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二話
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「そう言えば、ウチの領内を回ってた時……平民の家付近で可愛い子を見かけたなぁ。俺じゃなくて前のシセルが……だけど」
例え魔法や剣術の修行をしたところで性欲を発散する事などできやしない。モテる可能性はあるかもしれないが確実性は無いッ! そして、シセルにとって……相手に恐怖やトラウマを与えかねない事をするという選択は”性癖的に無理ッ!”という理由から取ることはできない。
最終的に──幼い内に仲良くなって、生涯の伴侶を予め作ってしまえば良いのではないだろうカッ!
などとアホ過ぎる結論を出してしまったこの男は、その目的を達成する為の作戦を練り始めた。
「……計画的に幼馴染になる訳か。幼馴染幼馴染……そういや一時期、幼馴染を依存させちゃう系の漫画とかよく読んでたな。それと同じ事をすれば……恐怖による支配ではなく、且つッ! これから俺がやる事に全面協力してくれるんじゃないか!? 俺が前世で良く見ていたのは、ハグやら頭ナデナデ等の大変軽めのモノだが……現実でそんなんに惹かれる女性が居るとは思えない」
──ならば!
そう大袈裟に身体をクねらせながら叫ぶ。これを一人でやっているという事を考えると、シセルは恐らく世間一般から見て……かなり変人の部類に入るだろう。
「『すきすきちゅっちゅ』して依存させて、俺無しじゃ生きられない身体にしてしまおう! そうすれば、魂に存在するとかいう何の役にも立たない力を扱えなくても……ゴホンッ、使わずとも人を操って極悪人と装う事が出来るはず! ゆくゆくは主人公に殺されてハッピーエンドだ!!」
そして最初に思い付いた作戦がこんなんであった。
──この時のシセルはまだ気付かない。依存というジャンルはフィクションだからこそ良くて、現実で再現しようと試みるのは悪手であるという事に……というか、すきすきちゅっちゅっとは何ぞや?
***********************
「確かこの辺だったと思うんだけどなぁ……」
シセルは現在、領主の家付近の民家……の直ぐ横に存在する、遊具も何も無い……ただ木や芝が生えているだけの公園のような場所をゆっくりと歩いていた。この身体の……シセルが前世を思い出す前の記憶の中にある『めちゃ可愛い子』を見かけた場所を重点的に歩き回っているのだが……全く見つかる気配がない。
「まぁ、毎日ここに居るって訳でもないだろうし……そりゃそうか。もしかしたら、もう引っ越したりしてるかも」
そもそも……その『めちゃ可愛い子』を初めて見たのがここだからと言って、ここの近くに住んでいるとは限らない。ここはかなり広大な庭園だ。交流の為に領地の端から家族でたまたま遠出していたのかも知れない。
「また明日来ようっと……ん?」
帰宅しようとしたシセルは、視線の先に一人の少女っぽい人間が居るという事に気付く。茶色がかった黒髪が肩に掛からない程度まで伸びていて、明らかに女性物の服装をしているその人間を注意深く見てみると……どうやら例の『めちゃ可愛い子』の様であった。
(──お? チャンスだッッ! ……いや、チャンスだから何だ? 俺は今から一体何をすればいいんだ!? ──エ〇知識とか、んなもんッ! 職場や学校でもない場所で知らん人に話し掛ける時に使える知識じゃねェ!)
身に残る唯一のエ○知識が……クソ程も役に立たない事を理解して、頭を抱えるシセル。すると……割と距離があるのにも関わらず、この男の様子がおかしい事に気付いた少女は、下を向いた状態で悩み倒しているシセルの方へと向かう。
「……ん?」
足元を見ていた彼の視界に、自身のモノとは違う靴が映り込む。その時点で何か色々察してしまったシセルが、恐る恐る顔を上げると……激マブの女の子にガチ恋距離でガン見されていた。
「あなたは、りょうしゅさまの……むすこ?」
あまりの近さで少女の瞳孔が開いているのが分かり……そのちょこっとホラーな光景に、心の準備などしていなかったシセルの心臓がきゅっと縮む。
(──まっずい! 向こうから話し掛けてキタァァァァァァ!!)
そして無慈悲にも、首に死神の鎌がセットされ……いつでも斬首OK状態となってしまったシセルは内心で叫んだ。
例え魔法や剣術の修行をしたところで性欲を発散する事などできやしない。モテる可能性はあるかもしれないが確実性は無いッ! そして、シセルにとって……相手に恐怖やトラウマを与えかねない事をするという選択は”性癖的に無理ッ!”という理由から取ることはできない。
最終的に──幼い内に仲良くなって、生涯の伴侶を予め作ってしまえば良いのではないだろうカッ!
などとアホ過ぎる結論を出してしまったこの男は、その目的を達成する為の作戦を練り始めた。
「……計画的に幼馴染になる訳か。幼馴染幼馴染……そういや一時期、幼馴染を依存させちゃう系の漫画とかよく読んでたな。それと同じ事をすれば……恐怖による支配ではなく、且つッ! これから俺がやる事に全面協力してくれるんじゃないか!? 俺が前世で良く見ていたのは、ハグやら頭ナデナデ等の大変軽めのモノだが……現実でそんなんに惹かれる女性が居るとは思えない」
──ならば!
そう大袈裟に身体をクねらせながら叫ぶ。これを一人でやっているという事を考えると、シセルは恐らく世間一般から見て……かなり変人の部類に入るだろう。
「『すきすきちゅっちゅ』して依存させて、俺無しじゃ生きられない身体にしてしまおう! そうすれば、魂に存在するとかいう何の役にも立たない力を扱えなくても……ゴホンッ、使わずとも人を操って極悪人と装う事が出来るはず! ゆくゆくは主人公に殺されてハッピーエンドだ!!」
そして最初に思い付いた作戦がこんなんであった。
──この時のシセルはまだ気付かない。依存というジャンルはフィクションだからこそ良くて、現実で再現しようと試みるのは悪手であるという事に……というか、すきすきちゅっちゅっとは何ぞや?
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「確かこの辺だったと思うんだけどなぁ……」
シセルは現在、領主の家付近の民家……の直ぐ横に存在する、遊具も何も無い……ただ木や芝が生えているだけの公園のような場所をゆっくりと歩いていた。この身体の……シセルが前世を思い出す前の記憶の中にある『めちゃ可愛い子』を見かけた場所を重点的に歩き回っているのだが……全く見つかる気配がない。
「まぁ、毎日ここに居るって訳でもないだろうし……そりゃそうか。もしかしたら、もう引っ越したりしてるかも」
そもそも……その『めちゃ可愛い子』を初めて見たのがここだからと言って、ここの近くに住んでいるとは限らない。ここはかなり広大な庭園だ。交流の為に領地の端から家族でたまたま遠出していたのかも知れない。
「また明日来ようっと……ん?」
帰宅しようとしたシセルは、視線の先に一人の少女っぽい人間が居るという事に気付く。茶色がかった黒髪が肩に掛からない程度まで伸びていて、明らかに女性物の服装をしているその人間を注意深く見てみると……どうやら例の『めちゃ可愛い子』の様であった。
(──お? チャンスだッッ! ……いや、チャンスだから何だ? 俺は今から一体何をすればいいんだ!? ──エ〇知識とか、んなもんッ! 職場や学校でもない場所で知らん人に話し掛ける時に使える知識じゃねェ!)
身に残る唯一のエ○知識が……クソ程も役に立たない事を理解して、頭を抱えるシセル。すると……割と距離があるのにも関わらず、この男の様子がおかしい事に気付いた少女は、下を向いた状態で悩み倒しているシセルの方へと向かう。
「……ん?」
足元を見ていた彼の視界に、自身のモノとは違う靴が映り込む。その時点で何か色々察してしまったシセルが、恐る恐る顔を上げると……激マブの女の子にガチ恋距離でガン見されていた。
「あなたは、りょうしゅさまの……むすこ?」
あまりの近さで少女の瞳孔が開いているのが分かり……そのちょこっとホラーな光景に、心の準備などしていなかったシセルの心臓がきゅっと縮む。
(──まっずい! 向こうから話し掛けてキタァァァァァァ!!)
そして無慈悲にも、首に死神の鎌がセットされ……いつでも斬首OK状態となってしまったシセルは内心で叫んだ。
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