上 下
473 / 490
女装と復讐 -完結編-

page.462

しおりを挟む
そして1限目の講義が終わり、時刻は午前10時21分。
僕は他の学生の群衆に入り混じって《大学創立50周年記念館》へと向かう。
鈴ちゃんの講演はもう始まってる…はず。

『記念館を使えるのは午前10時から正午までの2時間』というなかで、鈴ちゃんは『私は10時から1時間講演をするから、信吾くんの復讐はそのあとの1時間で』って言ってたな…。

学生群衆に混ざって館内に入り、そのまま2階へと上がっていく…。



開きっ放しの演劇ホールの扉。ホール内に響く鈴ちゃんの講義の声が廊下まで響いて聞こえてくる。
時々、女学生たちの笑い声も混じって聞こえてくるから、堅苦しい講演ってよりは、楽しく雑談を混ぜた講演みたい。

僕は扉から、ちらっと覗いてホールの中を様子見する…なるほど。


『では、10時30分をちょっと過ぎたので、ここで一組目のゲストをお呼びしたいと思います…ね。誰だか気になるでしょ?』


僕はホールには入らず、そのまま廊下を進んで右へ進み、角で左に曲がって更に奥へと進む…。


『では…早速お呼びしますね。私と同じ事務所に所属している、ベテラン俳優の浅見丈彦あさみたけひこさんと、若手女優の寺本陽凪てらもとひなぎちゃんのお二人でーす!どうぞー。こっち来てー』


聞こえてくる鈴ちゃんの声と、女学生たちの拍手喝采が聞こえるなか、僕は振り向きもせず、長い廊下の突き当たりのドアを開けて中へと入った。


『詩織!お待たせ!』

『あ、信吾。お疲れさまー』


ステージ出演者用の控え室。詩織が待ってい…!


『待ってたぜ。信吾』
『今日が本当に本当の最後だ。頑張ろうな』
『いちおうね、私もいるよ。弟くん!』

『秋良さん…それと啓介さんと歩美さん…!』


詩織は、あの黒猫ポンチョとお尻の破れたショートパンツ、それにそのポンチョの中に着る白っぽいTシャツを僕に差し出した。


『これに着替えて。メイクは…段取り解ってるよね?』

『うん。大丈夫』


そして、僕はチラリと歩美さんを見た…!


『歩美さん、その後ろ髪…僕に』

『そっくりでしょ。切っちゃったの。金魚ちゃんに似せるために』

『えっ?ど、どういうこと…?詩織』


詩織は、いつもの甲高い声で『きゃはははは♪』って笑ってた。







『えー…。私も来年が俳優生活ちょうど40周年…今日は勤労感謝の日ということで、そんな俳優生活の思い出話も少し…』


マイクを通して響く、ベテラン俳優の浅見さんの声が聞こえる。


『信吾、いい?鈴ちゃんに《詩織と金魚》が呼ばれたら、私と鮎美ちゃんがステージに上がるから、あなたはステージの袖まで来て、そこで待ってて』

『…って、そういうことなの。信吾くん』
『わはははは。お前には内緒で、この段取りを俺が考えたんだ!どうだ?』


大笑いする秋良さん。
僕は背中を向けて着替えながら、振り向いて秋良さんをチラッと見た。






『はーい。皆さんこんにちはー。女優の寺本陽凪です…』


聞こえてきた寺本陽凪さんの声。その挨拶と同時に、ホールの大きな拍手もまた聞こえてきた。


『陽凪さんのお話が終わったら段取りよ。信吾』

『うん。もうすぐだね…少し緊張する…』






『私のこと…知らないって子、居ないよね?ね?映画とかも結構出てるんだけど』

「知ってるー」
「知ってまーす」
「大ファンでーす」
「美人でかわいい。大好きー」

『良かったぁ…ってね。実はこんな小心者なんですけど。あはははは』
























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

処理中です...