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第三章 過去2年前
15 粗塩対応
しおりを挟む「すまんっ、悪い!!」
診察終了間際にジェンセンはやってくるなり五体投身平身低頭までは言わない。
大きな身体を屈め深く頭を下げていた。
「ジェンセンさん一体どうしたのですか?」
行き成り謝られてもわからないとばかりにフィオは困惑するばかり。
ただこの三ヶ月もの間の付き纏いやその他該当するものがあるだけに、謝罪をする理由がない訳でもないな……とフィオは思う。
「怒ってないのか?」
「何故怒る必要があるのですか?」
何も問題はないと答えるフィオへジェンセンは紅い髪を雑に掻き上げながらバツが悪そうにぼやく。
「お、俺と一緒に、俺の親に紹介すると言っただろ?」
お祭り見物に託けジェンセンは両親へ紹介し、完全に外堀を埋めようと画策していた。
一向に色よい返事をくれないフィオを逃がすまいと必死に考えた策だった。
これが上手くいけば両親公認となりフィオも覚悟を決めなければいけないだろうと思ったのにである。
それが昨夜遅く急に第二騎士団員全招集が掛かってしまったのである。
休暇申請及び休暇中の団員も関係なく招集された。
無論数日先の休暇申請をしていたジェンセンも例外ではない。
折角俺の明るい薔薇色未来計画が〰〰〰〰⁉
フィオをといちゃラブお祭り休暇に未練たらたらであるもののそこはラファエルへ忠誠を誓った騎士であり、また第二騎士団の副団長。
部下の前で見っともない姿を見せる訳にはいかない。
だがフィオへほんの少しでもいいから休暇の取り消しとデートのキャンセルの件について謝罪をしたいと、忙しい合間を縫って騎士団を抜け出してきたのである。
とは言えそんな恋する脳筋へ返ってきた言葉は相変わらずの塩対応だった。
「私、別にジェンセンさんのご両親にお会いしたい何て思っていませんよ。お祭りの件も行く何て一言も返事はしていませんしね。それよりも今はお仕事中なのでしょう?早く戻らないと怒られますよ」
「フィ……フィオちゃん〰〰〰〰っっ」
地面へと崩れ落ちる様に座り込むジェンセン。
「あ、いたいた副団長探しましたよ!!」
そこに現れたのはジェンセンと同じ第二騎士団所属であり彼の直属の配下のレクスターである。
「何か用かって、今俺は物凄く忙しいんだ!!」
「何言ってるんですかぁ。陛下より勅令が出たでしょ!!もう団長が副団長いないって怒ってますから今直ぐ戻りますよ」
「お、おいっ、放せって!!俺はまだ用事が済んでいな――――っっ!?」
問答無用とばかりにレクスターはジェンセンの首根っこを掴めば馬止めまでズルズルと引っ張っていく。
無様に引き摺られながらもジェンセンは諦めきれず大きな声でフィオの名を何度も叫んでいた。
その様子を呆れた様子で見ていたフィオは未だ諦めの悪いジェンセンのいる馬留の近くへと駆け寄っていく。
彼女の追いかけてくる姿を見たジェンセンの心は一気に爆上がり……。
「ふぃ、フィオちゃん俺!!」
「ジェンセンさんちゃんと働いて下さい。人間働かざる者食うべからずです」
にこりと可憐な笑みを浮かべる。
「フィオちゃんそこはそんなド直球な言葉ではなく『愛しているわ。どうか気をつけてね私の騎士様』くらいの優しいお言葉ってモノはないのか――――」
馬上よりジェンセンはフィオへ懇願するが……。
「ないです。私ジェンセンさんの事何も思っていませんから。あ、でも怪我には気をつけて下さいね。マックスも忙しいので……」
何時も以上の粗塩対応。
「フィオちゃん俺はあんたを絶対に諦めないからなあああああぁぁぁぁぁぁぁ」
「とっとと帰れ~」
大通りの向こうまでジェンセンの雄叫びは響き渡っていたらしい。
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