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第一章

マックスの特技

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<sideアズール>

ルーに内緒で誕生日の準備をしようと、じぃに言われてから僕は何をしようかずっと考えていた。

この世界の僕は、初めての誕生日にルーの隣でたくさんの人にお祝いしてもらって、ルーと一緒に美味しいものを食べて、ルーと一緒にダンスをした。
どれも全部初めてですごく嬉しかったのを覚えている。

二歳の誕生日の時にルーにプレゼントは何かいいかと尋ねられて、僕は前みたいに僕の部屋で一緒に寝て欲しいと頼んだ。

あの時、いつものブランケット以上にいい匂いに包まれてぐっすり眠れたんだよね。
でも次の日のルーはすごく眠そうで、きっと僕の寝相が気になって眠れなかったんだと思う。
だから、僕はそれから一緒に寝たいとは言わなかったけれど、誕生日のプレゼントにならおねだりしてもいいかなと思ったんだ。

二歳になってもしかしたら寝相も良くなっているかも……と期待したけど、翌日は去年より眠そうに見えてちょっと可哀想だったな。

それでも毎年僕の誕生日には僕の部屋で一緒に寝てくれるようになった。
それが僕のプレゼント。

もちろんそれ以外にもルーからたくさんのプレゼントをもらってる。

僕が成長期だからって言って、毎年たくさんの洋服を贈ってくれるし、僕が好きなにんじんやフルーツもたくさん食べさせてくれるし、それから嬉しいのはふわふわのブランケット。

もちろんルーと一緒に寝るほうがずっとずっと嬉しいけど、一緒に寝られない時はいつもブランケットにくるまって寝てる。

ルーのいい匂いがして本当に落ち着くんだ。

今回、ルーがお出かけする前に渡してくれたブランケットはいつも以上にいい匂いがして、ルーと一緒に寝ているくらい安心した。
まぁ、本物のルーにはやっぱり負けるけど。

そんなこんなで僕はいつでもルーにたくさんの贈り物を貰っている。

僕もルーに特別なプレゼントをあげたくて毎年尋ねるけれど、僕からルーのおっきな口にチューするだけでいいんだって。
毎年それしか言わないから、結局その通りにしてきたけど、いつか僕が思い描いていたみたいなお誕生日会がしたいってずっと思っていたんだ。

以前の僕の誕生日は、365日変わらないただの普通の日と同じだった。
ただ昼食にいちごが乗った小さなケーキがつくだけ。
あとは師長さんが『おめでとう』って言ってくれるくらい。
それでも僕には嬉しかった。
誰かが僕の誕生日を覚えていてくれているんだっていうことだけが嬉しかったんだ。

他の子の誕生日には、いつもよりたくさんの人がお見舞いに来て、プレゼントや美味しそうなケーキを食べさせてもらっていたり、病状が軽く比較的動き回れる子どもたちはみんなで集まってゲームをしたり、誕生日の歌を歌ったりして過ごしていたらしい。

僕はそんな彼らの話を聞いて、想像を膨らませてた。

部屋中を可愛い風船でいっぱいにして、誕生日の主役は王冠を載せて、みんなで歌を歌って、ケーキのろうそくをふーって吹き消すんだ。

きっと楽しいだろうな。
ルーは本物の王子さまだから、僕が紙で作った王冠だってすっごく似合いそう!

ケーキは僕は作れないかな?
ルーとよくケーキ屋さんに行くけど、僕が食べきれない分は全部食べてくれるくらい甘いものが好きだから、ルーのために誕生日ケーキを作りたいんだよね。

マクシミリアンが一緒に手伝ってくれたら、なんとか作れないかな?

うん、それは頼んでみようっと!

よーし!
ルーの誕生日のお祝いのためにやりたいことも決まったし、じぃとマックスにちゃんと伝えなくちゃね。


じぃとマックスと一緒にお部屋に入って、じぃからルーのお誕生日に何をしたいのか教えてと言われて僕は

「ぼく……おへやにかざりつけをして、ルーのためになにか、おいしいものをつくりたいなって……」

と答えた。

本当はぷかぷか浮かぶ風船で部屋を綺麗に飾り付けて、お誕生日のうた歌いながら、僕の作ったケーキをルーに食べて欲しいと言いたかったけど、どこまで、どうやって話したらいいかわかんなかった。
僕がやりたいことは以前の僕がやりたかったことだし、それがこの世界で普通になってるのかちょっと気になっちゃったんだ。

だから、難しいかなって聞いてみたいんだけど、じぃは驚いた顔で僕を見つめたまま動かなくなってしまった。

「じぃ? どうしたの?」

「あ、いえ。失礼いたしました。あの、お部屋を飾り付けというのは具体的に何かお考えになっていらっしゃいますか?」

「えっとね、おへやをかわいくできたらいいなって。じぃはなにかしってる?」

「お部屋を、可愛く……そうですね。それなら、マクシミリアンがバロンクンストができますので、アズールさまが作ってみられますか?」

「ばろ、ん……くん、すと?」

その意味がわからなくて、首を傾げながら聞き返すと、なぜかじぃは顔を真っ赤にして、

「マクシミリアン、持っているだろう? アズールさまにお見せするんだ」

とマックスに声をかけた。

マックスは腰につけていた小さな小さなバッグに指を突っ込んだかと思ったら細長い紐みたいなものを取り出した。
そして、それに息をフーッと吹き込んで膨らませると、手で自由自在にねじって形を作って、あっという間に可愛いお花を作った。

「わぁーっ!! すごいっ!! まっくす、おはなができてる!!!」

「騎士団の演習で田舎に行った時に子どもたちを怖がらせないようにするために、こういうものをプレゼントするのですよ」

「これ、ぼくにもできる?」

「そうですね。簡単なものなら作り方を覚えればすぐですよ」

「それじゃあ、ぼく……ルーにそっくりなの、つくりたい!!」

「えっ? 王子にそっくりなものですか?」

「うん。そのほうが、いっぱい。よろこんでくれそう! まっくす、おしえてくれる?」

ルーを喜ばせたい一心でそうお願いすると、今度はマックスが顔を真っ赤にして頷いてくれた。
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