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女装と復讐 -完結編-
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『ねぇ、アンナさん…』
この美容院に今居るのは、僕と詩織とアンナさんの3人。
詩織がアンナさんの方を振り向き見た。
『冴嶋社長と雄二さんって、過去になにかあったの?喧嘩したとか?』
『ううん。《とある騒動》がね…』
とある…騒動?
アンナさんは雄二さんから聞いた、雄二さんが若かった頃の話を、僕らに詳しく話してくれた。
長かったその話を、少し縮約して説明すると…。
…新人のプロカメラマンとして駆け出したばかりで、ほぼ無職に近かった22歳の雄二さんに、冴嶋社長のほうから仕事依頼のお声が掛かった。
…とはいうものの、冴嶋社長も当時は29歳と若く、芸能事務所《冴嶋プロダクション》を立ち上げてから、まだ3年しか経っていなかった…。
冴嶋社長から雄二さんへの仕事依頼…それは、これからアイドルとして売り出そうと考えていた、17歳の女の子の《水着撮影》。
実は雄二さんは…其れまで女の子の水着撮影なんて、一度もしたことはなかった。
それでも、撮影に立ち会った冴嶋社長の厳しい指導もあって、なんとか撮影は無事に終了。
その撮影のあと、雄二さんは冴嶋社長に『自分は水着撮影やりも、洋服姿の女の子の撮影にのほうが得意』『もう一度、今度は彼女に可愛らしい洋服を着させて、別の場所で撮らせてほしい』と願い出た。
日を改めて、雄二さんはその女の子を連れて、都内某所の緑地公園へ。
お昼前から夕暮れまで、女の子を全力で撮りに撮りまくった…。
更に数日後。緑地公園であの女の子を撮った雄二さんの写真230枚を、冴嶋社長は見て驚いた。
女の子の少し照れた可愛らしい表情や動体や姿勢と、風に靡く長い後ろ髪やワンピースの緩やかな動き…太陽の位置と影とが成す立体美…公園の木々の奥に映えるビル群などの背景…。
その完成された写真構図のあちこちに、雄二さんのカメラマンとしてのセンスが窺えた。
正面からの撮影はもちろんだけど…雄二さんは特に、光と影とを魅せる女の子の横顔を、美しく綺麗に写真に収められることを得意としていた。
これは凄い…とても素晴らしい…。
先日の水着写真とは…申し訳ないけど、比べ物にはならないほどに…。
この写真100枚だけで、十分に写真集として販売できそう…ってくらい。
まだ22歳だというのに…彼は既に本物…!
冴嶋社長は雄二さんを高く評価し、大いに絶賛。
けれど、使われたのは水着撮影のときの写真だけ。緑地公園で撮影した写真は1枚も、世に出ることはなかった…。
冴嶋社長は雄二さんへの撮影依頼の報酬額を増やし、代わりに他の芸能事務所からの撮影依頼は絶対に請け負わないようにと、強くお願いしていた。
それ以降も雄二さんの苦手とする、女の子の水着撮影の依頼はやっぱり絶えず続き、無くなることはなかった。
それでも、以前に雄二さんが冴嶋社長に直接願い出た《洋服着用での撮影》は徐々に増えていった。
女の子だけじゃない。老若に関わらず男性被写体の撮影なども、積極的に請け負っていった。
冴嶋社長も、雄二さんのカメラマンとしての《才覚発揮の法則》をもう熟知し、撮影の度に何度も再確認させられた。
この美容院に今居るのは、僕と詩織とアンナさんの3人。
詩織がアンナさんの方を振り向き見た。
『冴嶋社長と雄二さんって、過去になにかあったの?喧嘩したとか?』
『ううん。《とある騒動》がね…』
とある…騒動?
アンナさんは雄二さんから聞いた、雄二さんが若かった頃の話を、僕らに詳しく話してくれた。
長かったその話を、少し縮約して説明すると…。
…新人のプロカメラマンとして駆け出したばかりで、ほぼ無職に近かった22歳の雄二さんに、冴嶋社長のほうから仕事依頼のお声が掛かった。
…とはいうものの、冴嶋社長も当時は29歳と若く、芸能事務所《冴嶋プロダクション》を立ち上げてから、まだ3年しか経っていなかった…。
冴嶋社長から雄二さんへの仕事依頼…それは、これからアイドルとして売り出そうと考えていた、17歳の女の子の《水着撮影》。
実は雄二さんは…其れまで女の子の水着撮影なんて、一度もしたことはなかった。
それでも、撮影に立ち会った冴嶋社長の厳しい指導もあって、なんとか撮影は無事に終了。
その撮影のあと、雄二さんは冴嶋社長に『自分は水着撮影やりも、洋服姿の女の子の撮影にのほうが得意』『もう一度、今度は彼女に可愛らしい洋服を着させて、別の場所で撮らせてほしい』と願い出た。
日を改めて、雄二さんはその女の子を連れて、都内某所の緑地公園へ。
お昼前から夕暮れまで、女の子を全力で撮りに撮りまくった…。
更に数日後。緑地公園であの女の子を撮った雄二さんの写真230枚を、冴嶋社長は見て驚いた。
女の子の少し照れた可愛らしい表情や動体や姿勢と、風に靡く長い後ろ髪やワンピースの緩やかな動き…太陽の位置と影とが成す立体美…公園の木々の奥に映えるビル群などの背景…。
その完成された写真構図のあちこちに、雄二さんのカメラマンとしてのセンスが窺えた。
正面からの撮影はもちろんだけど…雄二さんは特に、光と影とを魅せる女の子の横顔を、美しく綺麗に写真に収められることを得意としていた。
これは凄い…とても素晴らしい…。
先日の水着写真とは…申し訳ないけど、比べ物にはならないほどに…。
この写真100枚だけで、十分に写真集として販売できそう…ってくらい。
まだ22歳だというのに…彼は既に本物…!
冴嶋社長は雄二さんを高く評価し、大いに絶賛。
けれど、使われたのは水着撮影のときの写真だけ。緑地公園で撮影した写真は1枚も、世に出ることはなかった…。
冴嶋社長は雄二さんへの撮影依頼の報酬額を増やし、代わりに他の芸能事務所からの撮影依頼は絶対に請け負わないようにと、強くお願いしていた。
それ以降も雄二さんの苦手とする、女の子の水着撮影の依頼はやっぱり絶えず続き、無くなることはなかった。
それでも、以前に雄二さんが冴嶋社長に直接願い出た《洋服着用での撮影》は徐々に増えていった。
女の子だけじゃない。老若に関わらず男性被写体の撮影なども、積極的に請け負っていった。
冴嶋社長も、雄二さんのカメラマンとしての《才覚発揮の法則》をもう熟知し、撮影の度に何度も再確認させられた。
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