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第1章 転生したけど・・・
はじめての悪意 ※気分を害する表現があります
しおりを挟むそんなことを考えていたからだろうか。
いや、遅かれ早かれこうなることは安易に予測できたはずだ。
僕はいま城内の庭の一角で自分よりも一回り二回りも大きい令息たちに囲まれている。
彼らは明らかにこちらに悪意を持っていて、ニヤニヤと嘲る視線の中には微かな恐怖も見てとれた。
お城でセフィウスと会う以外は基本屋敷に引きこもっている僕が何故他人と接しているのかというと・・・
ある朝僕の元に一通の招待状が届いた。
差出人は王妃様で、どうやら僕くらいの年代の令息を集めてお茶会をするらしい。
王妃様と言ってもセフィウスとは血の繋がりはない。
セフィウスのお母様は前王妃様で、体が弱くセフィウスを産んだ一年後に儚くなってしまったそうだ。
姿絵の中の王妃様はセフィウスにそっくりな美人で柔らかく微笑む表情はとても優しそうだった。
今の王妃様は一度挨拶を交わしたことがあるが燃えるような赤髪で、前王妃様が儚げな美人だとしたらその対極の強烈そうな美女だった。
挨拶したその後は王城訪れても会うことはなかった。
セフィウスの交友関係を広げることが目的だとしたらセフィウスと継母との関係は良好だということだろうか。
セフィウスの口から王妃様の話は聞いたことがないので、王城での様子を僕は知らない。
でもあのセフィウスだったらみんな猫可愛がりしてしまうだろうと思う。
なにせ最上級に可愛いから。
今度のお茶会はセフィウスが交友関係を広げるのを側で見守りつつフォローできたらいいな。
それに僕にも新しい友達ができたりしないかな。少し楽しみだ。
・・・なんてことを考えていた僕は甘かったみたいだ。
お茶会が開催される部屋に案内され僕と同い年くらいの子供たちと王妃様が集まっていざ顔合わせという段階で、僕は刺すような視線を嫌でも感じていた。
ことらを見てヒソヒソと話をされる。
とても僕から声をかけられるような雰囲気ではなくて黙って俯くしかなかった。
お茶会が始まってもセフィウスは来る気配はない。
僕が守るつもりでいたのに、もしここにセフィウスが来たらなんと思うだろう。
こんな姿を見られたくなくてセフィウスが姿を見せないことにホッとしている。
一人ひとりしていく挨拶を最後の順番で何とか終え、このまま早くお茶会が終わらないかと心の中で願っていたら、まだ嫌なことが待っていた。
「そうそう、ここにいる皆さんはもうすでに魔力検査を終えられているのですよね。
何の属性が出ましたか?」
と王妃様が魔法属性の話題を持ち出した。
他の令息たちが、水属性だとか火属性だとか答えていく中でまたしても最後に順番が回ってきた僕は消え入りそうな声で
「・・黒魔法属性です。」
と答えた。
すると王妃様は「まぁ!」とわざとらしく声を上げた。
「黒魔法使いってあの黒魔法よね?
皆さんも聞いたことあるでしょう?
数十年前に王都を襲ったあの事件を」
と言うと、一人の令息が
「一人の黒魔法使いによって王都と貴族の大半が壊滅しかけたというあれですよね?」
とそれの応える形で、
そこからは以前あった黒魔法つかいによる事件や、黒魔法使いがいかに忌避され煙たがられているのかと言う話題に移り変わった。
王妃様は途中
「ああ、ごめんなさい。気にしないでねテオ君とは関係のないことだから。」
と言っていたけど、その口元は歪んでいた。
このお茶会が僕という黒魔法属性を糾弾するために開かれたのだということに早い段階で気がついた。
そして、王妃様が僕を毛嫌いしているということにも。
王妃様が少し席を外すと言って立ち去った後、僕は令息たちに囲まれた。
「お前みたいな黒髪初めて見たけど、気味悪いな。」
「王妃様は関係ないっておっしゃってたけど。お前も事件を起こした奴らと同じなんだよ。」
と口々に詰られる。
周りから大切にされて育ち、前世でも優しい人たちに囲まれていたまま転生した僕はこういった悪意に耐性がなく、どうして良いかがわからない。
なにも反応できずにいると数人が魔力で僕を囲い始めた。
「危険の芽は早いうちから摘んでおいたほうが良いって言うからな。
今のうちに痛い目見て身の程を思い知っとけよ。」
と言った令息はまだ身につけたばかりであろう火炎魔法を僕に向けてきた。
ジリりした熱さを感じた僕は流石にマズいと思い。部屋の出口を目指して走り出した。
すると誰かが放った風魔法が僕の足元を掬い、僕は扉の前で転んでしまった。
令息たちと魔法が迫ってくる中で恐怖の中の僕は、お腹の底から黒いモヤのようなものが浮き出てくるのを感じた。
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