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35 官僚兼務の皇后様
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私がジェラルド様のクビ宣告にイラっとしながらも、皇太子宣言及び帝位即位式は終始お祝いムードで無事終わった。
皇帝ユリアン様が誕生したのだ。その新皇帝に、早速私は呼び出しをくらっていた――
「失礼します」
「待っていたよ、モニカ」
役目を終えたマスカレードマスクを指でもてあそび、麗しいご尊顔には笑みを湛えているが、ちょっと怖いユリアン様が執務室で私を待ち構えていた。
「モニカ。私の想いは花見が丘で伝えたと認識していたけれど、そこに齟齬はないかな?」
「はい。皇帝となってもユリアン様の人生を一番近くで見続けますし、あの日お伝えしたとおり、官僚としては勿論、私に出来ること全てでユリアン様にお仕えし、幸せになっていただく所存です」
「私のモニカへの想いは、今も募るばかりなんだよ? 欲ばかりが次々出てくるんだけれど」
「はい。私も毎日ユリアン様への想いが溢れ、はち切れてしまいそうです」
もう、あまり恥ずかしいことを言わせないでほしい。視界に入る自分の手は、指先まで赤く染まっているではないか。
「モニカ、私は突然兄上から譲られ皇太子となり、立場にゆっくり順応する間も無くこのレーヴァンダール帝国の皇帝になったのだよ」
「はい。まさかジェラルド様が皇位継承権を放棄なされるとは思いもよりませんでした」
「だから、私はただ一人の現役の皇族として、もう次の世継ぎを望まれてしまっているんだけれど……」
「次の世継ぎ……」
ユリアン様の懸念していた継承権争いは、もう起こる原因すらない……。皇帝となったからには、次の皇太子を望まれるお立場……。
(ユリアン様の子ども……)
「えっ。嫌です。ユリアン様がその……女性とだなんて……。耐えられません……」
「嫉妬してくれるのは嬉しいけれど、そんな話をしているんじゃないよ? モニカって、恋愛だけはポンコツだよね」
ユリアン様にポンコツ呼ばわりされてしまった。悲しい。
「ごめんね。さすがに私も公の場でフラれた感じがして、つい言い過ぎた。――コホン――モニカには官僚としてではなく、一人の女性として、というか、皇后として私を支えて欲しい」
「あっ……」
ということは――
「モニカ。婚約期間も短いものとなる。皇太子妃どころか、すぐ皇后にしてしまうね。それでもモニカなら、上手く立ち回ってくれると思っているんだ」
(わ、私が皇后……)
「卒業パーティーで申し込めずごめん。遅くなったけれど、モニカ・クラウスティン様、どうか私の婚約者になってください。そして、このレーヴァンダールの皇后として、私の側にずっと居てください」
――――
「はあっ!? 宝物庫の扉が開かないですって?」
「その……、細工を複雑にしてみたらしいのですが、前任者がよく引き継がぬまま退職して……。みだりに闇業者に宝物庫を見せるわけにも参りませんし……。皇后さまの火と風の複合魔法での鍵解除が一番適しているかと……」
財務課管理係の職員の要請に、私はすぐ動き出す。
ノーラさんとモーガンさんの二人が作った草案が通り、帝国は双子や多生児の男児の殺害を厳罰化した。その代わり、争いになった時には評価制度を導入し、家督を選ぶとしている。
そこにはお父様や小父様の賛成も大きく係わっていたらしい。
「加熱した後風を送って、鍵解除すれば良いわよね。ようしっ」
「おおっ!! さすが皇后さま! お見事です! 帝国一の解錠師!」
その時――
『モニカ主任……モニカ主任……』
宝物庫のある地下の階上から、私を呼ぶ声が聞こえる。遮蔽物があっても、私の集音魔法の精度は上がるばかり。私は急いで皇族部へと戻った。
「いや~。また、辺境の修道院より陳情が来ましてなぁっハッハッハッ」
レン課長の笑い声が課内に響き渡る。
旧皇子課は皇帝・皇后課に再編され、皇帝係と皇后係が設けられた。
「ドロテアがまた何かしたのですか?」
「慰問に訪れた辺境伯の御子息にその……」
はるばる帝都までやって来た修道女が、言い辛そうにしている。何度も何度もドロテア対応に関する陳情に訪れていて、気の毒になってきていた。
「ああ、惚れたのね……。トムさん、お願い出来ますか? いつも任せてしまって申し訳ないです。今度必ず、私が直接辺境に行きますので」
「いや~、ここまでくると、辺境で仲良くなった皆と会えるのが楽しみでしてな。お気になさらず」
さすが年功者。トムさんは私が気病みしないよう上手く言ってくれている。だが、本当に申し訳ないので、マサさん直伝の倍速を進化させた馬より早い移動で、必ず辺境に赴こう。
「モニカ主任。森のコテージのジェラルド様が、新しい画材を御所望のようです」
「モーガン次長、お願いしても大丈夫ですか?」
「義母と妻が私に構ってくれませんから、全く問題ありませんよ」
モーガンさんの言葉には大いに棘がある。
「ああ、可哀想ー。モーガン次長は奥さんが仕事に打ち込みすぎて、お預けをくらっているそうだねー。ノーラ皇后係長は俺と違って真面目だからなー」
ノーラさんはお母様のニナさんと二人で、ユリアン様と私の部屋付きをしている。その毎日が楽しいらしく、モーガンさんは放置気味らしい。
(ニナさんもノーラさんも、皆が言う程変わった人じゃないんだけれどな。ニナさんと初めてお会いした時、号泣されて驚いたけど……)
「て、マサ皇帝係長。平和で暇だからといって、サラ主任の仕事の邪魔をしないでください」
「あ、私なら大丈夫。柔な集中力してないから。マサ係長が絡んで来ても全然平気」
机に向かってバリバリ書類を捌くサラさん。
ここ最近、マサさんとサラさんの距離が近い。二人の行く末を私はそっと見守っていた。
この係で私の肩書きは主任だ。けれど皆、いちいち決裁を取るのが面倒らしく、決裁権者である皇后としての私の決定を仰いでくる。
「モニカ主任、ちょっといいかな?」
「お疲れ様です、ユリアン様。そちらはもう片付いたのですか?」
「ああ、貴族連中との会議は疲れたよ」
ユリアン様の後ろには、同じように疲れた顔の旧第一皇子係の職員の皆さんが連なる。
私の隣にいたココがユリアン様に駆け寄りお顔をベロベロと舐め回した。
「こ、ココ。止めなさいって! ああ!」
狼くらい大きく成長したココに、ユリアン様が押し倒される。皆に甘やかされ、ココは馬鹿――天真爛漫に育ってしまった。
ただ、要領がよく、本当に悪い事をしたりはしないし、ちゃんと加減を知っている。賢い子なのだ。そんなココが可愛いくて仕方ないのだから、私とユリアン様は本当に親馬鹿街道まっしぐらだ。
「皇后様~」
「今度は何でしょう?」
「ミカエル様がお父上を連れお見えになっています。孫はまだかと大騒ぎです。セオドア様からも文が」
急いでセオ兄様からの文に目を通す。
“モニカ……。エレナが学園を卒業したら、官僚になると言い始めた……。お願いだから、早く落ち着いてくれ”
「あっ。急に偏頭痛が……」
こんな時はお義兄様直伝の必殺技――体調不良だ!
ユリアン様と私は婚約し、色々片付けたり考えたりする時間もないまま私は皇后となった。
官僚となり、例え結婚できずともこの御方のお側に居ると固く決意したのだ。そして、その志は常に胸に抱き、今も忘れずにいる。
だからこそ、中途半端に官僚を辞めるなどしたくはなかった。
「モニカ。お義父さんとミカエルが来るのはマズイね。実はセオドアから私のところにも文が届いていたんだよ」
「ユリアン様! ここはジェラルド様直伝、体調不良を使いましょう。二人で一旦雲隠れです!」
「モニカには掛け持ちで無理をしてもらいたくないけれど、気が済むようにして欲しいんだ。だって私は、モニカが幸せそうにしていることが自分自身へのご褒美なのだからね」
「ユリアン様……」
今はもう、あのフルのマスカレードマスクを着ける事のないユリアン様のコバルト・バイオレットの瞳と、遮るものなく見つめ合える。
「もう少し官僚として、ここにいさせてください」
「良いよ、モニカ。我が愛しの人の仰せのままに」
私は今幸せだ。愛する人が側にいてくれるだけでなく、その方が治める国のため、皇后としてだけでなく官僚としても働けることが……。
(賑やかな官僚仲間も居てくれるしね)
子供は早めに欲しいと思うけれど、大丈夫。産前産後休暇もあるし、育休もある。万が一、お義父様やジェラルド様の体調に変化があっても、介護休暇だってあるのだ!
官僚万歳! 私モニカ・クラウスティン、官僚兼務の皇后として、愛する人のため働き続けます!
皇帝ユリアン様が誕生したのだ。その新皇帝に、早速私は呼び出しをくらっていた――
「失礼します」
「待っていたよ、モニカ」
役目を終えたマスカレードマスクを指でもてあそび、麗しいご尊顔には笑みを湛えているが、ちょっと怖いユリアン様が執務室で私を待ち構えていた。
「モニカ。私の想いは花見が丘で伝えたと認識していたけれど、そこに齟齬はないかな?」
「はい。皇帝となってもユリアン様の人生を一番近くで見続けますし、あの日お伝えしたとおり、官僚としては勿論、私に出来ること全てでユリアン様にお仕えし、幸せになっていただく所存です」
「私のモニカへの想いは、今も募るばかりなんだよ? 欲ばかりが次々出てくるんだけれど」
「はい。私も毎日ユリアン様への想いが溢れ、はち切れてしまいそうです」
もう、あまり恥ずかしいことを言わせないでほしい。視界に入る自分の手は、指先まで赤く染まっているではないか。
「モニカ、私は突然兄上から譲られ皇太子となり、立場にゆっくり順応する間も無くこのレーヴァンダール帝国の皇帝になったのだよ」
「はい。まさかジェラルド様が皇位継承権を放棄なされるとは思いもよりませんでした」
「だから、私はただ一人の現役の皇族として、もう次の世継ぎを望まれてしまっているんだけれど……」
「次の世継ぎ……」
ユリアン様の懸念していた継承権争いは、もう起こる原因すらない……。皇帝となったからには、次の皇太子を望まれるお立場……。
(ユリアン様の子ども……)
「えっ。嫌です。ユリアン様がその……女性とだなんて……。耐えられません……」
「嫉妬してくれるのは嬉しいけれど、そんな話をしているんじゃないよ? モニカって、恋愛だけはポンコツだよね」
ユリアン様にポンコツ呼ばわりされてしまった。悲しい。
「ごめんね。さすがに私も公の場でフラれた感じがして、つい言い過ぎた。――コホン――モニカには官僚としてではなく、一人の女性として、というか、皇后として私を支えて欲しい」
「あっ……」
ということは――
「モニカ。婚約期間も短いものとなる。皇太子妃どころか、すぐ皇后にしてしまうね。それでもモニカなら、上手く立ち回ってくれると思っているんだ」
(わ、私が皇后……)
「卒業パーティーで申し込めずごめん。遅くなったけれど、モニカ・クラウスティン様、どうか私の婚約者になってください。そして、このレーヴァンダールの皇后として、私の側にずっと居てください」
――――
「はあっ!? 宝物庫の扉が開かないですって?」
「その……、細工を複雑にしてみたらしいのですが、前任者がよく引き継がぬまま退職して……。みだりに闇業者に宝物庫を見せるわけにも参りませんし……。皇后さまの火と風の複合魔法での鍵解除が一番適しているかと……」
財務課管理係の職員の要請に、私はすぐ動き出す。
ノーラさんとモーガンさんの二人が作った草案が通り、帝国は双子や多生児の男児の殺害を厳罰化した。その代わり、争いになった時には評価制度を導入し、家督を選ぶとしている。
そこにはお父様や小父様の賛成も大きく係わっていたらしい。
「加熱した後風を送って、鍵解除すれば良いわよね。ようしっ」
「おおっ!! さすが皇后さま! お見事です! 帝国一の解錠師!」
その時――
『モニカ主任……モニカ主任……』
宝物庫のある地下の階上から、私を呼ぶ声が聞こえる。遮蔽物があっても、私の集音魔法の精度は上がるばかり。私は急いで皇族部へと戻った。
「いや~。また、辺境の修道院より陳情が来ましてなぁっハッハッハッ」
レン課長の笑い声が課内に響き渡る。
旧皇子課は皇帝・皇后課に再編され、皇帝係と皇后係が設けられた。
「ドロテアがまた何かしたのですか?」
「慰問に訪れた辺境伯の御子息にその……」
はるばる帝都までやって来た修道女が、言い辛そうにしている。何度も何度もドロテア対応に関する陳情に訪れていて、気の毒になってきていた。
「ああ、惚れたのね……。トムさん、お願い出来ますか? いつも任せてしまって申し訳ないです。今度必ず、私が直接辺境に行きますので」
「いや~、ここまでくると、辺境で仲良くなった皆と会えるのが楽しみでしてな。お気になさらず」
さすが年功者。トムさんは私が気病みしないよう上手く言ってくれている。だが、本当に申し訳ないので、マサさん直伝の倍速を進化させた馬より早い移動で、必ず辺境に赴こう。
「モニカ主任。森のコテージのジェラルド様が、新しい画材を御所望のようです」
「モーガン次長、お願いしても大丈夫ですか?」
「義母と妻が私に構ってくれませんから、全く問題ありませんよ」
モーガンさんの言葉には大いに棘がある。
「ああ、可哀想ー。モーガン次長は奥さんが仕事に打ち込みすぎて、お預けをくらっているそうだねー。ノーラ皇后係長は俺と違って真面目だからなー」
ノーラさんはお母様のニナさんと二人で、ユリアン様と私の部屋付きをしている。その毎日が楽しいらしく、モーガンさんは放置気味らしい。
(ニナさんもノーラさんも、皆が言う程変わった人じゃないんだけれどな。ニナさんと初めてお会いした時、号泣されて驚いたけど……)
「て、マサ皇帝係長。平和で暇だからといって、サラ主任の仕事の邪魔をしないでください」
「あ、私なら大丈夫。柔な集中力してないから。マサ係長が絡んで来ても全然平気」
机に向かってバリバリ書類を捌くサラさん。
ここ最近、マサさんとサラさんの距離が近い。二人の行く末を私はそっと見守っていた。
この係で私の肩書きは主任だ。けれど皆、いちいち決裁を取るのが面倒らしく、決裁権者である皇后としての私の決定を仰いでくる。
「モニカ主任、ちょっといいかな?」
「お疲れ様です、ユリアン様。そちらはもう片付いたのですか?」
「ああ、貴族連中との会議は疲れたよ」
ユリアン様の後ろには、同じように疲れた顔の旧第一皇子係の職員の皆さんが連なる。
私の隣にいたココがユリアン様に駆け寄りお顔をベロベロと舐め回した。
「こ、ココ。止めなさいって! ああ!」
狼くらい大きく成長したココに、ユリアン様が押し倒される。皆に甘やかされ、ココは馬鹿――天真爛漫に育ってしまった。
ただ、要領がよく、本当に悪い事をしたりはしないし、ちゃんと加減を知っている。賢い子なのだ。そんなココが可愛いくて仕方ないのだから、私とユリアン様は本当に親馬鹿街道まっしぐらだ。
「皇后様~」
「今度は何でしょう?」
「ミカエル様がお父上を連れお見えになっています。孫はまだかと大騒ぎです。セオドア様からも文が」
急いでセオ兄様からの文に目を通す。
“モニカ……。エレナが学園を卒業したら、官僚になると言い始めた……。お願いだから、早く落ち着いてくれ”
「あっ。急に偏頭痛が……」
こんな時はお義兄様直伝の必殺技――体調不良だ!
ユリアン様と私は婚約し、色々片付けたり考えたりする時間もないまま私は皇后となった。
官僚となり、例え結婚できずともこの御方のお側に居ると固く決意したのだ。そして、その志は常に胸に抱き、今も忘れずにいる。
だからこそ、中途半端に官僚を辞めるなどしたくはなかった。
「モニカ。お義父さんとミカエルが来るのはマズイね。実はセオドアから私のところにも文が届いていたんだよ」
「ユリアン様! ここはジェラルド様直伝、体調不良を使いましょう。二人で一旦雲隠れです!」
「モニカには掛け持ちで無理をしてもらいたくないけれど、気が済むようにして欲しいんだ。だって私は、モニカが幸せそうにしていることが自分自身へのご褒美なのだからね」
「ユリアン様……」
今はもう、あのフルのマスカレードマスクを着ける事のないユリアン様のコバルト・バイオレットの瞳と、遮るものなく見つめ合える。
「もう少し官僚として、ここにいさせてください」
「良いよ、モニカ。我が愛しの人の仰せのままに」
私は今幸せだ。愛する人が側にいてくれるだけでなく、その方が治める国のため、皇后としてだけでなく官僚としても働けることが……。
(賑やかな官僚仲間も居てくれるしね)
子供は早めに欲しいと思うけれど、大丈夫。産前産後休暇もあるし、育休もある。万が一、お義父様やジェラルド様の体調に変化があっても、介護休暇だってあるのだ!
官僚万歳! 私モニカ・クラウスティン、官僚兼務の皇后として、愛する人のため働き続けます!
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コークハイ様、はじめまして
最後まで読んでくださり、また、感想までいただき、本当にありがとうございます
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