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女装と復讐 -完結編-
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『この近くにバンガローで泊まれる、けっこう大きいキャンプ場があるし、ゴルフ場も…スキー場も幾つかあるんだ』
『ふんふん…で?』
…で?って…。
『それで、キャンプ場に泊まるお客さんとか、ゴルフやスキーのお客さんとかが、たくさん利用するからこれだけ広いってのもあるし…』
『…るし…?』
詩織は悪気のない、無邪気な笑顔。そしてソフトクリームをまた一口ペロッ。
『夏は…ってか毎年8月14日は、この駐車場で打ち上げ花火もするから。だから広…』
『8月14日に、ここで打ち上げ花火してたの!?あー。見たかったなー…』
詩織のことだから『信吾…なんで教えてくれなかったのよ!』とか言いそうなんで、僕は何か別の話題を振ろうとした…。
『じゃあ…信吾。空を見上げて』
…えっ?…うん。
僕は詩織に言われたとおりに、頭上に高く広がる夜空を見上げる。
『藤浦と違って、ここの夜空は星がいっぱい…ピカピカ光ってて綺麗ね』
『うん』
『そして深く想像してみて…想像力の練習よ』
…想像力の練習?
『ほら…ドーンって。丸くて大きな花火が夜空に打ち上がって…赤や金や緑色にキラキラと輝きながら…ゆっくりと暗い夜空に輝きが溶けていく…』
夜空に負けないぐらいキラキラした目で、詩織は僕を見た。
『…ね。想像できた?私はできたよ。大っきな花火の爆発音もリアルに聞こえたよ…ってぐらい』
うーん。僕は…できてない。
『じゃあ、もーっと想像力に集中して…昔見た花火のことも思い出すの。この練習は、何かの演技をするときに、きっと役に立つから』
『うん…わかった。やってみる』
『きゃははは…あっ!じゃあ浴衣姿の私が隣にいることも想像に加えてみて。そして集中して…深く想像して…《精神を研ぎ澄み極めし念想は、最早体感せる現実と成る》なんて難しい言葉…』
集中…見上げたまま、目を閉じて…深く、深く…想像…。
『…振りね。私たち』
『えっ?』
少し驚いて、僕の右隣に居るはずの詩織を見…んっ?詩織…消えた…!?
『ねぇ、どっち見てるのよ。信吾』
…!
声の聞こえた逆の左方を見ると…詩織はこっちに瞬間移動して…た?
後ろ髪を結って、確かに紺色の浴衣を着てる詩織…けど、なんだか…少し年齢を経たように見える…。
『だから、ここで花火を見るの7年振りね…って。ねぇ聞いてる…?』
『あぁ…ごめん』
『どうしたの?急にぼーっとしちゃって…あははは』
その詩織は…左手に握っていた和扇で口元を隠しながら、上品に笑ってた。
急にドーンと大きな爆発音が聞こえて、夜空に大きな花火が上がった…少し驚いた。
『ねぇ…瑠琉がね、《私のお母さんが、あの大物女優の岡本詩織だってバレちゃったら、早瀬ヶ池で1番になる私の計画は、ぜーんぶお終いなんだから!》って。あの子張り切ってるのよ。普通の女の子として早瀬ヶ池で1番の女の子になるんだ!って。あははは』
笑い声…どうしたの?詩織。
あの甲高い笑い声が、今夜はなんだか大人っぽく、凄く落ち着いてる…。
『ふんふん…で?』
…で?って…。
『それで、キャンプ場に泊まるお客さんとか、ゴルフやスキーのお客さんとかが、たくさん利用するからこれだけ広いってのもあるし…』
『…るし…?』
詩織は悪気のない、無邪気な笑顔。そしてソフトクリームをまた一口ペロッ。
『夏は…ってか毎年8月14日は、この駐車場で打ち上げ花火もするから。だから広…』
『8月14日に、ここで打ち上げ花火してたの!?あー。見たかったなー…』
詩織のことだから『信吾…なんで教えてくれなかったのよ!』とか言いそうなんで、僕は何か別の話題を振ろうとした…。
『じゃあ…信吾。空を見上げて』
…えっ?…うん。
僕は詩織に言われたとおりに、頭上に高く広がる夜空を見上げる。
『藤浦と違って、ここの夜空は星がいっぱい…ピカピカ光ってて綺麗ね』
『うん』
『そして深く想像してみて…想像力の練習よ』
…想像力の練習?
『ほら…ドーンって。丸くて大きな花火が夜空に打ち上がって…赤や金や緑色にキラキラと輝きながら…ゆっくりと暗い夜空に輝きが溶けていく…』
夜空に負けないぐらいキラキラした目で、詩織は僕を見た。
『…ね。想像できた?私はできたよ。大っきな花火の爆発音もリアルに聞こえたよ…ってぐらい』
うーん。僕は…できてない。
『じゃあ、もーっと想像力に集中して…昔見た花火のことも思い出すの。この練習は、何かの演技をするときに、きっと役に立つから』
『うん…わかった。やってみる』
『きゃははは…あっ!じゃあ浴衣姿の私が隣にいることも想像に加えてみて。そして集中して…深く想像して…《精神を研ぎ澄み極めし念想は、最早体感せる現実と成る》なんて難しい言葉…』
集中…見上げたまま、目を閉じて…深く、深く…想像…。
『…振りね。私たち』
『えっ?』
少し驚いて、僕の右隣に居るはずの詩織を見…んっ?詩織…消えた…!?
『ねぇ、どっち見てるのよ。信吾』
…!
声の聞こえた逆の左方を見ると…詩織はこっちに瞬間移動して…た?
後ろ髪を結って、確かに紺色の浴衣を着てる詩織…けど、なんだか…少し年齢を経たように見える…。
『だから、ここで花火を見るの7年振りね…って。ねぇ聞いてる…?』
『あぁ…ごめん』
『どうしたの?急にぼーっとしちゃって…あははは』
その詩織は…左手に握っていた和扇で口元を隠しながら、上品に笑ってた。
急にドーンと大きな爆発音が聞こえて、夜空に大きな花火が上がった…少し驚いた。
『ねぇ…瑠琉がね、《私のお母さんが、あの大物女優の岡本詩織だってバレちゃったら、早瀬ヶ池で1番になる私の計画は、ぜーんぶお終いなんだから!》って。あの子張り切ってるのよ。普通の女の子として早瀬ヶ池で1番の女の子になるんだ!って。あははは』
笑い声…どうしたの?詩織。
あの甲高い笑い声が、今夜はなんだか大人っぽく、凄く落ち着いてる…。
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