206 / 213
206:噂と孤児院の子供達
しおりを挟む
クラン加入の件は、一旦保留して僕とサラは探索者ギルドを出る事にした。
ギルド内では既にマリアさんが、ギルドの受付を辞め探索者に復帰するという噂が広まっていて、領軍への派遣を拒否した事で、探索者ギルドに居辛くなったらしいという事情までも真しやかに語られているようだ。
「何だが情報の拡散が速すぎるわね~……領軍と彼女を守り切れなかった探索者ギルドに非難が集まってるみたい。それから大手クランが彼女の獲得を狙っているという噂ね……さすが二つ名持ち、ギルド内は彼女の去就の噂で持ちきりのようよ~」
ギルド内が噂でざわついているのを気にしたフィーネが、ふよふよと姿を消して潜入調査した結果を教えてくれた。好奇心旺盛な精霊らしいの行為だったが、その高い情報収集力は頼りになった。
「明らかにギルド側がわざと情報を漏らしてるようね。リサ姉さんも会議には出席していた筈だから、意見を聞いた方が良いわね。まだ十層の遺跡拠点にいる筈だから……それに渡したい物もあるらしいわよ」
サラ経由で、近いうちにエルフィーデの査察団は、十層の遺跡の拠点管理をガザフ側に引き継ぎ、エルフィーデより伴ってきた施設部隊のみを連れ二十層の遺跡に向かう予定らしい。
魔人の襲来等という突発的な出来事があったにも関わらず、予定より早くガザフへの引き継ぎが可能になったのは、ニースと僕のお陰だと喜んでいるそうだ。
「そうだね。色々な事があって混乱してるよ……リサさんならミリアさんの意図も正確に把握してるだろうし……」
僕も共に戦ったリサさんなら助言を貰うのに最適な相手だと考えていた。
「……ミリア様の意図か……姉さんにも完全には……まあ良いわ。とにかく急ぎましょ!」
僕はサラと頷き会うと、早速、ダンジョン入り口に向かって走り出したのだった。
◻ ◼ ◻
一層の転移拠点の遺跡に向かう途中、ウサギ狩りをする孤児院の子供達の姿が見えた。以前、キャロ達四人が使っていた盾と貫頭衣姿だった。
だがあの時と違うのは子供達の手に短杖が握られていた事だった。そして倒した獲物をポーチに仕舞う様子も見えた。
今回の魔人騒動でキャロ達四人は報酬としてファングボアの装備と今回の戦いで使った装備一式を受け取っていた。
そして、様々な面で貢献した四人の有能さと、エルフィーデ孤児院の教育水準の高さを評価したギルドが、ダンジョンで活動する子供に対して装備面での支援を約束したのだ。
ある意味、自立を促しているだけとも取れたが、ギルドと孤児院の双方にメリットがあるので、孤児院の改善が進んだ事に、僕は素直に喜んでいた。
「ユーリさん! 今からですか?」
子供達の側で、狩りの様子を見ていたラルフさんだった。
「ええ、十層の遺跡拠点に用事です!」
僕の返答に「お二人ともお気をつけて」と手をあげて、明るい笑顔で答えてくれた。僕は、ラルフさんに軽く会釈すると、サラに促され転移拠点に急いだ。
ラルフさんは、孤児院での療養の後、サラが使っていた部屋に移っていた。今は院長先生に頼まれて孤児院の手伝いをしているらしい。大人の少ない孤児院で男手が増えて喜ばれているそうだ。
子供達の狩りの様子を見ているのも、その一環だろうと思われた。
「居場所が出来て喜んでいるわよ……ラルフも」
前を歩くサラが、ボソッと呟くと早足で歩いていく。フィーネが何かサラに言ったようで、二人がまたじゃれあっているようだ。
「そうだね、僕も嬉しいよ」
僕はラルフさんの笑顔を思い出し、明るい気分になると見えてきた転移拠点の入り口に入ったのだった。
ギルド内では既にマリアさんが、ギルドの受付を辞め探索者に復帰するという噂が広まっていて、領軍への派遣を拒否した事で、探索者ギルドに居辛くなったらしいという事情までも真しやかに語られているようだ。
「何だが情報の拡散が速すぎるわね~……領軍と彼女を守り切れなかった探索者ギルドに非難が集まってるみたい。それから大手クランが彼女の獲得を狙っているという噂ね……さすが二つ名持ち、ギルド内は彼女の去就の噂で持ちきりのようよ~」
ギルド内が噂でざわついているのを気にしたフィーネが、ふよふよと姿を消して潜入調査した結果を教えてくれた。好奇心旺盛な精霊らしいの行為だったが、その高い情報収集力は頼りになった。
「明らかにギルド側がわざと情報を漏らしてるようね。リサ姉さんも会議には出席していた筈だから、意見を聞いた方が良いわね。まだ十層の遺跡拠点にいる筈だから……それに渡したい物もあるらしいわよ」
サラ経由で、近いうちにエルフィーデの査察団は、十層の遺跡の拠点管理をガザフ側に引き継ぎ、エルフィーデより伴ってきた施設部隊のみを連れ二十層の遺跡に向かう予定らしい。
魔人の襲来等という突発的な出来事があったにも関わらず、予定より早くガザフへの引き継ぎが可能になったのは、ニースと僕のお陰だと喜んでいるそうだ。
「そうだね。色々な事があって混乱してるよ……リサさんならミリアさんの意図も正確に把握してるだろうし……」
僕も共に戦ったリサさんなら助言を貰うのに最適な相手だと考えていた。
「……ミリア様の意図か……姉さんにも完全には……まあ良いわ。とにかく急ぎましょ!」
僕はサラと頷き会うと、早速、ダンジョン入り口に向かって走り出したのだった。
◻ ◼ ◻
一層の転移拠点の遺跡に向かう途中、ウサギ狩りをする孤児院の子供達の姿が見えた。以前、キャロ達四人が使っていた盾と貫頭衣姿だった。
だがあの時と違うのは子供達の手に短杖が握られていた事だった。そして倒した獲物をポーチに仕舞う様子も見えた。
今回の魔人騒動でキャロ達四人は報酬としてファングボアの装備と今回の戦いで使った装備一式を受け取っていた。
そして、様々な面で貢献した四人の有能さと、エルフィーデ孤児院の教育水準の高さを評価したギルドが、ダンジョンで活動する子供に対して装備面での支援を約束したのだ。
ある意味、自立を促しているだけとも取れたが、ギルドと孤児院の双方にメリットがあるので、孤児院の改善が進んだ事に、僕は素直に喜んでいた。
「ユーリさん! 今からですか?」
子供達の側で、狩りの様子を見ていたラルフさんだった。
「ええ、十層の遺跡拠点に用事です!」
僕の返答に「お二人ともお気をつけて」と手をあげて、明るい笑顔で答えてくれた。僕は、ラルフさんに軽く会釈すると、サラに促され転移拠点に急いだ。
ラルフさんは、孤児院での療養の後、サラが使っていた部屋に移っていた。今は院長先生に頼まれて孤児院の手伝いをしているらしい。大人の少ない孤児院で男手が増えて喜ばれているそうだ。
子供達の狩りの様子を見ているのも、その一環だろうと思われた。
「居場所が出来て喜んでいるわよ……ラルフも」
前を歩くサラが、ボソッと呟くと早足で歩いていく。フィーネが何かサラに言ったようで、二人がまたじゃれあっているようだ。
「そうだね、僕も嬉しいよ」
僕はラルフさんの笑顔を思い出し、明るい気分になると見えてきた転移拠点の入り口に入ったのだった。
0
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。


転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる