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女装と復讐 -完結編-
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冴嶋社長はアンナさんを見た。
『篠崎さん、わざわざ休業してまで、私たちに面会の場を貸し与えていただけて、本当に申し訳なかったわ』
アンナさんも立ち上がった。
『いえいえ。こちらこそ、大したおもてなしさえ差し上げられず、たいへん申し訳…』
『そんな滅相もないわ。ケーキも紅茶も美味しかったし、十分過ぎるほどの振る舞いを頂いたし。本当にありがとう』
お互い謙遜し合っている、冴嶋社長とアンナさん。
冴嶋社長は『明日の午前8時までに、済まさなければならない仕事が残っているから』と、もう帰社すると僕らに言った。
『では私は新井早瀬駅まで、冴嶋社長をお見送りしてきます』
鈴ちゃんも立ち上がり、そしてiPhoneで電話をし始めた。
『詩織ちゃん、信吾くん』
『はい』
『はい』
『今度はどこか、都内の美味しいお店に、私と鈴との4人でお食事に行きましょう』
冴嶋社長は、なんだか意味あり気に、僕らに優しく微笑んだ。
『社長。《おばタク》の岡本さんですが、他用ですぐ近くにこられているそうで、5分ほどで来て頂けるとのことです』
『ありがとう。鈴』
アンナさんが一歩前に出た。
『…冴嶋社長さま、それと鈴ちゃん。最後にひとつだけ、お訊きしても宜しいですか?』
『えぇ。お訊きしたいことって、何かしら?篠崎さん』
『お二人は…《中澤雄二》という、プロのカメラマンをご存知ですか?』
…えっ?
なんでアンナさん…今、急に雄二さんの名前を…?
鈴ちゃんは、その表情からして…雄二さんのことは、よく知らないみたい。
けど、冴嶋社長は…。
その名前を聞いて、ハッとしたように驚いてる…!?
『え…えぇ。雄二くんのことは知ってるもなにも、彼がまだ若手のカメラマンだった頃は、うちの所属タレントの撮影を専属でよく頼んでたのよ』
へぇ…そうなんだ…。
…と、ここまでは特に何もそこまで驚かされる要素はなかった。
『ほら、鈴だって雄二くんのこと、知ってるじゃないの』
鈴ちゃんが表情を曇らせる。
『社長。でも私、そのカメラマンの方のこと…本当にあまり存じ上げてな…』
『何を言ってるの。鈴ったら!』
『えっ?』
未だ、冴嶋社長と鈴ちゃんのそのやり取りを、黙ってじっと見ている僕と詩織。
『鈴。あなたを私の事務所に紹介してくれた人じゃないの!あなたの恩人でしょ。雄二くんは』
…えぇーっ!?
『えっ!?その方だったんですか!?私を冴島プロダクションに推薦してくれた人って…!』
急に驚いた表情へと変わった鈴ちゃん。
聞いてた僕だって、めちゃくちゃ驚いたし!
『そうだったんですね。中澤…雄二さん。けど私、そのカメラマンさんに、そのときのお礼…まだ一度も言えてません…。芸能界デビューしてから、もう8年も経ったっていうのに…』
『篠崎さん、わざわざ休業してまで、私たちに面会の場を貸し与えていただけて、本当に申し訳なかったわ』
アンナさんも立ち上がった。
『いえいえ。こちらこそ、大したおもてなしさえ差し上げられず、たいへん申し訳…』
『そんな滅相もないわ。ケーキも紅茶も美味しかったし、十分過ぎるほどの振る舞いを頂いたし。本当にありがとう』
お互い謙遜し合っている、冴嶋社長とアンナさん。
冴嶋社長は『明日の午前8時までに、済まさなければならない仕事が残っているから』と、もう帰社すると僕らに言った。
『では私は新井早瀬駅まで、冴嶋社長をお見送りしてきます』
鈴ちゃんも立ち上がり、そしてiPhoneで電話をし始めた。
『詩織ちゃん、信吾くん』
『はい』
『はい』
『今度はどこか、都内の美味しいお店に、私と鈴との4人でお食事に行きましょう』
冴嶋社長は、なんだか意味あり気に、僕らに優しく微笑んだ。
『社長。《おばタク》の岡本さんですが、他用ですぐ近くにこられているそうで、5分ほどで来て頂けるとのことです』
『ありがとう。鈴』
アンナさんが一歩前に出た。
『…冴嶋社長さま、それと鈴ちゃん。最後にひとつだけ、お訊きしても宜しいですか?』
『えぇ。お訊きしたいことって、何かしら?篠崎さん』
『お二人は…《中澤雄二》という、プロのカメラマンをご存知ですか?』
…えっ?
なんでアンナさん…今、急に雄二さんの名前を…?
鈴ちゃんは、その表情からして…雄二さんのことは、よく知らないみたい。
けど、冴嶋社長は…。
その名前を聞いて、ハッとしたように驚いてる…!?
『え…えぇ。雄二くんのことは知ってるもなにも、彼がまだ若手のカメラマンだった頃は、うちの所属タレントの撮影を専属でよく頼んでたのよ』
へぇ…そうなんだ…。
…と、ここまでは特に何もそこまで驚かされる要素はなかった。
『ほら、鈴だって雄二くんのこと、知ってるじゃないの』
鈴ちゃんが表情を曇らせる。
『社長。でも私、そのカメラマンの方のこと…本当にあまり存じ上げてな…』
『何を言ってるの。鈴ったら!』
『えっ?』
未だ、冴嶋社長と鈴ちゃんのそのやり取りを、黙ってじっと見ている僕と詩織。
『鈴。あなたを私の事務所に紹介してくれた人じゃないの!あなたの恩人でしょ。雄二くんは』
…えぇーっ!?
『えっ!?その方だったんですか!?私を冴島プロダクションに推薦してくれた人って…!』
急に驚いた表情へと変わった鈴ちゃん。
聞いてた僕だって、めちゃくちゃ驚いたし!
『そうだったんですね。中澤…雄二さん。けど私、そのカメラマンさんに、そのときのお礼…まだ一度も言えてません…。芸能界デビューしてから、もう8年も経ったっていうのに…』
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