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第一章
どうしたの?! ラルフ!
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いざ、踊り始めると、足元がいきなりふらついた。
断じて言い訳ではないけど、履いたことがないほど、高いヒールのせいだ!
と、思ったら、ぐっとラルフに体を引き寄せられた。
「え?! なに?」
びっくりして、ラルフを見上げると、
「踊りにくいんだろ、その靴。俺に体を預けろ」
と、耳元でささやく。
「その心遣いはありがたいよ、ラルフ。…だけど、近い! 近すぎる!」
私は、焦りまくって小声で言う。
顔がどんどん熱くなる。
だって、ほら、今、私、ドレスでしょ。
しかも、大人っぽくて、普段より明らかに露出が多いドレスだ。
こんなに接近したら、ラルフの体温が直に伝わってくる。
私の鼓動も早くなり、ドキドキを通り越して、もはや異常なくらいなんだけど…。
倒れずに踊れるんだろうか…。
が、こんなに焦っている私を至近距離で、楽しそうに見つめるラルフ。
「なんか、ラルフがすごい余裕だから腹立ってきた」
と、私はラルフに理不尽な文句を言った。
すると、ラルフは、妖し気な笑みを浮かべて、突然、お互いの頬がふれそうなほど顔を近づけてきた。
そして、耳元で、
「余裕なんか微塵もない。リリーが関わると、俺はいつだって余裕がなくなる」
と、ささやいた。
ええっ?!
思わず、ラルフの顔を見ると、エメラルド色の瞳が燃えるように揺らめいている。
ゾクッとした。
ラルフが知らない人のように思えて、無意識に体をラルフから離そうとした。
が、すぐさま、ぐいっと、もっとラルフの方へと引き寄せられらた。
もう、これって、抱きしめられているみたいじゃない?!
私の心臓の鼓動が、ラルフに聞こえそう!
ダンスというより、ラルフに抱きしめながら、ゆらゆらと動いているだけの私。
恥ずかしすぎて、死ねる…。曲が止まったら、ダッシュで走り去りたい。
涙目でラルフを見上げると、ラルフが、
「…ダメだ。リリーと離れたくない…」
と、つぶやいた。
え?! なに、その甘いセリフは?! 溺愛ヒーローみたいなセリフだよ?!
もしや、どこか具合が悪いの?!
「大丈夫、ラルフ?」
私が聞く。
「大丈夫じゃない。なあ、リリー。留学やめないか?」
「いやいや、無理だよ。それに、たった三か月だよ?」
「長い。そんなに離れていられない」
甘さをはらんだ目で、私に言った。
は?! 本当にどうした、ラルフ?!
と、思ったら、
「行くなよ、リリー」
ラルフが、しぼりだすように言った。
そこで曲が終わった。なのに、ラルフが私を離さない。
視線が痛いほど突き刺さる。女性たちのざわめく声も聞こえる。
その時
「こら離しなさい、ラルフ!」
と、アイシャがロイさんをひきつれてやってきた。
ラルフは私をがしっと捕まえたまま、離さない。
「ロイ! ラルフをリリーから引き離して!」
「えー、このままでも良くない? 二人、めちゃめちゃ目立ってて、おもしろかったじゃない?! もっと見たい!
でも、グラン国の王女が、泣いて去ってたから良かったよね。自分とは踊れないって言っておいて、リリーちゃんとあんな情熱的に踊るラルフを見たら、大騒ぎだったろうし…。
しかし、ラルフ君、やるねえ! 王宮でするダンスじゃないでしょ? ラルフがここまで自分の欲望につっぱしるタイプだったとはね…。コンラートも笑い転げてたよ」
ロイさんがケラケラ笑う。
アイシャが、ラルフを睨みながら言った。
「ここぞとばかり、リリーを触りまくるんじゃないわよ! 減るじゃないの!」
ん? …減るって何が?!
断じて言い訳ではないけど、履いたことがないほど、高いヒールのせいだ!
と、思ったら、ぐっとラルフに体を引き寄せられた。
「え?! なに?」
びっくりして、ラルフを見上げると、
「踊りにくいんだろ、その靴。俺に体を預けろ」
と、耳元でささやく。
「その心遣いはありがたいよ、ラルフ。…だけど、近い! 近すぎる!」
私は、焦りまくって小声で言う。
顔がどんどん熱くなる。
だって、ほら、今、私、ドレスでしょ。
しかも、大人っぽくて、普段より明らかに露出が多いドレスだ。
こんなに接近したら、ラルフの体温が直に伝わってくる。
私の鼓動も早くなり、ドキドキを通り越して、もはや異常なくらいなんだけど…。
倒れずに踊れるんだろうか…。
が、こんなに焦っている私を至近距離で、楽しそうに見つめるラルフ。
「なんか、ラルフがすごい余裕だから腹立ってきた」
と、私はラルフに理不尽な文句を言った。
すると、ラルフは、妖し気な笑みを浮かべて、突然、お互いの頬がふれそうなほど顔を近づけてきた。
そして、耳元で、
「余裕なんか微塵もない。リリーが関わると、俺はいつだって余裕がなくなる」
と、ささやいた。
ええっ?!
思わず、ラルフの顔を見ると、エメラルド色の瞳が燃えるように揺らめいている。
ゾクッとした。
ラルフが知らない人のように思えて、無意識に体をラルフから離そうとした。
が、すぐさま、ぐいっと、もっとラルフの方へと引き寄せられらた。
もう、これって、抱きしめられているみたいじゃない?!
私の心臓の鼓動が、ラルフに聞こえそう!
ダンスというより、ラルフに抱きしめながら、ゆらゆらと動いているだけの私。
恥ずかしすぎて、死ねる…。曲が止まったら、ダッシュで走り去りたい。
涙目でラルフを見上げると、ラルフが、
「…ダメだ。リリーと離れたくない…」
と、つぶやいた。
え?! なに、その甘いセリフは?! 溺愛ヒーローみたいなセリフだよ?!
もしや、どこか具合が悪いの?!
「大丈夫、ラルフ?」
私が聞く。
「大丈夫じゃない。なあ、リリー。留学やめないか?」
「いやいや、無理だよ。それに、たった三か月だよ?」
「長い。そんなに離れていられない」
甘さをはらんだ目で、私に言った。
は?! 本当にどうした、ラルフ?!
と、思ったら、
「行くなよ、リリー」
ラルフが、しぼりだすように言った。
そこで曲が終わった。なのに、ラルフが私を離さない。
視線が痛いほど突き刺さる。女性たちのざわめく声も聞こえる。
その時
「こら離しなさい、ラルフ!」
と、アイシャがロイさんをひきつれてやってきた。
ラルフは私をがしっと捕まえたまま、離さない。
「ロイ! ラルフをリリーから引き離して!」
「えー、このままでも良くない? 二人、めちゃめちゃ目立ってて、おもしろかったじゃない?! もっと見たい!
でも、グラン国の王女が、泣いて去ってたから良かったよね。自分とは踊れないって言っておいて、リリーちゃんとあんな情熱的に踊るラルフを見たら、大騒ぎだったろうし…。
しかし、ラルフ君、やるねえ! 王宮でするダンスじゃないでしょ? ラルフがここまで自分の欲望につっぱしるタイプだったとはね…。コンラートも笑い転げてたよ」
ロイさんがケラケラ笑う。
アイシャが、ラルフを睨みながら言った。
「ここぞとばかり、リリーを触りまくるんじゃないわよ! 減るじゃないの!」
ん? …減るって何が?!
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