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第9章 外伝2 〜英雄〜

第三百四十五話 少しの疑問

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「かは…ゴホッ…オエ」

嗚咽と共に少し固まった固体と滝の様な涎を垂らしながら、カイトは立ち上がる。

「大丈夫か、メグミ…」

「うん、カイト君こそ」

アリアの重力操作グラビティの力でメグミをカイトの上に落としている為、自然とカイトがメグミを退かす形となる。

「それで、あのメスが兄様の義理の姉」

「ああ、さっきミュウが言っただろ?メグミ•マクラレン、カイトのの力で変わった女だ。」

エイトはアリアにメグミについて改めて説明した、口だけで言うと説得力がないが、こうやって面と向かって言うと現実味が出るからだ。

「好感度アップ?」

「いや、あれは

「え?」

しかしアリアとエルは「何を言っているの?」状態になっていて、エイトは困惑する。

「そうさ…僕はそんな事をしていない。」

まだエイトの蹴りが効いているのだろう、右手で腹を抑える。

「僕の真実の愛によってみんな正気に戻っているだけさ!君の様に洗脳魔法を使って皆を苦しめているわけではない!」

「本当か?」

「いえ、違います。」

「主様が洗脳魔法?ワシ達にそんなものが効くと思っておるのか?」

一応念の為エイトはアリアに聞くが即答された、そしてエルの言う通りで、いくら英雄でも厄災と暗黒神(の片割れだが)の2人にそんな魔法が効くわけない。

「じゃあなんなの?」

「好感度アップだと女神アマスから聞いていましたけど…」

ミュウとシルフィの意見はごもっともだ、ずっと好感度アップだと思っていたのに、実は違うと知れば普通はこうなる。

「ミュウ姉様、シルフィ姉様、今はその話は後でお願いします。」

「うむ、ずっと使鬱陶しいのじゃ…!!」

そう言ってアリアとエルはカイトを睨みつける。

「ん?その子達は?…まさかこのモブの被害者か!?」

「あんな小さな子にまで…許せない…!!」

流石はご都合主義のカイトとそれを信じるメグミ、アリアとエルをエイトに洗脳された被害者だと思い込んでいる。

「君達!君達は騙されているんだ!そんな社会のゴミの側にいてはいけない!僕の所へ来るんだ!」

「大丈夫よ!カイト君は勇者なの!世界を救う正義の味方よ!安心して良いわ!」

カイトとメグミはそう叫んだ後、エイトの方を見てドヤ顔をする、どうやら図星をつかれて動揺しているエイトを見ているらしい。(勿論思い込んでいるだけだが)

「…兄様…殺しても良いですか?」

「主様…彼奴あやつは嫌いじゃ、視界に入るのすら不愉快じゃ…殺す。」

「アリア、エルちゃん、ストップ、アイツを殺すと後が面倒くさい…同感だけど。」

貴族社会で生きていくとなると、勇者と言う肩書きを持っているカイトはとても迷惑な存在なのだ。

殺したらカイトの素性を知っていようとも宗教団体などが黙っていないだろうし、勇者を絶対正義だと思い込んでいる王族達にどんな目に遭うかわからない。

エイトが厄災を倒し、勇者カイトよりも利点があると思わせないと容易に裁けないのだ、それが世の中と言うものだ。

「それに…メグミだけなのが不思議なんだ、アイとサユリはどうした?」

「別行動をしているだけでしょ?」

と、エイトの質問にミュウが答える。
「まぁ、そうだよな」とエイトは言って剣を顕現けんげんさせる。

「村の中で戦うのは村人の迷惑だ…外に出て決着をつけるぞ?」

と、エイトは提案する。

「へぇ、モブの癖にイキんなよwま、どうせ僕が勝つから良いけどw」

「うっかり殺しちゃったら…許してね♪」

カイトとメグミも言い方はムカつくが良心はあるらしく了承してくれた。

「黙れアバズレ」「殺すぞ牝豚」
「兄様を愚弄するなゴミ虫」
「主様に変わってワシが殺す」

ミュウ達はハイライトをオフにして、メグミ達に対して、ドス黒い殺気を込める。

「…絶対に殺すなよ?死なない程度に痛めつけろよ?」

と、エイトもゲスな事を言いながら村の外へと向かって行った。

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アリアとエルも徐々にミュウ達みたいになっている…

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