女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -完結編-

page.399

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僕はびっくりし過ぎて、目を大きく見開き真んまるにして、詩織を見た!…んだけど、詩織だって僕に負けないくらい、大きく真ん円な目をしてた…。


『篠崎さんは、雄二くんとお知り合いなの?』

『えぇ。まぁ…』


アンナさんは上品に微笑みながら…でも少し戸惑いをも含めたように、小さく頷いて冴嶋社長に返した。

えぇ…まぁ…って。

本当は今僕らが居る、この美容院クローシュ・ドレを、雄二さんがアンナさんにプレゼントしたってほどの《親密な恋仲関係》なのに…。


『中澤…さんは現在、主にフランスで生活し…今までどおりプロのカメラマンとして、精力的に活動してると聞いています』


…なんですが、実は年に4回…3ヶ月ごとに、僕らに美味しい高級お寿司や、高級焼肉や、高級カニ鍋とかを食べさせてくれるために、フランスから日本に帰国してくれています…じゃなくて、詩織の《G.F.》モデルの撮影のために。

んまぁ…ってのは、内緒の情報なんですが。


『篠崎さんが雄二くんと、今後もし会ってお話しするような機会があったら…冴嶋美智子が《あの頃のことを会って謝りたい》と言っていたと、雄二くんにお伝えを…お願いできますか?』

『はい。承りました…』


…と、アンナさんは一旦返答をしたあと…。


『…ですが冴嶋社長、その件についてなんですが…』

『?』


冴嶋社長は、少し不安気な眼差しでアンナさんを見た。


『彼はもうあの頃のことを…という以前に、当時から冴嶋社長のことを、本当は全く悪くなんて思ってなかったと、中澤さんは言っていました』


そのアンナさんの言葉を聞いて、コクリと小さく息を呑んだ冴島社長。


『本当なの?でも、そのお言葉…私、本当に信じてもいいの…?』

『ご安心ください』


アンナさんは冴嶋社長に、また優し気に笑って見せた。


『ではお訊きしますが、彼が冴嶋社長の目の前から忽然と消え去ってしまったのと、丹羽鈴ちゃんを社長にご紹介したのと…どちらが先で後だったのか…憶えていらっしゃいますか?』

『えっ?…えっと…たしか…』


冴嶋社長は黙り込み、少し考えはじめた…。






《コン、コン、コン♪》

玄関扉をノックする音…それが美容院の室内に響き渡った。


「お待たせ致しました。《おばタク》でございます…」

『あ、はーい』


詩織がアンナさんに代わって応じ、玄関扉を開けてあげる。

扉が開くとともに、さらさらと緩やかに降り続く雨音も、室内へと入ってきた。


『岡ちゃん、お疲れさまー。どうぞ入って』

『はい。失礼致します』






『…篠崎さん。なるほど…そうだったわね。ありがとう』

『では…』


鈴ちゃんは『…社長のお見送り、行ってきます』と、軽く会釈して冴嶋社長と岡ちゃんとともに、美容院クローシュ・ドレを出ていった。























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