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第一章婚約破棄と国外追放
15.暴露
しおりを挟む驚愕の事実を知り、側に控えていた彼等は即座に頭を下げた。
一斉に綺麗にそろったスライング土下座だった。
「「「申し訳ありません!!」」」
「えっ…」
綺麗な土下座に驚くエリーゼ。
「まさか、リゼ姫であらせられたとは知らず」
「ご無礼を!」
「万死に値することを!」
眉に床を擦りつける勢いで謝る彼等に困り果てる。
「おやめください。帝国の騎士様が簡単に頭を下げるなど」
騎士とは誰かれ構わず頭を下げるモノではない。
特に帝国の近衛騎士ならば騎士団のトップになる立場故に許されない。
「なんと慈悲深い」
「私達をお許しに…」
今度は涙を浮かべられる始末だった。
レスティア王国ではまずありえない光景だった。
「皆様にお詫びしなくてはならないのは私の方です。帝国の方々にはこれまで無礼を働き、既に国を追われた身ではありますが、なんとお詫びしたらよいか」
「「「は?」」」
「リゼ様、国を追われたとは…」
静観していたカイルはどういう事か尋ねた。
そもそも、何故王太子妃となるエリーゼが人質として差し出されたかも理解しがたい。
「要するに生贄じゃ」
「どういうことで…」
「シュタイン家はリゼ姫を冷遇しておったからな、体よく妹の身代わりに売ったんじゃよ。対価として支度金代わりに金貨と国境内での騒ぎを水に流せと言って来たわ」
これにはさすがに眩暈がした。
支度金とは嫁ぐ側が支払うモノを、逆に払わさせるとはどういうことか。
しかも人質になった令嬢の実家に差し出すなんておかしい。
「馬鹿に至っては罪人であっても爺の欲望を満たす道具程度には使えるだろうとのことよ」
「「「なっ!!」」」
娼婦扱いをされるエリーゼは悲しくとも何ともない。
「いっそ清々しいですわね」
遠い目をして全て諦めたような目をしている。
「それから同封されたものじゃ」
「何です、それは…」
カイルが手にしたそれはすぐに握り潰された。
「離縁状だと…しかも金貨千枚で売るなど!」
「は?」
(そんな金額を!)
金貨一枚で平民ならば働かなくても二か月は食べていける。
「なんと無礼な」
「ええ」
誰もが殺意を抱く。
エリーゼも、両親の図々しさとお金にがめつ過ぎるのを恥じた。
(いくらなんでもぼったくりだわ!)
いくらなんでも金貨千枚なんてやり過ぎだと思った。
なんせ自分は必要ないので体よく捨てる場所が欲しかっただけだろうと思っていたのだが…
「金貨千枚だと!安い!」
「安すぎですね」
「ええ、安すぎます」
エリーゼの思いとは反対に近衛騎士達は安すぎると思った。
(えっ?そっち?)
エリーゼは自分の価値がそこまで高いと思っていなかった。
金貨千枚でも十分ぼったくりと思ったが、金銭感覚も違うのかと思った。
「リゼ姫、我が帝国は貧しくはないが浪費家ではないぞ」
「え?」
「基本、王族や王侯貴族を娶る時にはその程度の金を出すのは当然じゃ。ただし、離縁されていない場合じゃがな」
(結納金ってことよね)
女性を嫁に貰う支度金のようなもので。
この世界では貴族令嬢が嫁に行く時は嫁ぐ側が支度金を持参するのが常識だったが、シュタイン家は一切支度金を支払うどころか嫁入り道具も、馬車ですら質素だった。
きわめつけ、森に置き去りだった。
「この老いぼれを随分と舐めてくれたわ。金貨千枚程度だとは…」
「問題そこではありません…そもそもあちらはご自身の立場を理解していませんね」
支度金を要求すること自体間違いなのにネイサンは要求した金額を上乗せしていた。
「申し訳ありません…本来ならば」
「良い、最初からわしもそのつもりじゃったからな。あの娘なら金貨十枚が精々じゃ」
「はい?」
今度はがくんと金額が落ちてしまったことに驚きを隠せなかった。
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