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第一章
47聖女の事情④
しおりを挟む神殿の生活は地獄だった。
目に見える暴力を受けたわけではないが、心を抉られるようだった。
10日後、神殿を出ることになり外に出ることが叶った。
(ようやく解放される…)
王宮に到着すれば解放されると思ったが待っていたのは蔑むような視線だった。
「聖女様、私達はここまでです」
「どうか王宮でもお元気で」
「うん…」
正直二度と会いたくなかった。
特に聖職者の筆頭には文句の一つでも言いたかった。
しかしテレサは知らなかった。
聖職者の筆頭である女性は意地悪で酷い言葉を放ち、厳しい修行をしいたわけではない。
王宮で生きていくのはもっと過酷だと教えたかったが、心を閉ざしているテレサには伝わる必要はない。
「最後の一つ」
「何ですか」
「王宮は魔の巣窟。信じる人は慎重に」
「は?」
王宮では新しい生活まっている。
聖職者達の閉ざされた考えを押し付けられることはないと思っていた。
なのに――
「見て、彼女が?」
「なんて品のない」
「平民でしょう?」
「何故女神はあんな…」
王宮に到着して謁見の間に行くまでの廊下で悪意をぶつけられる。
その後も多くの貴族に晒されて居心地の悪さは最悪だった。
神殿にいる間に必要最低限の教育はされたが、貴族としての振る舞い方なんて学んでいない。
焼石に水に付け焼刃だった。
息をすることもできず謁見のまでも言葉を放つことができず、王族にまともな挨拶ができずにいた。
その反応を見て、一部の貴族はテレサを侮辱した。
静観する貴族はいたが、誰も助けようとしなかった。
(どうして…)
王宮にくれば誰よりも大切にされると言われた。
なのに想像していたのと違う。
周りは敵だらけで国王も王女も見ているだけだった。
(もう帰りたい!)
聖女を辞めるなんて言えるわけもない。
言えばどんな目に合うか解らない。
唇を噛み締め、顔を俯かせる。
本人をそっちのけで話は進み、聞かされたのは。
「聖女テレサ、貴女はエスリード男爵家の養女になっていただきますわ」
「え?」
「聞いてなかったのですか。平民のままでは色々と問題があります」
「養子って…」
それでは家族に会えなくなるのではないか。
「歴代の聖女は身を守る為に貴族の養女になるのが安全ですわ」
「でも…」
「平民のままでは危険すぎるのです。とはいえ、高位貴族に養子に行くのも危険ですから男爵家に養子縁組します」
何を言っているか解らない。
「その間に淑女教育を受けていただきます。貴族達を納得させられるよう努力さない」
(努力?何を…)
何を頑張れというのか。
これまで耐えて来たのもう耐えられない。
「もう嫌です」
「は?」
耐え切れなかったテレサは思わず聖女を辞めたいと言葉にしてしまった。
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