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私の好きな人

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『十六年ぶりに日織ひおりさんとお話しさせていただきました。

 故あって月に何度かお姿はお見かけはしていましたが、ずっと声はかけられずに来たので感慨深いものがありました。

 外見はいうまでもなく、中身も子供の頃のピュアなところを残したまま、とても好もしく成長をなさっていて懐かしさも込み上げて感動しました。

 正直幼い頃からとても愛らしいお嬢さんでしたが、年頃になられた日織さんは僕の知るどんな女性よりも魅力的で、気がつくと見惚みとれてしまって仕事が手につかないくらいです。

 藤原さんが日織さんのことをご心配されるのも、もっともだと思いました。

 さて、夢見がちな方だとお聞きしていましたが、僕の想像以上だったことに驚かされると同時に、実はかなりワクワクしてしまいました。

 本当に素直で直向ひたむきな愛らしい方で、愛情いっぱいに育てられたお嬢さんだというのがよく分かります。

 ご両親の目が行き届かない場面では、僕がしっかりサポートしていこうと思います。

 藤原さん、大事なお嬢さんを僕に任せてくださって、本当にありがとうございます。』

――

『週明けの月曜日でしたが、今日の日織さんは寝不足のようで、あくびを頻繁にしていらっしゃいました。

 先週末、歓迎会に遅くまで付き合わせてしまったことが影響しているのでは?と心配になりました。
 僕がついていながらお嬢さんに無理をさせてしまい、申し訳ありませんでした。

 実は歓迎会の日、お宅の門前までお嬢さんを送らせていただきました。何度もお手紙をお出ししていることもあり、住所は把握しておりましたので、難なくお宅まで辿り着けてホッとしました。

 夜遅かったこともあり、ご挨拶などなく帰ってしまいました非礼をここにお詫びいたします。』

――

『今日の日織さんは少し鼻声のようでした。
 鼻にかかったお声もとても可愛らしいのですが、彼女ご自身が辛そうなのが、見ていてしんどかったです。
 鼻が通れば、と思いミントののど飴を差し上げたらとても喜んでくださいました。

 彼女の笑顔に僕は毎日癒されています。

 今日は市内の街区公園の位置情報が分かるマップ作りを手伝っていただきました。

 とても飲み込みが早く、見た目のほわっとした印象よりもはるかに聡明なお嬢さんだな、と思わされました。』

――

『今日は就業後に、日織さんから「携帯を持つことにしました、どんなのがおすすめですか?」と質問されました。

 僕が使っている機種に興味をもっていらしたので、少しご説明させていただきました。

 結局、キャリアも機種も僕と同じものになさったようです。

 勝手なことをして申し訳ありません。

 ただ、ひとつ本音を言わせていただくと、僕は彼女が僕の真似をしてくださったことを大変嬉しく思っています。

 彼女が携帯の操作で困った時に、僕が迷いなくお教えできるところが便利だな、と感じています。』

***

 さすがに修太郎しゅうたろうさんのお宅へお伺いしたことや、会議室でのあれこれは書かれていなかったけれど、それを見ると私が修太郎さんのそばで、どんなふうに一日を過ごしていたのかが手に取るように分かって。

 というよりも――。

(まるでラブレターのようで照れてしまいますっ)

 業務連絡のようにその日の出来事が箇条書きにしてあるのかと思って目を通し始めた私は、そこに綴られた修太郎さんのあふれてやまない私への愛情をひしひしと垣間見てしまって、照れてしまう。

 改めて封筒の方を確認してみると、消印はキッチリ一週間ごとで。

「修太郎さん……筆まめさんですね」

 照れ隠しに、内容については一切言及げんきゅうせずそうつぶやいたら、お父様に「日織、顔が赤いようだけど、感想は本当にそれだけかい?」と笑われてしまった。
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