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第一章
恥ずかしすぎる
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「明日から留学なんだから、リリーも帰らないといけないし、離しなさい」
と、アイシャが、ラルフをにらむ。
そうか、もう明日には出発か…。
なんて、しんみりする暇もないくらい、バタバタの前日だね。帰ったら、すぐに寝なきゃ!
その時、次の音楽がなり始めた。すぐに出ないと、踊る人たちの邪魔になる。
「ほら、ラルフ。いったん、ここから出よう」
ラルフにおさえられたまま、歩き出そうとしたところ、
「痛っ…」
足に痛みがはしった。
「どうしたの、リリー?!」
と、アイシャが声をあげる。
「あ、大丈夫。ただの靴ずれ…」
と、言いかけたところで、いきなり私の体が宙に浮いた。
…え?! なにが起きてるの?!
あちこちで悲鳴があがる。
私、今、ラルフに抱きかかえられてるの?!
「いやいやいや、ちょっと、ラルフ?! 落ち着いて?! 私、ただの靴ずれだよ?!」
と、焦りまくって、ラルフに言う。
が、ラルフは、
「しっかりつかまってろ」
そう言って、歩き出した。
おっと、危ない。
落ちたらまずいので、仕方なく、ラルフの首に両手をまわした。
が、これって、前世でいうところの「お姫様だっこ」だよね?!
まさか、自分がされる日がやってこようとは…。
「ラルフ君が、大胆すぎて笑える。ここ王宮だよ? 明日には王都中の噂になるよね?」
笑い転げながら、ついてくるロイさん。
「こじらせまくってたと思ったら、今度はぐいぐい、押しすぎだわ?! バカなの? バカなのね! ともかく、少しは遠慮しなさいよ!」
いらいらした口調で毒を吐きながら、ついてくるアイシャ。
「おまえら、うるさい!」
冷え切った口調で一喝するラルフ。
そして、私たちが動くたび、悲鳴や視線、ざわめきがすごい。
「ちょっと、恥ずかしいから、おろして」
ラルフに小声で言うが、
「気にするな」
と、ラルフ。
いやいや、気にするよ!
そして、連れてこられたのは休憩室。
そこで、やっと、長椅子におろされた。
溺愛モノで憧れた、前世もあわせて、人生初の「お姫様だっこ」は、羞恥の中で終わった…。
靴ずれの痛みなんかよりも、恥ずかしすぎて、心のほうが痛い…。
が、こんなところまで私を運ぶほど、ラルフって力があるんだね。
ラルフが、ロイさんに、
「靴ずれの治療をしてくれるメイドを呼んできてくれ。至急だ」
と、命令している。
ええと、ロイさんって、ラルフの部下なの?
「人使いが荒いんだから、ラルフは」
「あ、ロイさん。たいしたことないから、治療してくれなくて大丈夫ですよ」
と、私が言うと、
「ダメダメ。治療させて。じゃないと、俺、ラルフに殺されるから…。リリーちゃんは、ちょっと、ここでゆっくりしてて。今日は無理言って来てもらったんだから、何か食べるものも運んでくるね。おなかすいたでしょ」
あ、おなか…。すきすぎて、忘れてた!
「アイシャもラルフも、どうせ、リリーちゃんから離れないんでしょ。三人分運んでくるから、待ってて」
そう言って、ロイさんが部屋を出て行った。
「私は大丈夫だから、二人ともパーティーのほうへ戻っていいよ」
と、私が言うと、
「リリーが来るからきただけだから、何の用もないわ。だから、ここにいる」
と、アイシャ。
「俺もだ」
と、ラルフ。
なんだろう…。またもや、二人の過保護っぷりが加速している気がするけど、一人でいても暇だし甘えるかな。
「そうだ、アイシャ。このドレスと靴、借りてたよね。でも、靴ずれで血が少しついたかもしれないから、買い取るって、ルーニーさんに伝えといてね」
と言った瞬間、
「ドレスも買い取る」
と、ラルフが言った。
思ってもみなかった発言に、思わず、
「…え? ラルフ、着るの?!」
と、びっくりして言った。
「そんなわけないだろ!」
「そうだよねー! びっくりした…。じゃあ、なんで買い取るの?」
私が聞くと、
「リリーに、また着てほしいから。今度は、俺のために」
と、真剣な顔で私を見て言った。
…は?! なに、その甘い感じ…。
「なんか、今日、ラルフがおかしすぎる…」
思わずつぶやくと、
「ほんとよね? なんなの、一体? 振り切りすぎでしょ? 明日からリリーがいないからって、焦りすぎ。ドレスは私が買い取ることにしてるから、ラルフには渡さない。留学先で着てもらうから。残念でした」
と、一気にまくしたてたアイシャ。
なんで、みんな、このドレスを買い取りたがるの?!
と、アイシャが、ラルフをにらむ。
そうか、もう明日には出発か…。
なんて、しんみりする暇もないくらい、バタバタの前日だね。帰ったら、すぐに寝なきゃ!
その時、次の音楽がなり始めた。すぐに出ないと、踊る人たちの邪魔になる。
「ほら、ラルフ。いったん、ここから出よう」
ラルフにおさえられたまま、歩き出そうとしたところ、
「痛っ…」
足に痛みがはしった。
「どうしたの、リリー?!」
と、アイシャが声をあげる。
「あ、大丈夫。ただの靴ずれ…」
と、言いかけたところで、いきなり私の体が宙に浮いた。
…え?! なにが起きてるの?!
あちこちで悲鳴があがる。
私、今、ラルフに抱きかかえられてるの?!
「いやいやいや、ちょっと、ラルフ?! 落ち着いて?! 私、ただの靴ずれだよ?!」
と、焦りまくって、ラルフに言う。
が、ラルフは、
「しっかりつかまってろ」
そう言って、歩き出した。
おっと、危ない。
落ちたらまずいので、仕方なく、ラルフの首に両手をまわした。
が、これって、前世でいうところの「お姫様だっこ」だよね?!
まさか、自分がされる日がやってこようとは…。
「ラルフ君が、大胆すぎて笑える。ここ王宮だよ? 明日には王都中の噂になるよね?」
笑い転げながら、ついてくるロイさん。
「こじらせまくってたと思ったら、今度はぐいぐい、押しすぎだわ?! バカなの? バカなのね! ともかく、少しは遠慮しなさいよ!」
いらいらした口調で毒を吐きながら、ついてくるアイシャ。
「おまえら、うるさい!」
冷え切った口調で一喝するラルフ。
そして、私たちが動くたび、悲鳴や視線、ざわめきがすごい。
「ちょっと、恥ずかしいから、おろして」
ラルフに小声で言うが、
「気にするな」
と、ラルフ。
いやいや、気にするよ!
そして、連れてこられたのは休憩室。
そこで、やっと、長椅子におろされた。
溺愛モノで憧れた、前世もあわせて、人生初の「お姫様だっこ」は、羞恥の中で終わった…。
靴ずれの痛みなんかよりも、恥ずかしすぎて、心のほうが痛い…。
が、こんなところまで私を運ぶほど、ラルフって力があるんだね。
ラルフが、ロイさんに、
「靴ずれの治療をしてくれるメイドを呼んできてくれ。至急だ」
と、命令している。
ええと、ロイさんって、ラルフの部下なの?
「人使いが荒いんだから、ラルフは」
「あ、ロイさん。たいしたことないから、治療してくれなくて大丈夫ですよ」
と、私が言うと、
「ダメダメ。治療させて。じゃないと、俺、ラルフに殺されるから…。リリーちゃんは、ちょっと、ここでゆっくりしてて。今日は無理言って来てもらったんだから、何か食べるものも運んでくるね。おなかすいたでしょ」
あ、おなか…。すきすぎて、忘れてた!
「アイシャもラルフも、どうせ、リリーちゃんから離れないんでしょ。三人分運んでくるから、待ってて」
そう言って、ロイさんが部屋を出て行った。
「私は大丈夫だから、二人ともパーティーのほうへ戻っていいよ」
と、私が言うと、
「リリーが来るからきただけだから、何の用もないわ。だから、ここにいる」
と、アイシャ。
「俺もだ」
と、ラルフ。
なんだろう…。またもや、二人の過保護っぷりが加速している気がするけど、一人でいても暇だし甘えるかな。
「そうだ、アイシャ。このドレスと靴、借りてたよね。でも、靴ずれで血が少しついたかもしれないから、買い取るって、ルーニーさんに伝えといてね」
と言った瞬間、
「ドレスも買い取る」
と、ラルフが言った。
思ってもみなかった発言に、思わず、
「…え? ラルフ、着るの?!」
と、びっくりして言った。
「そんなわけないだろ!」
「そうだよねー! びっくりした…。じゃあ、なんで買い取るの?」
私が聞くと、
「リリーに、また着てほしいから。今度は、俺のために」
と、真剣な顔で私を見て言った。
…は?! なに、その甘い感じ…。
「なんか、今日、ラルフがおかしすぎる…」
思わずつぶやくと、
「ほんとよね? なんなの、一体? 振り切りすぎでしょ? 明日からリリーがいないからって、焦りすぎ。ドレスは私が買い取ることにしてるから、ラルフには渡さない。留学先で着てもらうから。残念でした」
と、一気にまくしたてたアイシャ。
なんで、みんな、このドレスを買い取りたがるの?!
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