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16 皇女は叶える

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「おとーさま?」

 いきなりの父親の独白に、セレスティアは床に座り込んだまま首を傾げた。

「フロンティアは私が母上の死なれて投げやりになっていた時に、私に向けてこう言ったんだ。『わたくしを置いて逝かないで!!』って。今のお前みたいに叫んだんだ」
「………わたしはおかーさまみたく、優しくありませんし、弱くもありません」
「………………セレスは優しいよ。それに、フロンティアは決して弱い女性ではなかった」

 セレスティアは父親の言葉の真意を探ろうと、お酒に酔ってやや虚ろになっている瞳をじっと見つめた。

「私はお前のことが心配だ。皇位を継いだことによって心が壊れてしまうのではないかと心配なのだ」
「わたしは壊れません」
「………」

 無言を貫く父親を説得しようと、セレスティアは涙を拭いて立ち上がり、深々と頭を下げた。

「お願いです、父上。わたしに皇位を継がせてください。父上や母上が守った皇国を今度はわたしが守りたいのです。お願いします」
「………………本気なのだな」
「はい」
「………分かった。協力しよう」

 セレスティアはパッと顔を上げて表情を輝かせた。父親は困ったものを見るような渋い顔をしていた。悪い事をしたなと思いながらも、セレスティアは心から微笑んだ。

「ありがとうございます!!」
「………しばらく私は死ねんな」
「死なれては困ります。ちゃんと孫のお名前もつけて頂かないと」
「それは旦那につけてもらえ」

 セレスティアは嬉しそうに無邪気に笑った。
 その笑顔は、フロンティアが亡くなって以来、失われていた彼女本来の笑みだった。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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