聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません!

ユウ

文字の大きさ
上 下
47 / 117
第一章

46聖女の事情③

しおりを挟む



人の役に立ちたいという思いは嘘じゃない。
だけど自分は選ばれた特別な存在という言葉に浮かれていたのは事実だ。


聖女となり王宮に上がれることにわくわくした。


だけど夢は一瞬で冷めるのだ。
村を出てすぐに王都に入った後に神殿にて着替えをさせられた。


「これよりは身に着けている物はすべて処分いたします」

「え?」

「王宮は新鮮な場所。特に貴女様は王宮内にある聖女宮に入る以上は汚れた気を持ちこむことは許されません」

服は勿論の事。
髪留めペンダントもすべて没収された。

「待って…それは!」

母から送られた髪飾りにペンダントはフィリオから送られた大切な品だった。


「すべて燃やしなさい」

「止めて!」

目の前で炎の中に投げ込まれる。

「これからは聖女様として過ごすのです。髪飾りも装飾品も必要ありません。もっと相応しい品を」

「だからって…」

処分されるなんてあんまりだと涙を流そうとするも。

「簡単に泣くことは許されません」

「え?」

「貴女様は聖女様です。これよりは民の為、国の為に祈るのです。この程度の事で傷ついてはやっていけません」


村で見た時と異なる表情に唖然とする。
優しさの欠片もないのだ。


「湯浴みの準備を。体を清めるのです」

「「はい!」」

傍に控えていた侍女がテレサを連れて行く。
その間も言葉を交わすことなくただ作業を行うだけ。

まるで人形だった。
何を話しかけても同じ表情に同じ返事。


怖くて仕方なかった。


「準備は整いましたね聖女様」

「聖女様、さぁこちらに」

神殿では10日間を過ごした後に王宮に向かうがその間常に聖女と呼ばれテレサと呼ばれることは一度もなかった。


聖女としか呼ばれず、名前を呼ばれることがない事に怖くなった。
しかし反論は許されず、地獄の日々が始まった。


起床は夜明けと共に。
就寝はまだ暗くなる前の時間で、ずっと同じ部屋で監視されながら聖書に関して勉強を強要された。

「明日までにこれをすべて暗記してください」

「無理です…」

「無理?そんな言葉を言ってはなりません聖女様。できないという言葉は通じません」

「だって…こんなの」

聖書のように分厚い本が五冊。
暗記するには時間が足りないし、内容は難しいのだ。

「聖女様は一般教養がありません。急いで覚えなくてはなりません」

「私はお針なら…」

「そのようなもの役に立ちません。それに言葉になまりがあります。そのような言葉が聖女様に相応しくありません」

「でも…」

「なまりが出る言葉は話さないように。語学の勉強時間を増やします」


睡眠時間も削られるようになり、テレサは耐え忍ぶ時間が増えた。


誰もテレサなど見ていない。
必要なのは聖女の力を持つ少女だけだった。


しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

処理中です...