かあさんのつぶやき

116 今夜の白袴

「いつまでそんなかっこうしてるんだよ」

「ほえ?」

鳩が豆鉄砲食らったみたいにすっとんきょうな声を出して

ばつの悪そうな顔をしている。

「朝からずーと裸じゃないか」

「訪問看護のときは洋服きてたでしょう」

「その時まで裸だったら、変態とまれ!!1.2」

「あ、止まった。変態だったのかw」

最近、母さんはなぜか一日中裸でいることが多い。

糖尿病のせいなのか、かゆいらしく

めったにおねだりしたことないのに

「アマゾンで〇〇リカ買って?」

とおねだりしてきた。

二人で何軒かの薬局を回ったのだが、

詰め替え用は売っているのに容器に入ったものはなかったからだ。

医薬部外品ではないこの入浴剤。

乳白色のいい香りがする。

そして、かゆみに抜群に効くらしい。

汗疹なのか湿疹なのかアレルギーなのかよくわからないけど

豆腐のような白い滑らかな肌に最近、小さなかさぶたがいくつもできている。

「ヨブもこんなだったのかね?」

かきむしりたいのを我慢して、冷たいタオルで拭いたりしてるみたいだけど

太宰治の皮膚と心に出てくるみたいにぶつぶつが止まらないみたい。

大きな胸に手を当てて深く息を吸い

「柔肌の熱き血潮に触れもみで悲しからずや道を説く君」

と、恋する乙女を演じて

一人でくすくす笑ってる。

ほんと、まじ頭おかしいよな。

このおばさん。

俺が自分のマンションに帰ったら、このおばさん

裸のまま外をほっつき歩くんじゃないかと心配なんだ。

こうして、共依存症は誰にも気づかれない仮面をかぶって

水面深く潜っていくんだろうな。

「そろそろ洋服きようかね」

「やっとか」

「ええ?訪問看護のときは着てたでしょう?」

「ソウダッケ?」

「朝きちゃったじゃない?」

「だれが?」

「若い男の人」

「へー」

俺は寝てたのかな?

だって今日は俺の訪問看護じゃないもの。

「で、なんで裸なの?」

「そのあと、2回もお風呂に入ったから」

そうか、そうなのか。

一日中裸でいるわけじゃないのね。

でも、オンラインゲームしながら裸で

「なんで勝手に戻るんだよ。ふざけんなよ」

と、叫び続けているのを見ているのは

やっぱり気持ちのいいものじゃないよ。

防具鍛冶とやらに夢中になってるらしく、

一日中、暇さえあれば、練習場とやらにこもって叫んでいる。

ワーカーホリックだった母さん、

今は体が動かなくてオンラインゲームの中で自己実現しているのね。

うんうん、結果は後からついてくる。


防具鍛冶に夢中です

失敗でドーンと落ち込んで

めげずに頑張ると時たま

大成功

感情のジェットコースターは

ディズニーランドの暗闇を迷走する

スペース・マウンテンのように

予測不能

努力したすべての人が大成功するわけじゃない

だけど、進歩はするんですよね

realもバーチャルも

今日から11月

今月もよろしくお願いします


防具鍛冶職人 Lv 46
職人経験値 839,408 P
次のレベルまで 36,805 P
評判 SS級国宝職人


だってさw。

紺屋の白袴。

医者の無養生。

かあさんの裸んぼう。