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女装と復讐 -街華編-
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しおりを挟む…《春フェス》特設ステージ出演終了後の、夜の打ち上げ回もおわって時刻は午後10時51分。
打ち上げ会のメンバーは、僕と詩織、秋良さん、啓介さん。春華さん。それにバッグ演奏してくれていたギター&シンセサイザーのわっちさんとドラムのヤマさん。ステージ上で最高のパフォーマンスをご披露して笑わせてくれた菊江さん。
それと…僕らを迎えに来てくれたアンナさんとナオさん。あと…30分ほど前に《春フェス・実行委員》の打ち上げ会を途中で抜け出て、ここに駆けつけてくれた鈴ちゃん。
そして木橋みかなちゃんは、僕らが会場から出て少しして、先輩である鈴ちゃんに『楽しかったです。では、愛知県へ向かいます』と言って、タクシーを呼んで帰ったらしい。
ステージ上でのトーク共演、ありがとうございました。またいつか…ここ藤浦市で一緒にランチを。
本当に最高の日だった…。
ステージ上でも堂々としてて、カッコよかったな…啓介さんと秋良さん。もちろんわっちさんやヤマさんも。
そして、本物の芸能人の鈴ちゃんとみかなちゃんとのお喋りタイム…なんて羨ましくて贅沢な時間を僕は過ごしてるんだろう…って、あの場で思ってしまった。
詩織もたくさん笑ってた。笑顔が可愛かった…良かったよ。それもひとつ、菊江さんのサプライズ出演者のおかげでもあったんだと思う。
菊江さんも、そういえば…ステージ上では凄く落ち着いてパフォーマンスして会場を笑わせてたな。さすがだなぁって思った。
『…コよかったね。金魚ちゃん』
『えっ…あ、ごめん。今考え事してて…聞こえなかった』
僕は、テーブル挟んで僕の目の前に座る鈴ちゃんに謝った。
鈴ちゃんは優しく微笑んで、もう一度言ってくれた。
『本当にあの男の子衣装、凄くカッコよかったね…って言ったの』
『うん…ありがとう。あ、秋良さん!』
僕はまた秋良さんに、あの衣装製作のお礼を言った。
『…ったく。お前は、何回礼を言えば気が済むんだよ。わはははは』
…ご、ごめんなさい。
『いいよいいよ。またお前がこーんな服が着たいー…ってのがあれば、また作ってやんよ…な!啓介ぇ』
啓介さんも笑いながら頷いてた…本当にいつもありがとうございます。
そしていつも…ごめんなさい。
『ねぇ金魚…』
『うん』
呼ばれて、僕は隣に座る詩織を見た。
『私…また金魚と…あぁんな大っきい会場で…ステージに上がって…ね。なにか楽しいことしたい…』
右手にグラスを握ってそう僕に言った詩織…ってか、詩織!
僕らまだ19歳なんだから!お酒は駄目だって!!
『また、たくさんの観客の前でいっぱい楽しいことしたい…鈴ちゃんも。鈴ちゃんもだよ。私たちと一緒に…ね』
『うん。また一緒にステージに上がって、いっぱい楽しいことしよう』
そう言って、優しく笑って詩織に返してくれた鈴ちゃん。
『絶対だよ…鈴ちゃん。約束だから…』
僕はそっと、詩織に分からないように詩織の右手からグラスを取って、代わりに冷たい烏龍茶の入ったグラスを握らせた。
『…え、え…?なにこれ…?』
…って、すぐ気付かれた…。
『飲んでみて。美味しいよ。あとお酒は駄目だよ。詩織』
『…うん…うん。いつもありがとう…最近、毎日が楽しいのは…金魚のおかげね』
僕は詩織の頭を撫でてあげた。
『本当はね…それを一番言いたかったのは…金魚じゃないかなって思うんだ…』
僕本人が、そんな言い方するのは変なんだけど。
でも、詩織はちょっと酔っ払ってるから…今こんな変なことを言ったも、覚えてないんだろうけど…。
『私…金魚ちゃんと詩織ちゃんとのパートナーシップが、本当に羨ましいなって思う。私はずっと独りだったから…』
『《だったから…》ってもう過去形だね。これからは…』
『…えっ』
僕と鈴ちゃんは、見合って笑った。
『そうだね。嬉しい…ありがとう。金魚ちゃん』
『私は詩織ちゃんも金魚ちゃんも大好き』そう言ってくれた鈴ちゃん。もう何度か同じことを聞いてるけど…何度でも。こちらこそありがとう…。
『でも秋良って、芸能人とも知り合いだなんて凄いよなぁ』
『なに言ってんだよ、わっち。俺にできないことなんかねーんだよ!』
『そうですね。もう私と秋良さんも、知り合いといっていいのかもですね』
『おぉ!よくぞ言ってくれた伊藤鈴!なぁ、ちょっとビール注いでくれよ』
『ちょっと!秋良くん酔いすぎ!あ…いいのよ。鈴ちゃん。酔っ払いの相手はほどほどに…ね』
『わははは。秋良、彼女に怒られてやんのー』
『うるせー!俺は今すげー気分がいいんだよ!』
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