女たちにとって、よくあるような内容の、それ。

「あ、会いにって……まさか……」
「こんな……こんなコト起こるなんて、思っても無くて。
 あたしとサナちゃん、大学別々の予定だったから……遠く離れてもまたちょくちょく会おうね、って、
 そういう意味だったんだけど……」

そう言うと、妹は再び床に目を落として、

「……サナちゃんが、ずっと出てきてて。
 こっちに来て、って……一緒に行こう、離れ離れなんてイヤだ、って、ずっと囁いてきて」

と、懺悔のようにつぶやいたのです。

「ずっとって……い、いつから」
「…………。事故にあって、目が覚めた次の日、から」

というと、今日で四日目、ということになります。

妹がやけにボーッとしたり、鬱々としていたのは、
友人の死のショックによるものだけではなく、こんな事実があったなんて。

私はグッと拳を握りしめ、覚悟を決めました。

「……わかった。今はまだ入院中だし、お寺にも神社にも行けないから……
 姉ちゃんか、お母さんが必ずついてるようにする」
「えっ……し、信じてくれるの?」

ミナコは、考え過ぎと笑われるとでも思っていたのか、
目を大きく見開きました。

「信じるもなにも……さっき、見ちゃったしね」

あの僅かな間でサッと引っ込んだ白い顔。

幻覚と言いきるにはタイミングがおかしいし、
妹も見ているのならば、ほぼほぼ間違いありません。

「あんたを死なせるわけにはいかないよ。……事故で亡くなったのはかわいそうだし、
 あちらの家族も辛いと思う。でも……だからといって、あんたを連れていいってわけにはならない」

それに、彼女はお葬式も終わり、
戒名もつけられ、供養もされているはずなのです。

ということは、あれは悪霊にでもなってしまったサナちゃんなのか、
それともそう見せている別の何かなのかもしれません。

「お姉ちゃん……ありがとう……」

半泣きで縋りついてくる妹をあやしつつ、
私はどうすればその友人を成仏させられるか、ジッと考えを巡らせていました。



翌日。

半信半疑の母に、一応は正直に事情を話し、
とりあえず幻かもしれないけれど、
不安がっているから傍を離れないでやって欲しいと念押しをして私は外出していました。

しかし、心当たりなど何一つなく、
友人にそういった方面に詳しい人もおりません。

とりあえず、片っ端から寺か神社を巡って、
お守りの購入と相談に回ることに決め、さっそくスマホで近くの施設を検索することにしました。

「……とり憑かれている、ですか」

幾つか目のある神社。

平日の昼という神社内はひと気があまりなく、
お守り販売の小さな建物にいた若いバイトらしき男性に声をかければ、
少しして、神主さんらしき人を連れてきてくれました。

(よしっ……)

今まで回ってきた三つの神社とお寺では、正直、あまり良い反応を貰えず、
門前払いとまではいかぬものの、お祓いの話一つ受けてもらえなかったため、
私は手ごたえを感じて内心ガッツポーズをしました。

>>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。 2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/6:『まどのそと』の章を追加。2026/1/13の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/5:『おちゃ』の章を追加。2026/1/12の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/4:『かみ』の章を追加。2026/1/11の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

都市伝説レポート

君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。

処理中です...