かあさんのつぶやき

春秋花壇

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5 勿忘草の頃に

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「オイッス!」

俺の名前は、沼田 和俊(ぬまた かずとし)43歳。

無職である。

母、小宮 富子(こみや とみこ)66歳。

母は、父と離婚した後、別な戸籍になり、

旧姓に戻った。

二人は、過去に共依存と診断され

今は別々に住んでいる。


 今にも泣き出しそうな灰色の空、

時折思い出したかのようにぽつりぽつりと雲の雫がたれる。

かあさんの庭のストックと勿忘草は盛りも終わり、

薄汚い枯葉色に変わっていく。

かあさんは終わりに近づいた花を処分するのが

とても苦手だった。

長く、楽しませてくれた。

ありがとう。

と、抜き取ることが出来なかった。

できればみたくない。

そのままにしたい。

際限なく広い庭なら、それも可能だろうが、

寂しいからラジオ体操以外ほとんど話す人もいない。

つい、花屋に行って新しい花を買ってきてしまう。

それが、かあさんの悪い癖であり常だった。

本当に寂しがりやのかあさん。

一人が苦手なかあさん。

今日は月曜日。

俺と最後に会ってから、4日がたった。

そろそろ、限界かな。

かあさんは寂しいと昔から、

何でもしばじめる。

それが時には、男だったり、

お酒だったり、薬だったり……。

今日も、公園の中学生の男の子たちと

おしゃべりして遊んでいる。

彼らは昨日、マクドナルドで知り合った。

新型の感染症のおかげで、店内で食事をすることができない。

しかたなくかあさんは、100円のソフトクリームを買い、

隣の休憩所のような所に腰掛けて食べていた。

対面に座っていた男の子たちは楽しそうに

ソフトクリームを食べているかあさんに

「一口ください」

と、言った。

まさか、自分に話しかけているとは知らないで、

ぺろぺろとなめたり、

ちろちろと舌でソフトクリームと戯れたり、

いつものようにセクシーに

かわいくソフトクリームと遊んでいた。

「うほ」

「エロイ」

嬉しそうな叫び声。

まだ、かあさんは自分に話しかけられているとわからない。

ソフトクリームと必死に格闘している。

舌で嘗め回したり、

つついたり……。

なにをしてるんだか。

もうすぐ食べ終わるというとき、

一人の男の子が、大きなげっぷをした。

MOTHER2 ギーグの逆襲

ゲップーのような大きな音だったらしい。

思わず、かあさんは噴出した。

つぼにはまってしまって、笑いが止まらない。

椅子から落ちそうなほど、笑い転げている。

かあさんはあわててタオルで口元を押さえ、

何とか笑いを静止した。

三人の男の子たちは、イケメンで美少年ぞろいだった。

よっぽど暇なんだな。

かあさんはそう思ったらしい。

だって、14歳くらいのいい男の子が66歳のおばあさんを相手に

必死で注意を向けようとしてるのだ~。

かあさんは、急いで食べ終わってその場を離れた。

「さようなら」

男の子たちはそういった。

「?」

かあさんは、意味もわからず無視をした。

だって、まったく知らない若者。

不思議に思いながら、家に帰ってきた。

夕方、公園に植えたお花を見に行ったら、

なんとその三人の男たちがいた。

「な~んだ、近くの子供たちだったのか」

かあさんは、彼らをまったく知らないが、

彼らはかあさんを何度も見ていた。

それにしても、恥ずかしいから

変なソフトクリームの食べ方、

やめろよな!!









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