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序章 新天地と仲間との出会い
1話 新天地を目指して
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「くしゅん!」
大きな体で朱色の肌に白髪の鬼がくしゃみをした。
自分のくしゃみではっと目を覚ました。
「随分な図体の割に可愛いくしゃみね。」
「おや、冷えましたかな?」
声がした方に視線を向ける。
馬車の手綱を引く御者の麦わら帽子の親父と荷台の荷物の中に納まるように座る肩当てのついたレザージャケットの女性が視界に映る。
俺たち3人は昨日の朝からランダバウト辺境伯領の農村、カルタ村から『ギルダナ』と呼ばれる領主屋敷もある大きな街へと幌馬車で移動していた。
俺の旅の目的地だ。
遠い東の国『九孫』から半年以上の時間をかけてようやく間近まで来ることができた。
「なんだろうな、寒かった気がしたんだが別になんともないぞ。」
御者のおやじの質問に答える。
季節は春の真っ只中、森の中の街道にはやわらかい陽射しが入り暖かい。
「全く一応護衛として乗ってんだからもっとシャキッとしなさいよ。」
さっきから嫌味を言ってくるのはもう1人の女性、名前はリザベル、傭兵のワーカーなんだそうだ。
ワーカーというのは仕事を斡旋してくれるギルドと呼ばれる施設を利用して仕事をする者達のことを言う。
「まあまあ、リザベルさん、私もずっと行商やってますけどここ数年は街道での強い魔物や盗賊の噂も全く聞きませんし平和なもんですよ。兵士の方々の巡回もありますしね。」
「そうは言うけど何かあった時のために私たちが乗ってるんだから用心に越したことはないですよ。」
「リザベルさんは真面目ですねー」
「ふふ、また依頼する時は声かけてくださいね。」
営業に余念がないな。
定期的に仕事をくれる存在は傭兵にとっては大事なものだ。
そういう意味でもリザベルは真面目に傭兵稼業をしているとも言える。
そんな事を考えながら馬車の外を見る。
昨日出発した時からずっと森の中の街道を進み景色の変化はほとんどない。
さっきの夢久しぶりに見たな。
俺の苦い記憶。
全てを失った日の光景。
結局あの後は姉ちゃんに助けられ転移魔法で知らない遠い場所に逃がされた。
「もう少し行った先のカーブを曲がれば森を抜けて平原に出ます。そしたらギルダナの街も見えますよ。」
永遠に続いた森の景色に嫌気がさし、夢見の悪さに悲観的になる中言われた御者のおやじの言葉で少し期待感が高まる。そして道の先に意識を向けた。
ふと違和感を覚える。
森の中にいる人の気配、採取をする物達とはまた違う、街道に意識を向けて潜み隠れる者の気配だ。
「おやじ、カーブの手前で止まってくれ、怪し奴が潜んでる。」
「ええ!?ほんとですか!どっどうしましょう」
明らかにこういう事には慣れていないであろう反応とは対象的に俺の言葉で気を引き締めるリザベル。
「ねえ、ほんとなの?なんでわかるの?」
「ああ、しっかり気配がある、隠しきれていないからシロウトだが10人いるぞ。」
リザベルは納得はしていない様子だが手早く防具の確認と武器の支度をしている。
程なく馬車はカーブの手前まで来て止まった。
「急に止まったから警戒が強くなっているな、リザベルは馬車周囲を守ってくれ、俺は挨拶してくる。手に余るようだったら逃げろって叫ぶから駆け抜けてくれ。それぐらいの猶予は稼ぐ」
「わかった、気をつけて。」
「おう!」
なんだ、心配してくれるだなんて優しいじゃないか。
手に余るかもとは言ったが、気配の強さや状態からして全く手こずる相手ではないと分かっている。
退屈凌ぎには丁度いいだろう。
馬車の荷台から降りて街道のカーブまで歩く。
「おーい!隠れてるのはわかってるんだ!
通らせてもらってもいいかー?」
返事を待つ。
・・・
「いいわけねーだろー!!」
おお!元気ないい返事!
大きな体で朱色の肌に白髪の鬼がくしゃみをした。
自分のくしゃみではっと目を覚ました。
「随分な図体の割に可愛いくしゃみね。」
「おや、冷えましたかな?」
声がした方に視線を向ける。
馬車の手綱を引く御者の麦わら帽子の親父と荷台の荷物の中に納まるように座る肩当てのついたレザージャケットの女性が視界に映る。
俺たち3人は昨日の朝からランダバウト辺境伯領の農村、カルタ村から『ギルダナ』と呼ばれる領主屋敷もある大きな街へと幌馬車で移動していた。
俺の旅の目的地だ。
遠い東の国『九孫』から半年以上の時間をかけてようやく間近まで来ることができた。
「なんだろうな、寒かった気がしたんだが別になんともないぞ。」
御者のおやじの質問に答える。
季節は春の真っ只中、森の中の街道にはやわらかい陽射しが入り暖かい。
「全く一応護衛として乗ってんだからもっとシャキッとしなさいよ。」
さっきから嫌味を言ってくるのはもう1人の女性、名前はリザベル、傭兵のワーカーなんだそうだ。
ワーカーというのは仕事を斡旋してくれるギルドと呼ばれる施設を利用して仕事をする者達のことを言う。
「まあまあ、リザベルさん、私もずっと行商やってますけどここ数年は街道での強い魔物や盗賊の噂も全く聞きませんし平和なもんですよ。兵士の方々の巡回もありますしね。」
「そうは言うけど何かあった時のために私たちが乗ってるんだから用心に越したことはないですよ。」
「リザベルさんは真面目ですねー」
「ふふ、また依頼する時は声かけてくださいね。」
営業に余念がないな。
定期的に仕事をくれる存在は傭兵にとっては大事なものだ。
そういう意味でもリザベルは真面目に傭兵稼業をしているとも言える。
そんな事を考えながら馬車の外を見る。
昨日出発した時からずっと森の中の街道を進み景色の変化はほとんどない。
さっきの夢久しぶりに見たな。
俺の苦い記憶。
全てを失った日の光景。
結局あの後は姉ちゃんに助けられ転移魔法で知らない遠い場所に逃がされた。
「もう少し行った先のカーブを曲がれば森を抜けて平原に出ます。そしたらギルダナの街も見えますよ。」
永遠に続いた森の景色に嫌気がさし、夢見の悪さに悲観的になる中言われた御者のおやじの言葉で少し期待感が高まる。そして道の先に意識を向けた。
ふと違和感を覚える。
森の中にいる人の気配、採取をする物達とはまた違う、街道に意識を向けて潜み隠れる者の気配だ。
「おやじ、カーブの手前で止まってくれ、怪し奴が潜んでる。」
「ええ!?ほんとですか!どっどうしましょう」
明らかにこういう事には慣れていないであろう反応とは対象的に俺の言葉で気を引き締めるリザベル。
「ねえ、ほんとなの?なんでわかるの?」
「ああ、しっかり気配がある、隠しきれていないからシロウトだが10人いるぞ。」
リザベルは納得はしていない様子だが手早く防具の確認と武器の支度をしている。
程なく馬車はカーブの手前まで来て止まった。
「急に止まったから警戒が強くなっているな、リザベルは馬車周囲を守ってくれ、俺は挨拶してくる。手に余るようだったら逃げろって叫ぶから駆け抜けてくれ。それぐらいの猶予は稼ぐ」
「わかった、気をつけて。」
「おう!」
なんだ、心配してくれるだなんて優しいじゃないか。
手に余るかもとは言ったが、気配の強さや状態からして全く手こずる相手ではないと分かっている。
退屈凌ぎには丁度いいだろう。
馬車の荷台から降りて街道のカーブまで歩く。
「おーい!隠れてるのはわかってるんだ!
通らせてもらってもいいかー?」
返事を待つ。
・・・
「いいわけねーだろー!!」
おお!元気ないい返事!
応援ありがとうございます!
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