女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

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そして1限目の講義が終わり、時刻は午前10時21分。
僕は他の学生の群衆に入り混じって《大学創立50周年記念館》へと向かう。
鈴ちゃんの講演はもう始まってる…はず。

『記念館を使えるのは午前10時から正午までの2時間』というなかで、鈴ちゃんは『私は10時から1時間講演をするから、信吾くんの復讐はそのあとの1時間で』って言ってたな…。

学生群衆に混ざって館内に入り、そのまま2階へと上がっていく…。



開きっ放しの演劇ホールの扉。ホール内に響く鈴ちゃんの講義の声が廊下まで響いて聞こえてくる。
時々、女学生たちの笑い声も混じって聞こえてくるから、堅苦しい講演ってよりは、楽しく雑談を混ぜた講演みたい。

僕は扉から、ちらっと覗いてホールの中を様子見する…なるほど。


『では、10時30分をちょっと過ぎたので、ここで一組目のゲストをお呼びしたいと思います…ね。誰だか気になるでしょ?』


僕はホールには入らず、そのまま廊下を進んで右へ進み、角で左に曲がって更に奥へと進む…。


『では…早速お呼びしますね。私と同じ事務所に所属している、ベテラン俳優の浅見丈彦あさみたけひこさんと、若手女優の寺本陽凪てらもとひなぎちゃんのお二人でーす!どうぞー。こっち来てー』


聞こえてくる鈴ちゃんの声と、女学生たちの拍手喝采が聞こえるなか、僕は振り向きもせず、長い廊下の突き当たりのドアを開けて中へと入った。


『詩織!お待たせ!』

『あ、信吾。お疲れさまー』


ステージ出演者用の控え室。詩織が待ってい…!


『待ってたぜ。信吾』
『今日が本当に本当の最後だ。頑張ろうな』
『いちおうね、私もいるよ。弟くん!』

『秋良さん…それと啓介さんと歩美さん…!』


詩織は、あの黒猫ポンチョとお尻の破れたショートパンツ、それにそのポンチョの中に着る白っぽいTシャツを僕に差し出した。


『これに着替えて。メイクは…段取り解ってるよね?』

『うん。大丈夫』


そして、僕はチラリと歩美さんを見た…!


『歩美さん、その後ろ髪…僕に』

『そっくりでしょ。切っちゃったの。金魚ちゃんに似せるために』

『えっ?ど、どういうこと…?詩織』


詩織は、いつもの甲高い声で『きゃはははは♪』って笑ってた。







『えー…。私も来年が俳優生活ちょうど40周年…今日は勤労感謝の日ということで、そんな俳優生活の思い出話も少し…』


マイクを通して響く、ベテラン俳優の浅見さんの声が聞こえる。


『信吾、いい?鈴ちゃんに《詩織と金魚》が呼ばれたら、私と鮎美ちゃんがステージに上がるから、あなたはステージの袖まで来て、そこで待ってて』

『…って、そういうことなの。信吾くん』
『わはははは。お前には内緒で、この段取りを俺が考えたんだ!どうだ?』


大笑いする秋良さん。
僕は背中を向けて着替えながら、振り向いて秋良さんをチラッと見た。






『はーい。皆さんこんにちはー。女優の寺本陽凪です…』


聞こえてきた寺本陽凪さんの声。その挨拶と同時に、ホールの大きな拍手もまた聞こえてきた。


『陽凪さんのお話が終わったら段取りよ。信吾』

『うん。もうすぐだね…少し緊張する…』






『私のこと…知らないって子、居ないよね?ね?映画とかも結構出てるんだけど』

「知ってるー」
「知ってまーす」
「大ファンでーす」
「美人でかわいい。大好きー」

『良かったぁ…ってね。実はこんな小心者なんですけど。あはははは』
























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