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205:クランの加入希望者
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「お入りなさい」
レイラさんが部屋に備え付けのボタンのような物を押すと、暫くして部屋がノックされマリアさんが入ってきた。
クラン加入希望者の人を案内してきたのだろうと、ギルド長が推薦するくらいだから、どんな人が現れるのかと期待と不安を抱えながら待っていたのだが……
「あら~、誰もいないわね~」
ふよふよとドアの外を好奇心旺盛なフィーネが覗き込んでいる。しかし、誰も入ってこないままドアが閉じられた。
「紹介するまでもないわね。マリアよ……知ってると思うけど【氷雪】の二つ名持ちの元……いえ、今は復帰したから現役の二つ羽の探索者よ」
まさか参加希望者がマリアさんとは思っていなかったので、驚きで僕はソファーで固まってしまったのだった。
◻ ◼ ◻
「つまり、ギルドからのお目付け役という事かしら~」
開口一番にフィーネがそう言うのも無理はなかった。エルフィーデ肝いりのクランにギルド職員を加入させようというのだ。そう考えるのが自然だった。
マリアさんを疑うつもりではないが、残念ながらギルド長は政治的な配慮が必要な立場だ。敵ではないが完全に信用までは出来ない。
「まあ、今までの話を含めても疑うのは当然よね。あまり吹聴されると困るのだけどあなた達には説明しないとね……実は先日の対策会議でマリアを領軍へ編入するべきではないかという意見がでたのよ」
レイラさんが、少し表情を改めてそう言った。ガザフ上層部での会議の内容は、そう簡単に公表して良いものではないのだろうと思われた。
「まあ、あの実力ならそういう意見も出るでしょうね。あの魔法だと戦術級魔法といっても良いレベルよね」
自分の世界から戻ってきたサラが、頷きながら一人納得している。
「戦術級魔法?」
博識だったじいちゃんに、厳しく教育を受けた僕も、聞いた事のない言葉だった。
「うーん、簡単に言うと、この前みたいな、大規模な戦いの流れを一撃で変えてしまうような魔法の事ね」
サラが少し自慢気に説明してくれた。確かにゴブリンジェネラルの召喚した大規模な群れを【氷雪】の一撃で半壊状態にまで追い込んでいた。あの戦いの要所でマリアさんの大規模な魔法は、確かに戦いの流れを変えていたと思う。
「凄いですね。マリアさん! 戦術魔法だなんて」
僕の無邪気な称賛に、
「いえ、それほどの事は……私よりもユーリさんの方が凄いですよ。あの土魔法は脅威的なレベルです。戦術魔法……いえ戦略魔法級の価値が……」
マリアさんが珍しく、少し興奮ぎみにそう言った。無表情だったけど……
「つまり! マリアをもっと成長させて【氷雪】の威力と使用回数の上限を上げるべきで、その最も効率の良い方法が領軍と共にダンジョンに潜る事って意見ね……全く忌々しい」
話が違う方向に向かいそうになるのを無理やり引き戻した。レイラさんは、マリアさんを領軍に入れたくないのだろう。まあ普通に考えれば、優秀な職員を引き抜かれて面白い筈はないだろう。
「もし正式に話が来ても、ギルドからの派遣という形で折り合いをつけようかと考えていたのよね、さすがに今の状況で完全に拒絶するのは難しそうだし……だけど」
レイラさんはそう言って、マリアさんの方を見た。
「……私が、ユーリさん達と探索者として、もう一度、階層攻略に挑みたいと申し上げたのです」
マリアさんは、そう言うと僕の顔を無表情に見つめてきたのだった。
レイラさんが部屋に備え付けのボタンのような物を押すと、暫くして部屋がノックされマリアさんが入ってきた。
クラン加入希望者の人を案内してきたのだろうと、ギルド長が推薦するくらいだから、どんな人が現れるのかと期待と不安を抱えながら待っていたのだが……
「あら~、誰もいないわね~」
ふよふよとドアの外を好奇心旺盛なフィーネが覗き込んでいる。しかし、誰も入ってこないままドアが閉じられた。
「紹介するまでもないわね。マリアよ……知ってると思うけど【氷雪】の二つ名持ちの元……いえ、今は復帰したから現役の二つ羽の探索者よ」
まさか参加希望者がマリアさんとは思っていなかったので、驚きで僕はソファーで固まってしまったのだった。
◻ ◼ ◻
「つまり、ギルドからのお目付け役という事かしら~」
開口一番にフィーネがそう言うのも無理はなかった。エルフィーデ肝いりのクランにギルド職員を加入させようというのだ。そう考えるのが自然だった。
マリアさんを疑うつもりではないが、残念ながらギルド長は政治的な配慮が必要な立場だ。敵ではないが完全に信用までは出来ない。
「まあ、今までの話を含めても疑うのは当然よね。あまり吹聴されると困るのだけどあなた達には説明しないとね……実は先日の対策会議でマリアを領軍へ編入するべきではないかという意見がでたのよ」
レイラさんが、少し表情を改めてそう言った。ガザフ上層部での会議の内容は、そう簡単に公表して良いものではないのだろうと思われた。
「まあ、あの実力ならそういう意見も出るでしょうね。あの魔法だと戦術級魔法といっても良いレベルよね」
自分の世界から戻ってきたサラが、頷きながら一人納得している。
「戦術級魔法?」
博識だったじいちゃんに、厳しく教育を受けた僕も、聞いた事のない言葉だった。
「うーん、簡単に言うと、この前みたいな、大規模な戦いの流れを一撃で変えてしまうような魔法の事ね」
サラが少し自慢気に説明してくれた。確かにゴブリンジェネラルの召喚した大規模な群れを【氷雪】の一撃で半壊状態にまで追い込んでいた。あの戦いの要所でマリアさんの大規模な魔法は、確かに戦いの流れを変えていたと思う。
「凄いですね。マリアさん! 戦術魔法だなんて」
僕の無邪気な称賛に、
「いえ、それほどの事は……私よりもユーリさんの方が凄いですよ。あの土魔法は脅威的なレベルです。戦術魔法……いえ戦略魔法級の価値が……」
マリアさんが珍しく、少し興奮ぎみにそう言った。無表情だったけど……
「つまり! マリアをもっと成長させて【氷雪】の威力と使用回数の上限を上げるべきで、その最も効率の良い方法が領軍と共にダンジョンに潜る事って意見ね……全く忌々しい」
話が違う方向に向かいそうになるのを無理やり引き戻した。レイラさんは、マリアさんを領軍に入れたくないのだろう。まあ普通に考えれば、優秀な職員を引き抜かれて面白い筈はないだろう。
「もし正式に話が来ても、ギルドからの派遣という形で折り合いをつけようかと考えていたのよね、さすがに今の状況で完全に拒絶するのは難しそうだし……だけど」
レイラさんはそう言って、マリアさんの方を見た。
「……私が、ユーリさん達と探索者として、もう一度、階層攻略に挑みたいと申し上げたのです」
マリアさんは、そう言うと僕の顔を無表情に見つめてきたのだった。
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