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第1章 転生したけど・・・

魔法が使える世界で僕の属性

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 元気になった僕は外で遊べるようになったが、同時に“お勉強”を始めることになった。



 僕の体調を心配した両親は僕の学習開始を遅らせてもいいのではないかと言ったが僕が反対した。

 だって学園に通ったらテストがあるし、何よりセフィウスとの差が開くのは嫌だと感じた。

 セフィウスはゲーム内でも優秀な設定だったが、幼少期の頃から能力がずば抜けていた。


 一度聞いたことは必ず覚えているし、魔法の発現も早かった。

 僕が何度も頼んで見せてもらった水魔法や氷魔法の結晶は本来なら大人でも難しい魔法操作らしい。

 それをまだ小さい子供がやってのけるのだから、セフィウスはすでに神童と謳われていた。




 そうそう、そしてなんと言ってもこの世界には魔法がある。


 僕も前世では例に漏れず中学生の時には魔法の呪文や技名を考えたりした記憶がある。

 忘れたい・・・



 この世界ではそれが現実になると思ったらいてもたってもいられず両親に魔法を学びたいと家庭教師をつけてもらえることとなった。


 今日はその先生が家にやってくるらしい。


 魔法師としてとても優秀な人だが、教えた経験はないらしい。

 どんな人が来るのかとても楽しみである。


 小学生の頃の家庭訪問のように屋敷の前で先生を待っていた。

 この世界ではそんなことはしないと分かっているけど、ソワソワして落ち着きのない僕を見いていた両親は笑って許可してくれた。

 この家の人間は本当に僕に甘い。





 しばらく待っていると家の前に一台の馬車が止まった。

 中から出てきたのは翡翠色の髪と目をした少し垂れ目で髪を後ろにまとめた若い男の人で(多分大学生くらい)だった。

 魔法省の高官と聞いてもっとしかめ面の厳しそうな人が出てくるかと思っていたけれど、柔らかい雰囲気の人だった。

 その人は家の前にいる僕を見ると目を丸くした。

 しかし、それも一瞬のことで

「初めまして、坊ちゃん。

 今日から家庭教師を務めますエルヴィン・オーガストと申します。」

 と、とても優雅なお辞儀をしてくれた。



「はは初めまして。テオ・セテウスです。

 よろしくお願いいいいたします。」



 緊張して上手く言えなかった。恥ずかしい。

 顔が熱くてきっと茹でたこのようになっていると思う。


 先生はそんな僕を見てふっと優しく笑った後、

「よろしくお願いします。」

 と言ってくれた。




 すごく優しそう!この先生だったら勉強が大変でも頑張れる気がする!
 というか、さすがというか先生も造形美が過ぎる。もしかしたらゲーム内のどこかに登場していたのかもしれない。


 先生の顔に見惚れていると後ろにいた執事が案内を始めてくれた。





 両親との挨拶も済んだ後、僕と先生は2人部屋に残って僕の魔力適性を見ることになった。
 両親は僕をとても心配そうな目で見ていたが、大丈夫だと胸を張って送り出した。
 そうは言ってもやっぱり魔力量がごくわずかだと生きづらかったりするのだろうか。


 先生に言われた通り水晶玉のようなものに手をかざすとじんわりと温かいものが流れ込んできた。
 なんか少しむず痒くなってきたのでその何かを押し返してしまった。

 そうしたら透明だった水晶玉のようなものはじんわりと黒に染まっていった。
 ぼーっと眺めながら書写の時間の筆を洗った時を思い出していた。
 ペットボトルの中の水に墨汁が少し混ざるとモヤのように広がっていくのが面白くてよく眺めていたっけ。
 隣の席の子はふでをバシャバシャさせてすぐに真っ黒にしていたけど。


 回想に浸っていると前の椅子に座っていた先生が

「ほう。」

 と興味深そうに水晶を眺めながら、

「それにしても、手をかざすことしか教えていないのによく検査の方法が分かりましたね。」

 とさらりと言ってのけた。




 どうやら、自分と自分の持ってる魔力には親和度があるらしく、あの温かい何かを魔力検査機に返さなかった場合、その親和度が低いと魔力酔いを起こしてしまうらしい。

 運良く僕は魔力良いを起こさなかったが。



 ようは、僕に何も説明しないことで、魔力良や適性だけでなく親和度まで測ったらしい。


 ただの優しい先生だと思っていたら痛い目をみるかもしれない。

 ここで初めて僕は先生に警戒心を覚えた。

 じとっとした僕の視線を感じたのか

「ははは。説明しなかったのはすみません。

 いや、魔力良いと言っても大抵の人は数十分具合が悪くだけですよ。」

 と、悪いとは思っていなさそうな調子で言った。


「君は珍しい魔力適性を持っていますね。

 黒魔法です。別名闇魔法とも言いますが。」


「それって・・・。」


 ゲーム内のセフィウスが世界を混沌に陥れた時に獲得した属性じゃん!

 え、闇堕ちしていなくても持ってる人いるんだ。


 しかも僕?


 頭の中にハテナをいっぱい浮かべていると先生が説明してくれた。


「大丈夫ですよ。闇属性と言っても必ずしも危険なものではありません。

 使い方がちょっと難しいのと、過去の闇属性保持者のうち何名かが凄惨な事件を起こしたせいで悪い印象が付き纏っていますが。

 君のその髪色を見た時にそうなのではないかと思っていましたがね。」



 僕が両親のどちらとも違って黒髪黒目なのは属性が関係していたのか!

 じゃあ、彼らは僕が闇属性持ちかもしれないって知っていたってことなの?


 両親も屋敷のみんなも僕をとても大切にしてくれている。

 でも、それはまだ確定じゃなかったからで判定のことを知ったらみんな僕を嫌いになるかもしれない。

 セフィウスだって・・・




 じわりと涙が浮かんできた。




「え、そんなに怖がらせちゃいました⁉︎

 まぁ、使い方を間違えなければ何の問題もありませんよ。
 君は幸い魔力と相性が良いみたいですし、これから私が教えるのですから。」

 そう言って先生は僕の頭をポンと撫でた。


 だって、ゲーム内で見た黒魔法は本当に怖くて、何もかもを飲み込んでしまっていたから。
 それを僕が持っているのだと思うと周りの人たちを傷つけそうで怖い。

 それに怖がってみんなが僕から離れていってしまうことを考えただけで胸が張り裂けそうだ。


 いろんなことが頭に浮かんできてぐちゃぐちゃになって涙が止まらなくなってしまった。


 




















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