女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -街華編-

page.324

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ちょうど運良く《おばタク》への送迎業務依頼のない時間帯だった。今からすぐ来てくれるという。


『じゃあ、ちょっと待っててね。お勘定済ませてくるから』

『あっ!鈴ちゃん待って!!』


歩美さんの隣に座っていた鈴ちゃんはスッと席を立ち、詩織の制止に応えずレジカウンターへ。

隣の鈴ちゃんが居なくなると、歩美さんの体がゆっくりと倒れだした。

詩織はバッグを僕に預け、歩美さんの隣へ慌てて移動。眠気によってフラフラと首の据わらない歩美さんの肩を、詩織は自分の肩へと持たせ掛けて支えてやった。






支払いを済ませ、戻ってきた鈴ちゃん。今度は空いている僕の隣に座った。今は岡ちゃんからの到着の電話連絡待ち。


『金魚、私のバッグの中からピンクの財布取って』

『あ…うん』


けど今度は逆に、それを鈴ちゃんに制止されてしまった。これで何度目?…また鈴ちゃんに代金を支払わせ…えっ!?


『…鮎美ちゃんのラーメン代だけだったの』

『ど、どういうこと!?』

『他のお客さん達には内緒で、今回だけ特別に…私たちのスープの代金はいいよって』

『えーっ!?』






『…はーい。はーい…待っててね』


ガチャッ。ツーツーツー。

岡ちゃんから鈴ちゃんへと、お店の前に到着したとの電話連絡。僕らは席を立った。

眠そう…てゆうか、もう殆ど眠り掛けている歩美さん。僕と詩織の2人で立ち上がらせ、支えてあげながらお店の出入り口へと向かう。


『す、すみません。ご馳走さまでしたぁ』
『あの…いいんですか?本当に…』

『あぁいいよ。今度はしっかり腹ぁ空かせて、また食べに来てくれよな』

『…だって。お父さんが言ってくれてるんだから、気にしないで』


笑顔でそう言ってくれた旦那さんとお姉さん…ほんとにいい人たちだ…。


『はいっ!絶対にまた食べに来まーす!』






鈴ちゃんは助手席に。僕と詩織と、そして歩美さんは後部座席に。《おばタク》は一旦、ナオさんのお店へと向かい走行中。

さっき、『えぇぇ…??』って、歩美さんを目の当たりにして驚いてた岡ちゃん。


『…それで、金魚ちゃんのお姉ちゃんは、今おいくつなの?』

『鮎美ちゃんは、金魚と2つ違いの22歳なの』


僕に代わってそう答えてくれた詩織。

そのちょっと前に岡ちゃんに、面倒な弁解と無駄な混乱を避けるために《金魚の実姉》なんだと説明してくれたのは…鈴ちゃん。


『お姉ちゃん、鮎美ちゃんっていうのね』


いつもの僕は黙って、車の窓から外を眺めてるんだけど…今だけは違う。

僕と詩織に挟まれるようにして、僕らの真ん中に座らせた歩美さん…その頭は僕の肩に。瞼は完全に閉じている。

じーっ…。
僕の視線は、歩美さんの…厚くはない、むしろやや薄めの桃色の唇に…目を奪われて…釘付けに。

























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