かあさんのつぶやき

4 親踏んじゃった

「オイッス!」

俺の名前は、沼田 和俊（ぬまた かずとし）43歳。

無職である。

母、小宮 富子(こみや　とみこ)66歳。

母は、父と離婚した後、別な戸籍になり、

旧姓に戻った。


「あああああ」

「まじか」

絶句していた。

一つの部屋に布団が二枚敷いてある。

奥に俺は寝ていた。

トイレに行こうとした俺は出口近くに寝ていた親を踏んづけてしまった。

何ともいやな感じ。

とんでもないことをしてしまったという後悔と

できればなかったことにしたいという妙な気分に満たされていく。

それが、夢であると気づいてからもいつまでも

その気持ちは晴れなかった。

今日は、通院日である。

母と俺の病名は、統合失調症。

基地外だ。

今日の東京は、晴れ。

それでも、朝夕は肌寒いくらいだった。

母の家に迎えに行って、一緒に自転車で病院に向かう予定だった。

母は、今年もまた公園にたくさんのお花を植えて、

水遣りだけでバケツに7杯。

家の周りも花園かと思うくらい、お花で満たされている。

家の外をこんなに綺麗にできるのに、

どうして家の中はゴミ屋敷にするのか

不思議でしょうがない。

まるで色の展示会のように

様々な美しい彩で満たされていた。

風そよぐ。

何とも好い香。

花粉症の俺でさえ、深呼吸したくなるくらい

癒しの空気で充満している。

インパチェンスの白。

百合のピンク。

ユリオパスデージーの黄色。

デルフィニウムの水色。

アジサイの藤色。

マリーゴールドのオレンジ。

キンギョソウの赤。

ペチュニアの紫。





一体、何百株あるんだろう。

色とお花と香の洪水だ。


闇落ちエビフライ

と、呼ばれた花を見たことがありますか。

フレンチラベンダーのことらしいが、

面白名前を付ける人もいるものだと笑ってしまった。





母は時たま俺のことをサイコパスだという。

たぶん、理解できないようなことを

したり言ったりするときにその言葉が出るんだろうが、

俺にしたらそんなことを言われるとすごく気になる。

何度も何度も、診察のたびに、

「サイコパスなんですかね」

と、主治医に聞く。

その度にどんな状況でそれを言われたかを説明し、

「大丈夫だよ、沼田君はサイコパスなんかじゃないよ」

と、いわれほっとする。

人は気付かないで人を傷つける。

母も、俺がこんなに気にしていることを知らないのだろう。

そして、傷つけられたことは何年も覚えているくせに、

傷つけたことは気付かなかったり気付いても

すぐに忘れてしまうのだろう。


おはようございます

私の思い込み
わがままが相手を裁きます
こうあって欲しい
普通はこうでしょうと
相手を責めます
そして、こともあろうに
相手が間違っている
相手が悪いと
さも自分は心配する
思いやりのある人のように
押し付けるのです

ごめんなさいo♬*ﾟ

そして、ありがとう🍓


俺は時たま、何週間も風呂に入れなくなったりする。

主治医やカウンセラーや訪問看護の人や母に

何度も注意されても入れない。

母は仕方なく、蒸しタオルで体を拭いてくれるのだが、

俺がそのことですごく悩んでいることを知らないから

やっぱり簡単に

「サイコパスだ」

という。

皮膚病になるほど、ひどくなっているのに

対処しようとしないように思えるのだろう。

俺からすればそれはお互い様で

ゴミ屋敷にしたり後先を考えずに

お金を使ってしまう母の癖も異生物なのだが……。

結局、一卵性双生児と言われるほど

共依存の間柄でも理解不能なんだろう。

それでも、不思議な糸でつながれている。

母を踏んづけてしまった夢で、

主治医に相談するくらい

母を気にしている俺はサイコパスではない。

うん、きっと、そうだ。

それにしても、いやな夢だったな。