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第1章 転生したけど・・・
僕が守る
しおりを挟む王国内はあちらこちらで火の手が上がり、人々は逃げ惑っている。
地面には屍の山が築かれ、そのほとんどは王侯貴族やその私兵たちである。
地獄絵図が広がる中、1人の男が声高らかに笑っている。
彼が笑ったのは何年ぶりだろうか。そしてそれを見ていたのは・・・
「セフィウスもうやめて!」
ピンクプラチナの髪が輝く少女が叫ぶ。
彼女の手には王国の第二王子が息も絶え絶えに横たわっている。
一刻の猶予もない中で彼女は自身に残る力の限りを尽くして治癒魔法をかける。
「兄様、やめて、、、ください。」
「お前を弟などと思ったことは一度もない。薄汚い悪女から生まれたお前など・・・」
そう言って男が手をかざすと凄まじい竜巻が王都中を旋回し出した。
まるで何もかもを消し去り無に帰すように。
もはや誰の声も彼には届かない。
また別の話
「セフィウス、、、やめて。来ないで。」
やっと、しかめ面以外の表情も見せてくれるようになったのに、なにを間違えたのだろう。
「なんで逃げるの?僕を尊重するって言ってくれたのは君でしょ?」
「そうだけど。これは違うよ。変だよ!」
「やっとなんだ。君ならばいいかなと思ったから・・・・」
最後の方の呟きが小さすぎて聞き取れなかったが、今はそれどころではない。
目の前の男は自分を殺そうとしているのだから。
結婚式場でてっきりプロポーズされると思っていたのだが、彼は私をを特別だと言った後に刃物を取り出してきた。
なんで、なんで、気持ちが通じたと思ったら心中なの⁉︎⁉︎
訳がわからず、必死で逃げていたが壁に突き当たってしまった。
対抗しようにも私が使えるのは治癒魔法のみ。
今の状況ではなんの役にも立たない。
せめて彼の意思を変えられないかと壁を背に彼の目を見据えるが彼は私を見ていない。
「・・・・!」
腹部に激痛が走ると共に生暖かい液体が添えた手を濡らす。その感覚も薄れてきて。痛くて、私は・・・
「ああ、やっと。・・・・」
目が覚めたら涙が出ていた。
さっき見た夢は乙女ゲームゲームのエンディングだ。
一つは王国の第二王子ガイアスルートのバッドエンドで、もう一つが第一王子セフィウスルートのバッドエンドだ。
ちなみに第一王子ルートのハッピーエンドは見たことがない。
どのルートでも第一王子は王国を破滅へと導こうとする。完全に悪役ポジションだ。
でもゲーム内の彼はとても切ない表情をしていて、彼を救いたい何人ものプレイヤーが最難関とされる彼のルートに挑んでは泣いていたことか。
ちなみに他のルートのハッピーエンドでは第一王子は主人公とヒーローに倒される。
僕も彼を救おうとして挫折していったプレイヤーの1人だ。
典型的王子様キャラに弱い僕は初めて見た時からセフィウスが推しになっていた。
あんな鬼畜キャラだとは知らなかったが。
リアルな夢野せいで気持ちがどんよりと落ち込んでしまったが、今のセフィウスはまだ子供で性格が歪んでもいない。
今日から、セフィウスを幸せにして破滅エンドから今度こそ彼を救いたい。
それに、まさか幼少期せセフィウスがこんなにも天使だとは。
彼の成長途中で何かしら彼を変える要因があったはずだ。
第一王子ともなれば色んなしがらみや周りの人間の悪意を浴びることも多かったのかもしれない。
僕にできることがあるかわからないけど、全力で彼を守るんだ!
そんなことを考えていたら興奮ですっかり目が覚めてしまったので、昨日そのまま僕のベットで寝たセフィウスを起こさないようにそっとベットから降りようとした・・・
「どこ、、行くの、、、、、?」
「ひぇっ!」
いきなり腕を掴まれた僕は小さく悲鳴を上げてしまった。
振り向けば機嫌が悪そうなセフィが僕を睨みつけていた。
「目が冴えちゃったから布団から出ようと思って」
「まだだめ。」
セフィウスはそういうと僕を布団に引き摺り込みがっちりとホールドした。
こんな華奢な体のどこにそんな力があるのだと思うほどに強い力だ。
セフィと一緒に寝たことは何度もあるけど、寝起きわるいんだよなぁ・・・
ある意味大魔王の片鱗は幼少期の頃からあったのかもしれない。
まぁ、可愛い顔でにらまれたところで可愛いだけなんだけどね。
その日はしばらく公爵家に滞在するとごねるセフィを構いに構い倒してなんとかその日のうちに王城に帰ってもらうことができた。
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