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第1章 転生したけど・・・
恵まれているなぁ
しおりを挟む部屋に入ってきた執事は僕が泣いているのを見てものすごい形相で先生を僕から引き剥がし僕を背後に隠した。
そして、ものすごく低い声で
「私どもの坊っちゃまに、いかようなことをされたのですか?」 と言った。
執事が凄んでいるところを初めて目にした。
先生は肩をすくめて
「ご令息のお持ちの魔法属性についてお話ししただけですよ。」
と言うと、執事はハッとして
「もしかして坊っちゃまはやはり・・・」と先生の方に身を乗り出した。
ビクッと肩が揺れた。怖くて前にいる執事の顔が見れない。
ああ、嫌われてしまう。
がたがたと体が震え出した。
怖がらせてしまうから。そっと執事の背後から離れようとした瞬間、
急に振り返った執事に僕は抱きしめられていた。
「申し訳ありません、坊ちゃま。
本来なら御身にこうして触れるのは無礼だと重々心得ておりますが・・・」
「私は坊ちゃまがどのような属性をお持ちであっても変わらず宝物のように思っております。
これは屋敷のものみなの総意だとお思いください。」
急に抱きしめられた驚きで少しの間止まっていた涙はその言葉を聞いた途端再び溢れ出した。
「ねぇ、大丈夫でしょ、坊ちゃん。
闇属性=悪人なんてのは間違いですし、坊ちゃんにはこんなに大切に思ってくれている人たちがいるんですから。
射殺されるかもと思いましたよ・・・」
と先生は言いながら最後の方は少しぼやいていた。
僕は泣きに泣いてもう授業どころじゃなかったので先生に帰ってもらった後、両親と屋敷のみんなに結果を報告して回った。
僕のパンパンに腫れた目を見たみんなは驚いていたが、属性については触れず、魔力の検査を終えたことにおめでとうございますと言って祝福してくれた。
みんないつも通り優しくて、ゲームで知ったこの世界での黒魔法使いの立ち位置は嘘なんじゃないかと言うくらい自然に受け入れられた。
本当に僕は恵まれていると思った。
その翌日、突然現れたセフィウスの言葉にんでもなく驚かされた。
なんとセフィウスは僕から黒魔法の気配を感じ取っていて既に知っていたみたいだ。
昨日のことを知ると、「僕が先に言っていたらよかったね。」
と、とても申し訳なさそうな顔をした。
「ところで、その先生って人がテオを泣かせたんだよね? なんていうお名前なの?」
と聞いてきたが、悪寒がしたので濁しておいた。
それに、僕が泣いたのは先生のせいじゃないしね。
そして現在ふかふかのソファに座った僕は
「僕はテオがどの魔法属性でも魔王様でも大好きだよ!」
という天使なセフィウスを膝に乗せて癒しを堪能している。
セフィウスは僕の膝の上で少し揺れながら前を向いたり、こちらを向いたりしながらお城のお庭の花がどうとか、僕にお勧めしたい本がどうだとか話している。
セフィウスは今日もふわふわぽかぽかしていてまるで人懐こい猫と戯れているような気持ちになる。
こんなに平和で良いのだろうか。
小説とか、それこそゲーム内では黒魔法使いは親やその周りに冷遇されて育ったりしそうなものだけれど。
今の僕は幸せの二文字にどっぷりと使っている。
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