上 下
334 / 490
女装と復讐 -街華編-

page.323

しおりを挟む
10分くらい経ったかな…?

詩織が空になったスープの器の中に、れんげをそっと置く…カランと心地好い音がした。


『はぁ…。ごちそうさまぁ…どう?もしかして、私が一番速かったんじゃな…』


ううん。僕だって詩織に負けないくらい速かったし。

けど驚いたのは、僕のすぐあとに歩美さんが『ごちそうさまでした』したこと。
僕も詩織もスープだけだったけど、歩美さんは麺とスープ…食べるの速っ!

しかもスープ…一滴足りとも残ってない!超完食!

よっぽどお腹が空いてたんだと思う…。

鈴ちゃんは…というと、まだスープを飲んでる途中。






最後にスープを飲み干した鈴ちゃんが僕らに言った。


『私今ね、スープを飲みながら、ふと思ったの。鮎美ちゃん本人のフリをして《カラフル》に書き込みしたの、彩かもしれない…って』


彩乃が歩美さんに声を掛け撮影…その写真が《本物金魚宣言》をして《カラフル》に貼られた。それもすぐ《偽物騒動》となることを予測し判っていながら…。

どんだけ《金魚嫌い!》なんだよ!彩乃!!
ただ金魚にそっくりってだけで、歩美さんまでこの騒動に巻き込んで!!

詩織も僕も《そうだよ!彩乃の仕業に違いない!》とはっきり言いたかったけど…鈴ちゃんの手前、そんなこと言えなかった。


『でも、ほんとに彩乃ちゃんなのか…なんて、判らないし…ね』


鈴ちゃんに気を遣い、そう優しく言った詩織に、鈴ちゃんはキッパリと言い返す。


『ううん。今の彩乃ならやりかねない…って私には分かるの。前にもそんなことがあって…だからもう何度も何度も、あの子には注意して言い聞かせてきたのに…』






鈴ちゃんは自分の左手首に着けてる、キラキラ輝く腕時計をちらりと見た。


『ごめん…私、そろそろ帰らなきゃ』

『あ!ごめんね、鈴ちゃん。お家でお父さんとお母さんが待ってるのに、スタバと…ラーメン屋さんにまで付き合わせちゃって…』


僕も詩織の言葉のあとに、添えるように『ごめんね』と言った。


『金魚、私たちもそろそろお店を出よう』

『うん』


そう詩織に返事をして、ふと歩美さんを見…?


『歩美さん…眠いの?』


半分閉じかけた歩美さんの瞼が、何度もゆっくりとまばたきしている。


『ご…めんなさい…ちょっ…と…眠く…なっ…』


空腹を満たされ、あの3時間も心身ともに耐えてたスタバから脱出できた、精神的な疲れと今ある安心感…歩美さんが眠くなるのも仕方ない。

僕は頼るように詩織を見た。


『…じゃあさ、とりあえずナオさんのお店に行って、ちょっとだけ鮎美ちゃんを休めさせてもらおうよ』

『うん。だね』


鈴ちゃんがバッグからiPhoneを出した。


『ちょうど今、私岡ちゃんに電話するところだったし、それもお願いしてみるね』

『うん。本当に色々とごめんね…鈴ちゃん』


























しおりを挟む
感想 224

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...